10 [店は臨時休業中だが順調なカザミ2]
フォールお手製の棚が完成し倉庫の方に運んでくれたが、棚というよりは、細長い木製のテーブルだ
「これを壁際に置けばいいんだよね」
横幅が三メートルで奥行きが五十センチぐらいだろうか、高さはダイニングテーブル程度で、四足の角材の上に板が打ち付けられただけの、どうみてもテーブルにしか見えない物を、六つも作ったそうだ
「俺も手伝おう」
外に置かれたままの棚を倉庫内に運び、設置していく
壁際に棚を設置した後から、双子が忙しそうにポーションや素材を並べていく
「これもテーブルにおいていいの?」
木箱に詰められたままの薬草束を見ながら、ロロアは首を傾げた
「それは木箱に仕舞ったままにしておくか
並べても邪魔になるだけだしな」
俺とフォールで棚を設置し、床に溢れかえっていた素材などを、双子が綺麗に棚の上に整頓していき、ラックがたまに、「それはこっちの棚の方がいい、ポーションと素材は分けて置いた方がわかりやすいと思う」と言いながら、双子の二人の背後から指示を出している
皆でやれば、倉庫の片付けもあっと言う間に終わり、倉庫内は綺麗に整頓された
「テーブルみたいにして正解だったね」
「そうだな、助かった」
フォールはここまで計算していたのだろうか
棚の下に空いた空間には、木箱が半分ほど前にはみ出しているが、無造作に置かれていた木箱までも、収納してしまった
それに、双子用に四角い台も作っていて、棚の奥に置かれた物もとりやすいようにしてくれていた
「みんなでしたら、はやくおわったね」
「もっと時間かかると思ってた」
昼前に始めた倉庫の整理も、昼時には終わってしまった
「意外とあっさり終わったな」
「お茶でも用意するから、みんなキッチンの方で休んでいてよ」
「おちゃのむー」
「冷たいのがいいー」
双子の二人は、フォールのお茶が大好きなようで、喜んでキッチンに置かれている椅子に腰を下ろした
「いつから開店するんだい?」
「そうだな・・・まだ商品を仕入れにいかないといけないから、あと数日は休業だろうな」
「つめたいの!」
「冷たいからおかわり!」
「ふふっ、ちょっと待っていて、すぐに淹れてあげるから」
「冷たいのがそんなにいいのか」
「冷たいの今日初めて飲んだよ」
「氷など、普段は手に入らない」
ラックは氷をぺろぺろと舐めながら、そう言った
昨日の晩、俺は冷凍庫の氷が切れている事に気づき、アイストレーを用意して氷を作り、朝に皆に氷の入った冷たい水を用意したが、どうやら双子の二人は冷えた水を気に入ってくれたみたいだ
双子が飲み干したグラスにお茶を注ぎながら、フォールが口を開いた
「このアイストレーというのは、冷凍庫で氷を作れる物だったんだね」
「氷ならフォールの魔法で作れるだろう」
「魔法で創り出した氷は、時間が経つと消えてしまうからね
それに、氷は街でも手に入らないと思うよ」
フォールの言葉に付け足すように、ラックが教えてくれた
「氷は最北にある氷の大陸でしか手に入らない、氷の大陸から運ぶ間に溶けてしまうから街にはない」
「なるほどな」
「冷凍庫なんて、どこの王様ですら持っていないだろうね
僕も失念していたよ、いつでも作れたんだね」
ハハッと笑いながら、フォールがそういうと、ロロアが冷凍庫から、調理に使うボールを取り出した
「あさね、こおりをみてからつくってみたんだ」
ロロアはテーブルにボールを運び、アイスピックをキッチンの棚から取り出した
「これでがりがりしたら、ぜったいおいしいとおもうの」
そういってボールの中身をガリガリと削っていく
ボールの中を覗き込むと、絞られた林檎の果汁と、果肉が凍っており、その削りだしたシャーベットを匙で掬い上げて、小皿に盛っていく
「もうちょっとでできるの、みんなのもつくるから」
疲労した腕を必死に動かして、ガリガリと削るが、力が入らなくなってきたのだろう、二皿目を用意し終えると、腕を振って疲れを誤魔化している様子だった
「俺がかわろう」
俺は銀の匙を用意し、ロロアからボールを受け取ってガリガリと削り、皆の分を用意した
「シャーベットか、なつかしいな」
「かじゃみ、これしってるの?」
「氷で作るシャーベットという、アイスだな」
「これシャーベットっていうんだ
ぜったいおいしいとおもって、つくってみたんだ」
「よく思いついたな、ロロアには料理の才能があるのかもな」
皆で、ロロアが用意してくれたシャーベットを口にした
「ロロアすごいよ! 冷たくて美味しいよ」
トトは目を丸くして、ロロアを絶賛している
「うん、すごくおいしいね
凍らした果物を食べるなんて初めての事だよ」
「シャリシャリとした初めての食感」
「あぁ、一仕事の後には最高だ」
皆の顔を見渡したロロアは満足そうな顔をしていた
「つくってよかったの」
ロロアも、皆のあとに続いて、シャーベットを口にした
◇◇◇
りんごのシャーベットを食べ終え、俺は地竜の棲処に足を運んだ
各階層を繋げる空洞に入ると、地竜が地を這う音が耳に届いた
地竜も動き回るのかと思いながら空洞を抜けると、岩壁に収まった地竜がいた
俺は簡易風呂があったはずの場所を見ると、綺麗に埋められた跡があった
どうやら俺が近づいた事で、死んだふりを続けようと考えたのかもしれない
さすがに気の毒に思えてくる・・・
「地竜、俺はお前に敵意はない」
そういうと、地竜は眼球だけを俺の方へ向け、その真意を推し量っているかのような眼差しが向けられた




