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17 [店は臨時休業中だが順調なカザミ9]


進んできた空洞から開けた空間へ繋がっていると思っていたが、現れたのは天井が低く奥行きのある空間だった。


「斬る」


テーブルの上には村から奪ってきただろう木で作られたコップに、大きめの緑色をした葉の上には木の実が置かれていた。まるで休憩所のような場所でゴブリンは待機している様子だ。


フロアは洞窟内に人為的に掘られただろう部屋のような場所で、壁際に備えられた椅子で寛いでいるゴブリンを三体斬った。

二体、並んで椅子に座ったゴブリンを背後から両方のゴブリンの首筋に両手に持ったダガーを突き立てた。刺されたゴブリンはテーブルの上にバタリと倒れ、正面に居るゴブリンは部屋の奥に走り出して壁に掛けられていた大きな布を捲り上げたところで、フロアのダガーが背中を切り刻んだ。


「そういう事か」


フロアはゴブリンを仕留めると、俺の言葉に聞き返してきた。


「なにが」


「この洞窟は無数の巣穴で出来たコロニーのようだ。俺は少し思い違いをしていた。

一つずつ潰していくしかないな」


「うん」


ゴブリンが逃げ込もうとした、布で隠された空洞の中に入ると、そこは左右に分かれたY字路になっていた。


「どっちにいけばいい」


「この様子だと村娘は一箇所にはいないだろう。各部屋に散らばって囚われているはずだ」


言葉を口にする俺の横顔を見ながらフロアは口にした。


「だったら別れる」


遠距離恋愛を迫られたカップルかと言いたい所だが、フロアに他意はないのだろうと思い、華麗に流してみせた。


「そうだな。フロアは左に、俺は右に行くとしよう」


「もう会う事もないかもしれないから先に言う。今までありがとう」


んー。どちらかにもしもの事があった場合の為に言っているのだと理解はしているつもりだが・・・やっぱり俺がふられたみたいになってはいないか?


「あ、あぁ・・・」


俺が少し戸惑っている様子を見ながら、「一匹も逃がさず仕留める。わかった?」と聞いてきたので、「それがいいだろう。村娘を連れながらの戦闘は危険だからな」と言うと、踵を返して走り出してしまった。


「はぁ。本当に話を最後まで聞かないヤツだ」


俺は光玉をフロアに追従させる事はできたが、肝心な話はできなかった。村娘をゲートで村に帰す事も可能だと言っておきたかったが、すでにフロアの姿は見えなくなっている。


「行くか・・・」


フロアと居るとどこか調子が狂うなと思いながらも、俺は右の空洞を先に進んだ。右を選んだ理由は、単に赤と青の光点が多かったからだ。フロアの進んだ左は青い光点がいくつかあるが動いているのがわかっていたため、村娘は縛られておらず自分の足で逃げる事も可能だと判断できる。


だが俺の方は違う。明らかに動く様子もなく赤い光点だけがその周囲に群がっている。これは村でゴブリンに弄ばれていた様子と同じように見えた。そうなるとやはり、俺が行くのが正しいだろう。


空洞を少し進むとすぐに新しい部屋に着いた。まるで蟻の巣の中を徘徊しているような気分だ。


「なんだこの悪臭は」


松明がつけられたこの部屋は、どうやらゴブリンどもの肥溜めになっているらしく地面に敷かれた板からは悪臭が漂っている。穴を掘ってそこに溜め込んでいるのか・・・光点反応は無いため、急いで奥へと進んでいく。


「また別れ道か」


今回はフロアと分かれたY字路のような三叉路ではなく、三つの空洞が現れ、どれもその先に青い光点反応が映っている。

どうやらこの先の空洞から所々に松明が用意され薄明かりに照らされているようだ。


「左から順に行くか」


先に進んでいくと、大きめの部屋に出た。そこには囚われた時に着ていたのだろうボロボロになった半袖のシャツに、腰には臀部を隠せるか程度の短い布切れが捲かれていた。手首を背後で縛られ、角材の両端には足首が縛られ股を開いた状態の五人の村娘が壁に背中を預けながら座っていた。

誰も俺に気づかず、うな垂れるように地面を見つめている。五人中三人の娘は、服の上からだが腹が膨れ子を孕んでいるように見える。


この村娘の居る部屋の先には赤い光点が無数に表示されている。十数体と言ったところか。


「遠慮なく殺してやろう」


想像していた光景だが、目の当たりにすると言い知れない殺意が沸いてくる。


「あ゛ー・・・あ゛ーあ゛ーあ゛ー」


突然、村娘の一人が大きな声で悶えだすと、角材で開かれた股の間からすんなりと緑色の小さなゴブリンが生まれた。こんなゴブリンでも自分の子供だと思うのかと考えていると、子ゴブリンを生んだ女は、自らが産み落としたゴブリンを見ようとはせず俺の方に視線を向けた。


「・・・あ゛ー」


悶えるような声しか発する事ができないのだろうか。歳は全員十五歳ぐらいから二十歳にも満たない娘ばかりだ。

俺がその娘に近寄ろうとすると、細く痩せた足を上げて角材を産み落とした子ゴブリンに向かって振り落とした。

力が入っておらず、掠り傷程度しかつけられないが、明らかに頭部を狙い殺そうとしている事はわかった。


俺はその娘が言いたい事がわかった気がした。


子ゴブリンは生まれたばかりだというのに、目を開き立ち上がると、産みの親だという娘に向かって拳を振り上げた。

なんて鬼子(ガキ)だ。娘はただ俺の目を見ながら頷いた。


「わかった」


子ゴブリンは俺には気づいていなかったようで、俺の声を聞いて咄嗟に振り返った様子だったが、鞘から抜いた黒刀クロユリを頭上から股下に向けて串刺しにしてやった。

それを見た娘は、目から涙を流した。他の娘たちも意識を取り戻したかのように俺に視線を向けて「あ゛ー」と悶えるような声を上げ、血を流し転がっている子ゴブリンを見て涙を流した。


「口の中を見せてもらうぞ」


俺は一人の娘の顎に手を当てて口を開かした。


「なんて酷い事を・・・」


俺は鞄からハイポーションを取り出した。ギルドで売らずに置いておいてよかったと思いながら、一人ずつ口元に瓶の中身を流し入れていく。


娘たちは全身を淡く光らせながら傷が癒えていった。それと同じくして、奥の空洞から赤い光点が近寄ってくるのがわかった。娘たちの悶える声に反応でもしたのか。


「ぐぎゃー」


現れたのは一体のゴブリンだったが、手には棍棒が持たれ明らかに折檻(せっかん)を始める気でいただろう事がわかった。

俺の姿を認識したゴブリンの両腕を斬り落とし、声を上げる前に首を刺し声を奪った。切っ先に喉笛が突き刺さっているゴブリンはぶるぶると痙攣しながら絶命していく。その様子を前に、切り落とされた舌が元に戻った娘たちは、何が起きているのか理解できない様子だったが、只一言「奴らを殺して」と、殺意に満ちた言葉を発した。

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