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4 [大浴場]


雑貨屋の店内に繋げたゲートを潜ると、カウンターの上にラックがぽつりと座っていた


「ラックだけか?」


「皆は外にいる」


「そうか、皆をキッチンに呼んでくれないか」


「なんで私が」


「開かずの扉が開くところ、見たくないか?」


「ふんっ」


カウンターから飛び降り、スタスタと店の扉まで歩き、跳ねるように飛ぶと、ドアノブを両手で上手く掴んで垂れ下がった

肉球が滑り止めとなったその状態から左右に身体を揺らすと、クルリとノブが廻った


おもわず「おー」と声を出してしまった


「さて、金策は詰んだどころか、服を用意してもらうのにさらに金がかかる・・・

商品を売って稼ぐしかないな」


キッチンで待っていると、汗を流すロロアとトト、その隣には涼しい顔をしたフォールが「飾り扉ではなかったんだね」と、言いながら現れた


もちろんラックも一緒だ


「朝から運動でもしていたのか?」


「いつもの訓練してた」


汗を流しながら元気よく返事をするトトに、「訓練?」と聞き返すと


「フォールに魔法教えてもらっているんだ」


ロロアも、いつも行なっている魔法の訓練に参加していたようだ


俺は話を戻して、扉の事を説明していった


「この扉は少し特殊でな、俺の魔力を扉に備え付けられたノブに流さないと開かないんだ」


「なるほどね、魔力が鍵の役目をしていたんだね」


内容が理解できず、ぽかんとした表情を浮かべながら、ロロアとトトは話を聞いていたが、同じような姿で、二人同時にそんな顔をされると笑いそうになってしまい、笑いを堪えるのに大変だった


「そういう事だ

あと、これは俺も確かめないとわからないと事なんだが、亜空間に造られた各屋内に繋がっているはずだ

このノブの付け根に付いているダイヤルを回すと、絵柄が表示される

この絵柄それぞれが、使用したい屋内に繋がっているから絵柄を覚えておいてくれ

鍵を解除して、皆がいつでも利用できるようにしておく」


元々、VRで他のプレイヤーが勝手に立ち入らないようスキルを使用して施錠されていた扉だったが、今の店には俺だけでなく皆が居る


皆が使いたいときに使えないのは不便だと思い、扉に施していた【限定施錠(シークレット・ロック)】を解除した


皆にダイヤルを回しながら、各絵柄の持つ意味を伝えていく


「まずはこの湯気のような絵柄だが、これは大浴場だ」


あまりピンとこないらしく、ぽかんとした表情を浮かべていたロロアとトトの二人に加え、ラックまでも、ぽかんとした表情を浮かべて二人の仲間入りを果たした


「簡単に言うと大きな風呂だな」


扉を開いて中を見せると、フォールが驚いたように「こんな空間が広がっているなんて、すごいね!」と言って興味津々だった


扉の先には、小綺麗な白い部屋が設けられ、壁には四角いロッカーがいくつか埋め込まれており、その横にはタオル類が置かれた棚が用意され、反対側の壁側には大きな鏡が設置されている


そして、その部屋の奥は一面硝子張りで、浴場と部屋を区切るための硝子壁があり、その硝子張りの壁の真ん中には、横にスライドさせて開く硝子張りの扉がある


「ここで服を脱いで、このロッカーに脱いだ服を入れる」


ロッカーを開いて三人に説明をしていると、洗濯機があればなぁ・・・などと考えてしまった

VRでは洗濯機なんて必要なく、存在すらしていなかったが、あれば便利だったろうな


「これがお風呂?」


トトが興味を示し、部屋の中をキョロキョロと見回している


「この部屋は脱衣所だが、あの硝子の向こうは大きな風呂になっている」


硝子越しに見えるその光景に、(にわ)かには信じられないのだろう


床は真っ白な大理石に、浴槽はクリーム色の大理石で造られた、大理石尽くしの高級感漂う大浴場となっている


浴槽はこの一つしかないが、大浴場にはシャワーも五つ完備されている


「今まで川に行っての水浴びだったから、これは助かるよ」


硝子の扉を開いて大浴場に案内すると、フォールは浴槽に張られている湯に手をつけながら、嬉しそうに言ってきた


「いつでも使ってくれていいからな

他のダイヤルの絵柄も教えておこう」


脱衣所の方に振り返ると、ロロアとトトが服を脱いで入る気満々な様子だったので、とりあえず説明を先にと思い脱衣所に戻った


「二人とも、まずはあの扉の説明を先にさせてくれ」


「ラックがはいちゃったよ」


ロロアの言葉に、浴場の方を見ると、湯の中で楽しそうに犬掻きをしながら泳ぐラックの姿が見え、俺はつい溜め息を漏らした


「まぁいいか、先に汗を流してくるといい」


「やったー!」


「お風呂入るー」


二人は素っ裸になって、ザブンと飛沫を上げながら湯の中に飛び込んだ


「説明はいいのかい?」


「あの様子だ、他のダイヤルは後で教える事にする」


そういってキッチンに戻り椅子に腰を下ろすと、フォールがお茶を淹れてくれた


「お風呂なんて貴族の屋敷か高級な宿ぐらいにしかないからね

あの子たちも喜んでいたよ」


「そういえば宿に泊まったときも、井戸の傍に(たらい)が置かれていたな

こっちでは水浴びが主流なのか」


「そうだね、湯を沸かすには薪がいるし、薪も買うとなれば高いからね」


「薪なら森にいくらでもあるだろう」


「その森には魔物も出るから、護衛を一日雇うとなれば、薪代以上にお金がかかるからね」


「悪循環だな、火属性の魔法で湯を沸かせばいいんじゃないか」


「魔法を使えるのは一部の人だけなんだよ

魔力を持たずに生まれてくる人が大半で、魔法を使えても扱える属性は一つか二つ、火属性が使えるとは限らないんだよ」


「なるほど、ライドも魔法は使えないと言っていたな」


「皆なにかしらの苦労をしているのさ」


他愛もない会話を続けていると、ようやくお風呂組が姿を現した


「おおきいおふろ、たのしかったの」


「さっぱりしたよ」


「湯の中で泳げる日がくるとは」


お風呂は泳ぐところではないと思ったが、犬だし犬掻きしないと溺れてしまうか・・・と納得しておいた



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