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8 [円卓上の料理・異世界の生活水準は?]


「うわー、このハンバーグやわらかーい」


「ハンバーグは固い物なのか?」


「なんかね、たまにかたいの」


「あぁ、ミンチにする前に筋抜きをしていないからだろう

これはきちんと筋を取ってあるから食べやすいはずだ」


「うん、やわらかくておいしいの

トマトケチャップはつかわない?」


ついケチャップの事は忘れていた


「そうだったな」


俺は立ち上がりフライパンをコンロで熱して、チーズを焦げない程度に熱を加えてとろけさせた


「ハンバーグにチーズとケチャップをかけても美味いんだ」


「チーズほしいの」


「ぼくも」


ロロアとトトのハンバーグに、とろけたチーズをのせて、その横にケチャップを添えてやる


「ケチャップにつけて食ってみてくれ」


双子「はわー」


まるでチーズの様に顔をとろけさせた二人を見て、フォールとラックもゴクリと喉を鳴らしてチーズを要求してきた


「僕にもかけてくれないかな」


「チーズほしい」


俺は二人のハンバーグにもチーズをのせて、ケチャップを添えてやった


「ケチャップの酸味がチーズのまろやかさに包まれて、口の中に広がった肉汁と混ざり合い、新たな料理が出来上がったみたいだよ」


「・・・」


フォールは食レポのような感想を述べてくれたが、ラックは天井を見上げたまま固まってしまった


「チーズだけだと味がクドくなるだけだが、ロロアの作ってくれたケチャップの酸味がいいアクセントになっているんだ

次はトトが作ってくれたマヨネーズだ

から揚げにつけて食ってみてくれ」


俺はマヨネーズの入った瓶から匙で一掬いして、皆の皿の上に添えていった


最初に声を上げたのはラックだった


「んー!

