表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/96

3  [転生者]


町中で転生前の世界の話はできないと言われ、リーサの家にお邪魔する事になった


「ここ、お前の店だったのか」


「きた事あるの?」


「あぁ、先日じいさんから靴を購入した」


招かれたその家は、ロロアの靴を購入した靴屋だったが、店の扉のドアノブには異世界文字で書かれたプレートが提げられ、閉店(クローズ)状態だった


店の入り口からではなく、路地を入った裏口から住まいの中へと案内された


「どうぞ」


「お邪魔する」


中に入ると、さっそくリビングが広がっており、ダイニングテーブルに座るよう促された


椅子に腰をかけると、リーサはお茶を入れたカップを用意してくれ、それに口をつけた


「それで、カザミは転生者じゃなくて、転移者なんだよね」


「そうだ」


「私の方は転生者、生前、日本人だった記憶を持っているわ

他にも転移してきた人はいるの?」


「わからない、俺は一人だった」


「そっか、あんたも大変だね

転生者が私の他に居るのか知らないけど、たぶんいないでしょうね

あんたは黒髪で黒い瞳だったから、すぐにピンときたのよ」


「そういう事か

それで、店は今日休みなのか」


「色々あってね、この店は三日後に閉める事になっているのよ

今も営業許可証を取り上げられて、店を開ける事ができないの」


「それは困るな、ロロアがこの店の靴を気に入ってるんだがな」


「靴を買ってくれたといってたわね

あなたの買ってくれた靴は、私の自信作だったのよ」


「あの靴、フォーマルシューズだよな」


「そうよ、可愛くできていたでしょ」


「いい靴を作るのに、なぜ店を閉めるんだ」


「私の作る靴は、どうしても日本で生きていた時の記憶で作ってちゃうから、こっちの人の好みには合わないのよ」


「合う靴を作ればいいじゃないか」


「いやよ! 運動靴とブーツの量産なんて可愛くないわ」


頑固な女だな


「それに何度か作ってはみたけど、材料の仕入れ値が高くて、靴の値段も高くなっちゃうのよ

材料を大量に仕入れている靴屋の方が材料費を抑えられる分、似たような靴を安く販売できるの

そうなっちゃうと、こっちの店の客足も遠のくってわけよ」


「お前も大変なんだな・・・

それで、さっきの男たちは何だったんだ」


「言ってみれば取り立てよ

あと三日で税を納めないと店を取られて奴隷堕ちするのよ」


「税を納めないと、やはり奴隷になるのか」


「そうよ、あんた何にも知らないのね

いいわ、ついでだし教えてあげるわ」


そういうと、リーサは棚から一枚の紙を取り出した


「ここに書かれている事が、この町のルールよ」


リーサに渡された紙は、異世界の文字で書かれているため、全く読めなかった


「俺はこっちの文字が読めないんだ」


「転移してきたんだったわね

それじゃあ読めなくて当然か、この町の住民には三つの規則が定められているのよ

簡単に言っちゃうと、町の周囲を囲む防壁で魔物襲撃から安全を保障するかわりに、毎月金貨一枚を税として領主に納める事

商いをする場合は売り上げの一部を上納する事

この二つが守られなかった場合は、救済処置とし、奴隷として衣食住が保障される」


紙に書かれている事を口頭で伝えてくれると、テーブルを強く叩き、カップがガチャリと音を立てた


「税を納められなく奴隷堕ちすると言う事か」


「その通り、衣食住の保障なんて言っているけど、実のところは奴隷を集める為に高い税を設定しているのよ

それで残り三日待たずに、私を奴隷にしようと男たちがさらいにきたわけ」


「そうだったのか、リーサなら転生前の知識で儲ける事ができるんじゃないのか

俺の作る料理は、以外と好感されていたが」


「私は転生前は普通にOLをしていたし、食事も外食かコンビニだったのよ

自炊はしてなかったから料理も作れないの

唯一何か作れるとすれば、趣味でやっていたコスプレ衣装の制作ぐらいね」


