5 [倉庫と鍛冶場]
風呂を上がった双子の二人だが、入る前に着ていた服を着用していたので、服も揃えてやらなければと思い、フォールも着替えなどはどうしているのだろうと、気にはなったが、今でなくていいかと思い、機会があれば聞いてみよう
「次のダイヤルを説明するからな
そうだな・・・トト、このダイヤルを回してみてくれ」
トトにドアノブのダイヤルを廻すように促すと、カチッと音を立てダイヤルが一つ廻り、湯気の絵柄から宝箱の絵柄に変わった
「これは倉庫の絵柄だな
ドアを開けてみてくれ」
トトはドアノブを廻して扉を開いた
「なにここ、お風呂じゃない」
扉の先に見えた倉庫内を見回しながら、「あれー?」と言って中に入っていった
「ここは倉庫だな
さっきのダイヤルを廻すと、こんな風に違う空間に繋がるようになっている」
皆にそう説明すると、俺が扉を開いたラックの姿を見て感心してしまったように、皆もそれぞれに「なるほどね」や「わー」やと、声を漏らしながら倉庫内に入ってくる
「ここには店の商品をいくつか保管してあるが、武器や魔物の素材など危ない物もあるから、ロロアとトトは用がない時は入らないようにしてくれ」
「わかったの」
「うん」
ラックは言わなくても入る事はないだろう
「フォールは必要な物があれば、勝手に使ってくれてかまわないからな」
「貴重な物があるんじゃないのかい?」
「置いていても仕方がないからな、商品以外なら自由に扱ってくれ」
倉庫の内装は石壁で、奥に伸びる長方形になっており、天井に吊るされた照明以外は、窓や棚も備えられてはいない
それぞれの素材や商品は木箱に詰められ、積み上げられていたりと、無造作に置かれている
そんな中で唯一、刀だけはきちんと整列されるように、刀掛けに立て掛けられている
「わかりやすいように棚などを設置して、木箱から出しておこう
商品を補填するのに、どれがどこにあるのかわからないと困るからな」
「そうだね、そうしてくれれば僕やこの子たちでも品物を店に出せるからね」
「使うのは俺ぐらいだろうが、次の説明をしておこうか」
皆に倉庫から出てもらい、次はロロアにダイヤルを廻してもらう
さすがにドアノブを廻せるラックでも、ノブの付け根に備えられたダイヤルは廻せないだろうな
「ここをまわせばいいの?」
「そうだ
これがダイヤルになっていて、右でも左でも自由に廻せる」
ロロアがダイヤルをカチリと廻すと、宝箱の絵柄から火の絵柄に変わった
「この火の絵柄は鍛冶をする所だ」
「かじ? おうちがもえちゃう?」
「んー、ロロアは知らないか
まぁ入ってみればわかるさ」
扉を開くと同時に、屋内から熱気が流れ込んできた
「煤臭いというか、焦げ臭いというか、なんとも言えない臭いがするね」
「ここは刀や鍋など、色々な物を作っている鍛冶工房だ
最後にこの場所を使っていた時は、包丁などキッチン用品を作っていたがな」
「ドワーフが好みそうな場所」
ラックにしては察しがいいな
「ドワーフに会った事はないが、やはりドワーフは鍛冶をするのか」
「見たことない、でもドワーフと同じ臭い」
「そうか、ドワーフも鍛冶をするんだろうな」
「ここあついよ」
「うん、暑くて鼻が痛い・・・」
「悪いわるい、ここは炉もあるからな
二人とも、俺が中に居ない時は入っちゃ駄目だからな」
双子「はーい」
息ぴったりだな
「これで説明は終わりだ
何か質問はあるか?」
「僕は特にないかな」
「おふろはいつでもはいっていいの?」
「あぁ、好きな時に入ってくれ
ここは俺たち皆の家でもあるんだ」
俺の言葉を聞いた三人は、なぜだかしんみりとした雰囲気を漂わせながらも、どこか嬉しそうにしていた
「倉庫のお片づけ手伝う」
「わたしも、てつだう」
「今日はしないからいいさ
ロロアも疲れが溜まっているはずだ、ゆっくり休まないとな
トトは今まで店を綺麗に掃除してくれていたんだろ、今日は休日だ」
「休日?」
「僕も知らないね」
「七日に一度はお休みにしましょうって事だ」
「休みね・・・うん、たまにはそういうのもいいかもしれないね」
少し考えるような素振りを見せたフォールだが、すぐに納得した様子だった
「こっちには休日はないのか?」
「病にかからない限りは働き続けているかな」
「それじゃあ、この店は七日に一度は休日だと覚えておいてくれ」
どの日が休日かわかりやすいように、後で日捲りカレンダーでも作ってみるか
「さて、そろそろ昼だろう
昼食にしようか」
「かわむきするー」
「それなら僕が作るよ
今までも、料理は僕が担当していたからね」
「そういえば、朝食に出た目玉焼きには驚いたな
パンは相変わらず固いパンだったが、俺が毎朝食べていた料理みたいだった」
「あっ、そうだね」
フォールは少し面白そうに、キッチン台の引き戸を開けて、中から一冊のノートを取り出した
「これが僕の料理の秘密さ
たぶんこれ、カザミの手書きでしょ?」
なるほど・・・俺の手書きの料理本だな
「それもあったんだな」
自炊を始めたとき、VRで何度か練習してから現実で作ってたんだよな・・・なんだか懐かしいな
「文字はさっぱり読めないけどね、絵が描かれているから、なんとなく試していたらいくつか成功したんだよ」
嬉しそうに言葉を口にしている
フォールも料理が好きなのだろうか
「絵から覚えるとは凄いな」
「いくつかできただけで、大半は失敗したまま解読できずだったんだけど・・・」
意味深な言い方をしてくるな
「カザミが教えてくれれば、他にも作れちゃうってことだよね」
そういう事か、他の料理も作ってみたかったが失敗が続いていて、そのノートを書いた俺が現れたんだ
他にも知りたくてたまらないのか
長生きしている賢者の割には、探究心が尽き無いんだな
「それなら昼食は一緒に作るか」
「新しい料理に挑戦させてもらっちゃおうかな」
「ぼくも手伝うよ」
「みんなでつくるの、たのしそー」
「ふむ、から揚げが食べたい」
この小犬はさっそく注文とは、よほどから揚げが好きなんだろうか
ついでだし、作ってやるか