これが・・・完成されたから揚げか」


鼻の頭にマヨネーズをつけたまま、またも天井を見上げているが、今度は目を閉じてマヨネーズとから揚げの相性に舌鼓を打っている


「トトすごいのつくったね」


「ロロアのケチャップも美味しいよ」


「卵とトマトから、こんな美味しい物ができるなんて」


「これが俺の故郷にある調味料の一種だ」


「そうなると、やっぱり醤油はもっとすごいんだろうね」


確かにソースや和風ドレッシングを作るのには、醤油は必須だ


もしかしたら、醤油は調味料ピラミッドの頂点に君臨しているんではないだろうか


「言われてみれば、醤油から派生する調味料は多い気がするな

こっちの調味料は塩に胡椒、それに砂糖ぐらいなのか?」


俺の言葉に、フォールが応えてくれた


「僕の知る限りでは、塩、胡椒、砂糖、あとは蜂蜜や酢・・・ぐらいかな」


二人と一匹は、新たな味マヨネーズとケチャップを手に、美食の迷宮に迷い込んでいる様子だ


俺も食事をしながら会話を続けた


「味付けはどうしているんだ?」


「塩や胡椒などは高級品だから買えないんだよね」


「俺もそれは知っている、肉とかわりない値で売られていた」


フォールはマヨネーズを匙で掬い上げ、それを見ながら会話を続ける


「そうなんだよね

肉類も高価な物だし、この卵もすごく高いんだよ」


「卵もなのか」


「卵一つで、一食分は(まかな)える額なんだよ」


「卵一つでか・・・高いな」


「だから肉類や卵、胡椒などは高級品として取り扱われているから、貴族や生活に余裕がある人しか調味料は使えないんだよ

僕達はラックが狩りをしてきてくれるから、毎日美味しいお肉を頂いているけどね」


「思っていた以上に、格差があるんだな」


「身分制度って事だよ

街中に住んでいる人は、まだマシかもしれないよ

荒野の街でも、夜は明かりが灯っているからね」


確かに、夜も真っ暗ではなく、それなりに明かりが灯っていたな

街の明かりか・・・<町>ではなく、明かりが灯る<街>って方が、お洒落な感じでシックリくる

荒野の町改め、荒野の街と認識しておこう


「街の外に人がいるのか?」


「村もあるからね、村の夜は暗く、魔物にも襲われやすい

家畜や畑を耕しても、魔物に荒らされたり、穀物が育っても領主に税として収めたら残らないだろうね

食べ物は馬鈴薯が(おも)だった食事で、森で採れる蜂蜜なんかは貴重品だよ」


「それじゃ、蓄えがないんじゃないのか」


「うん、だから冬には食料は少なく体力もついていない村人は、寒さで命を落とす者もいるんだよ」


「生活水準は最低といったところだな」


「村では自給自足が当たり前だから、火を灯す油すら手に入りづらい

それが今の現状なんだよ」


調味料や肉類、火を灯す油ですら高級品で、農民などでは手の届かない贅沢品か・・・

寒さで命を落とす事もあるとは、村の生活水準は最底辺

街は、まだ荒野の街しか知らないが、高級品はどこの領地でも一緒だろうな


「そんな大事な穀物類も、こんな黒っぽい固いパンにされちゃ、たまったものじゃないな」


「王族や貴族は白いパンだけどね」


「白いパンって事は、ふわふわした柔らかいパンなのか」


「昔に食べた事があるけど、固いのはかわりないよ

それに柔らかいパンがあるなんて知らないね」


「そうなのか、今度作ってみるか」


俺の言葉に、無言で食べ進めていた双子とラックは、俺の方に視線を向けた


「食事に夢中で話を聞いていないと思ってたが・・・」


皿を見ると、ちょうど食べ終わったところだったらしい


「やわらかいパンなんて、たべたことないの」


「パンは固いものなんだよ」


双子はパンに興味を持ったようだ


視線だけで食べたいと言ってくるラックは、とりあえず放っておこう


「簡単な酵母だと、りんごで作れるからな

後で一緒に作ってみるか」


「こうぼ?」


「何それ?」


俺も残りのハンバーグたいらげ、水で流し込んだ


「パンを柔らかくする魔法の液体だ」


「なんかすごそうだね」


「柔らかいパンなんて想像もつかないや」


「パンといえば固いのが当たり前なのか」


双子「そうだよ」


フォールを見ると、「パンは固い物だね」と言ってきたので、やはりパンは固い物だと、固定概念があるようだ


流し台(シンク)に皿を運び、ロロアと洗い物をしている間に、トトとフォールに透明の瓶、りんご、砂糖をテーブルに出して置いてもらい、洗い物を済ませテーブルに足を運ぶ


ラックが狩りをして手に入れている肉類以外は、どうしているんだと聞いたところ、店がダンジョンに潜ってからは、近くの森で果物や野草を手に入れ、野菜類は露店で肉と物々交換してもらっているそうだ


俺はありがたく、りんごを使わせてもらった


「切ったりんごを瓶に詰めて、水を入れて砂糖を加えたら準備完了だ」


俺は瓶に蓋をしてロロアに手渡した


「これをシャカシャカ振ると完成だ」


そういうと、ロロアは瓶を上下に振り、それをトトに手渡し、瓶を受け取ったトトも、ロロアのように瓶を上下に振った


「そのぐらいでいいだろう」


瓶をテーブルに置いたトトが「これだけ?」と聞いてきた


「簡単だろ」


「うん」


「後は瓶の中が泡だってりんごがスカスカになったら完成だ」


「まだできないの?」


瓶を見つめるロロアは、早く出来上がってほしそうに瓶を見ている


「三日ほど冷蔵庫に入れて、それから室内で二、三日といったところだ」


「楽しみだね」


皆柔らかいパンが待ち遠しいのだろう

俺にはそれが当たり前だったが、ふわふわのパンを食べた時の皆の顔が想像できる



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