「なら服を作って売ればいいじゃないか」


「材料の仕入れる量で仕入れ値が変動するのよ

大量に仕入れないと、今の二の舞になっちゃうわ」


「そうか」


「でも下着は明日中には作っといてあげるから、明後日には取りにきてちょうだい

三日後には、もうここには居られないから・・・」


「ん? 待てよ

それなら、俺の服も作れるんじゃないか?」


「もちろん男性用の服も作れるわよ」


「なるほど・・・俺に服を作ってくれないか

こっちには長袖か半袖、それに袖無しのタンクトップみたいな服しかなくてな

見ての通り、俺は七分袖や五分袖を好んで着ているんだ」


「作るって、服を用意してあげられるほどの時間、私にはないわよ」


「それなら気にするな

とりあえずは三ヶ月契約なら服を制作する時間も十分だろう」


「えっ、ええ

三月もあれば十分作れるけど、材料を仕入れるにもお金がかかるのよ」


「材料ならある程度揃っている」


俺はそういって鞄からVRの素材、麻生地と綿生地、それに反物を三巻き、まだまだ鞄には羊毛(ウール)や毛糸など、VRの素材が入っているが、まずはこの程度でいいだろうと思い、テーブルに乗るだけの量を取り出した


「こんなにいっぱい、何その鞄」


「魔法の鞄みたいな物だ」


「それに反物なんて、この世界にはまだ存在してないと思うわよ」


「そうなのか? ならこれは出さない方がいいか」


「待ってまって

私、和服とかも作れるわよ」


反物を抱きかかえ、目を輝かせている

趣味でコスプレ衣装の制作と言っていたし、やはり服を作るのは好きなのだろう


「まぁ外で着なければいい事だしな

話を戻すぞ、三ヶ月契約で服を何着か見繕ってくれ」


「それは問題ないわ、あとは契約金ね

私は奴隷堕ち寸前だから大金を出せとは言わないけど、せめて税を支払えて生活できる程度は欲しいわ」


「一月、金貨三枚、針や糸など経費が必要だろうし、合計金貨十枚でどうだ」


「あんた以外とケチね、でもまぁいいわ」


「契約書は必要か?」


「あった方がいいんだろうけど、私は急場を凌げて服が作れるならそれでいいわよ」


「なら必要ないか

手持ちの金貨でまとめて払えないから、とりあえず一月分の金貨三枚と、必要経費として金貨一枚、計金貨四枚を渡しておく」


「先に渡してもらえるのは助かるわ

これでどうにか奴隷堕ちは免れたわ」


「残りは服ができたときに渡すようにしよう」


「あんた、私がこれを持って逃げるとは思わないの?」


話していて思ったが、こいつは意外とサバサバした性格だな・・・


「残りの金貨も貰わず逃げはしないだろう

それに、リーサは残りの分も貰っても逃げないだろうしな」


「どうしてわかるのよ」


「服が作りたいんだろ

なら俺と関わり合っていた方がいいだろう

生地はまだまだある事だしな」


「なんか腹立つけど、その通りよ」


「そうだ、毛皮(けがわ)(なめ)したりできるか?」


「さすがにそれは無理よ

私は猟師じゃないのよ」


「それもそうだな

服はいつできそうだ」


「これ全部仕立てるとなったら三月じゃ足りないわよ」


「そうなのか

なぁ、下着一着ぐらいなら夜までには用意できるんじゃないのか」


「まぁ、作ってほしいなら作れるけど」


「なら夜に取りにくるから下着は急いでくれ

あとは七日後に仕上がった分だけ取りにくる」


「今着ている様な七分袖と五分袖のカッターシャツでいいの?」


「あぁ、それで問題ない」


「わかったわ」


「あと、よかったら食ってくれ

リーサの作った靴をロロアが気に入っていてな、その礼だ」


俺はそういって、鞄からベアのブロック肉を取り出してテーブルの隅に置き、ゲートを開いた


「また夜に来るよ」


俺は、雑貨屋にゲートを繋げて、その中に入り、ゲートを閉ざした


「採寸もしないで、どうやって仕立てろっていうのよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