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2  [現実は紐パンツ]


フォールたちに店を任せて、朝からライドと俺はゲートで荒野町の近くまで移動し、冒険者ギルドまでやってきていた


俺の受けられるD、Eランクの依頼では薬草採取などばかりで実入りが少なく、たいした金にはならないのでBランク冒険者のライドに頼み、俺の冒険者ランクでは受けられないA、Bランクの依頼をライドに受けてもらう事にした


「討伐依頼は今のところ地竜だけのようだな」


「どうする? 報酬は少ないが採取依頼にするか」


「採取は一番報酬が高いので銀貨七枚か

他の採取以来は銀貨一、二枚がほとんどだ、これでは纏まった金にはならないな」


「いくら必要なんだ?」


「とりあえず金貨で三十枚だ」


「金貨三十枚? 順調なときの俺の六月分以上の報酬じゃないか」


「そうなのか?」


「そうだ、それにそんな大量の金貨なんか何に使うんだ」


「ダンジョンは危険だからな、黒衣をトトに譲ろうと思ってな

ロロアには目をつけている付与可能な服があるんだが、それの値段が金貨三十枚なんだ」


「そういう事か

護衛依頼もあるが、指定ランクC以上からだしな」


依頼をこなせば手っ取り早く金策になるかと思っていたが、当てが外れてしまった


「地道に稼ぐ事にするか」


「素材なら俺が代わりに受付で買い取ってもらえるが、ベアの毛皮と蜘蛛型の魔物から剥いだ目と毒袋を換金してくるか?」


「小出しに買い取ってもらっても面倒だからな、ある程度集まってから売ることにする

鞄に入れておけば劣化する事もないしな」


金策になるような依頼もなかったので、ライドとはギルドで別れることにした


「また何かあったら声をかけてくれ

依頼を受けたとき以外は、だいたい二階の酒場にいるからよ」


俺はギルドを出て、当ても無く金策になりそうな事はないかと、町の中を少し散策してみる事にした


とりあえずは西側の露店でも覗きに行くかと思い、中央広場を西に向かうと、薄暗い路地の奥で何やら三人の男に難癖をつけられている女の子を見つけてしまった


「さわらぬ神に祟り無しと・・・」


俺は女の子と目が合ったが、それを無視(スルー)して歩き続けようとすると


「日本人! あなた日本人でしょ」


と声が聞こえると同時に、胸が熱くなり、心臓がドクンッ、ドクンッと、大きく脈を打った


まさか、この異世界で<日本>という言葉を耳にする事はないと思っていたからだ


「あー、なんだ・・・俺の方がこの子に用ができた

だからお前たちはあっちに行ってくれ」


俺は蜘蛛の子を散らす感じで、手の甲を男達に向けながら二度振り、その男たちを横切り、女の子の方に歩み寄った


真っ赤に燃える様な深い紅色の長い髪に、ロロアに買ってやった様なホットパンツにTシャツ姿


歳は二十歳には満たないといったところだろうか


「なんだお前は? 後からシャシャリ出てきやがって」


「もうそういうのいいから、どっか行っていいぞ

それで、お前はどう見ても異世界人に見えるんだが、なぜ日本を知っている」


「それより、あいつらを何とかしないと落ち着いて話もできなわよ」


「助けて欲しいのか?」


「見てわかるでしょ! 今ピンチなのよ」


「なにかしたのか?」


「別に・・・あんたに関係ないわ」


「そうか」


俺は振り返り、明るい光に照らされている路地の入り口に向かって歩き出そうとすると


「助けてくれたら服を作ってあげるわ」


つい足を止めて返事をしてしまった


「別に、服には困っていない」


「下着はどう?」


「子供の下着に興味は無い」


「こっちじゃ十五歳で成人なのよ、それに私の下着じゃないわよ

あんたの下着よ! 紐パンツなんて卒業したいでしょ?」


「どういう意味だ?」


「あんた、もしかして自作してるの?」


「何を言っているのか理解できないんだが・・・

自作もしていないし、今穿いてるのはボクサーパンツだ」


「そこまで聞いてないわよ

でも変ね・・・この世界にある下着は紐パンツだけなんだけど」


「なん・・・だと?」


「あなたもしかして、転生者じゃないの?」


俺自身、転移してしまっているのだから、転生者と言われても驚く事もなかった

それにその言葉で、地球から転生した者か、と理解できた


「俺は気づいたらこっちの世界に居た」


「そういう事なの・・・助けてくれたら男性用の下着を作ってあげるわ」


その話(紐パンツ)が本当か信用できない」


「あいつらで確認すればいいじゃない」


三人組の男に視線をやると、ひそひそと話合っていたが、何か決まったのか、俺に声をかけてきた


「そこのお前、俺たちは領民の為に居る善良な役人だ

その女を差し出せば、何も見なかった事にしてやるよ」


「おい、役人って言っているが、やはり何かしたのか?」


「善良な役人が女の子一人を路地裏に追い詰めたりしないでしょ」


「まぁ、それもそうだな

役人でも何でもいいが、とりあえずお前たち三人ともズボンを脱げ」


「他に言いようはないの? 変態みたいよ、あんた」


言われてみれば確かに・・・と思ったが、とりあえず確かめておきたい


こればかりは、最重要案件だ!


「はぁ? 何いってんだ・・・」


戸惑う三人


「いいから早くしろ」


「ふざけてんじゃねえ!」


先頭に居た一人が、駆け出して、握り締めた拳を振り下ろしてきた


半身を避けて空を切った拳は行き場を失い、体勢を崩したそいつに足を引っ掛けると、盛大に転倒し、打ち所が悪かったのか気を失ってしまった


それを見た後ろの二人は、懐からナイフを取り出した


「これが見えないのか?」


俺は腰に携えていた刀の柄に手を置いて、指先で柄尻を、トン、トンっと軽く叩いてみせた


「そんな棒きれで調子に乗るんじゃねえ」


「刀なんて知ってるわけないでしょ」


女の子に言われ、またも納得してしまった


「それもそうか」


ナイフを手にした二人は、有無を言わせずに襲い掛かってきた


一人がナイフを片手に切っ先を俺に向けて突き出した


刀身を鞘に納めたまま、鞘を振ってナイフを弾き飛ばし、そいつの顎に強烈な蹴りをお見舞いしてやると、両膝をガクンと地に着け気絶してしまった


それを見たもう一人は少し後ずさったので、鞘から抜いた刀身を見せると、ナイフを自ら手放し、ナイフは地面に転がった


「冗談だろ? そんなもんで斬りつけたら死んでしまうぜ」


「とりあえず、ズボンを脱いでくれるか

そうすれば手は出さない」


「あんた、この状況でその台詞・・・ギリアウトよ」


俺も自分で何を言っているのか、わからなくなってきた


「わかった・・・脱ぐから剣をしまってくれ」


「完全アウトね」


「アウトだな」


脱がしておいてなんだが、早く帰りたい・・・


「こ、これでいいか」


男がズボンを脱ぐと、見るに耐えない光景が飛び込んできた


「もういい、こいつらを連れて行け」


男はそそくさとズボンを穿くと、倒れた二人を両脇に抱きかかえて去っていった


「私はリーサよ

とりあえず礼を言っておくわ、ありがとう」


「俺はカザミだ

気にするな、だが、Tバックの紐パン・・・か」


「あれが現実よ!」


現実を就き付けられた俺は今、額に手の平を当てながら消沈している・・・

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