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クラスから追放された最弱の俺。最強スキル【コピペ】で成り上がる。  作者: あーる


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5

 やがて、視界の先にこんもりとした森が見えてきた。


 あれが依頼票にあった「初心者向けの森」だろう。


 入口に近づくにつれ、空気はひんやりと湿り気を帯び、木々の匂いが濃くなってくる。


 俺は気を引き締め、腰の短剣にいつでも手が届くようにしながら、ポポ草を探し始めた。


 依頼票にあった特徴――地面近くに生える、やや丸みを帯びた緑色の葉。そして茎の部分に小さな白い斑点があること――を頼りに、注意深く周囲を観察する。


 しばらく森の中を進むと、開けた場所に数本のポポ草が生えているのを発見した。


「あった……! これがポポ草か」


 写真で見たハーブに少し似ている。


 俺は早速、そのうちの一本に触れ、スキルを発動させた。


(コピー!)


《[ポポ草]をコピーしました。クリップボード容量:6 / 10》


 成功だ。


 続けて、手のひらに向けて念じる。


(ペースト!)


 MPがわずかに減少し、手の中にポポ草がもう一本出現した。


 しかし、よく見比べてみると、ペーストして作り出したポポ草は、元々生えていたものより心なしか色が薄く、少し萎びている。


「……完全に同じものが出てくるわけじゃないのか」


 少なくとも、生き物や薬草のようなものはコピーすると品質が落ちるらしい。


 依頼品に混ぜるのはやめた方がいいな。


 俺はコピーした一本を検証用としてカゴの端に分け、自生しているポポ草を探すことにした。


 その時、近くの茂みがガサガサと揺れる音が聞こえた。


(……!)


 俺は咄嗟に身を屈め、短剣の柄に手をかける。


 モンスターか?


 あるいは他の冒険者か?


 茂みから姿を現したのは、モンスターではなかった。


 俺と同じくらいの年頃に見える、赤毛をポニーテールにした少女だった。


 動きやすそうな革鎧を身に着け、腰にはナイフを下げている。


 彼女の手にも数本のポポ草が握られていた。


 少女は俺の存在に気づくと、びくりと飛び退き、ナイフに手をかけた。


「だ、誰!?」


「驚かせてすまない。俺も冒険者で、ポポ草を採取しに来たんだ」


 俺は両手を軽く上げ、胸元のギルドカードが見えるようにした。


 少女は訝しげな表情で俺のカードを一瞥し、それから自分のカードもちらりと見せた。


「……私もよ! Fランクのリーナ。あなた、もしかして新人?」

「ああ、ソウマだ。今日ギルドに登録したばかりなんだ」

「ふーん、ソウマね。まあいいわ。お互い採取の邪魔はしないようにしましょ」


 リーナと名乗った少女はそう言うと、ぷいと顔を背け、再びポポ草を探し始めた。


 俺も自分の作業に戻る。


 リーナから少し離れた場所で、自生しているポポ草をさらに探していく。


 目標の10本まで、あと少しだ。


 地面に視線を落としていた、その時だった。


「きゃっ!」


 すぐ近くで、リーナの短い悲鳴が上がった。


 はっとして顔を上げる。


 緑色の肌をした、醜く小さな人型の生物――ゴブリン。


 粗末な棍棒を振り上げ、ナイフを構えて後退りするリーナに襲いかかろうとしている。


 考えるより先に、体が動いていた。


「おい、こっちだ!」


 俺は短剣を抜き放ち、ゴブリンに向かって叫びながら駆け出した。


 ゴブリンは俺の声に気づき、その歪んだ顔をこちらに向ける。


 背は低いが、筋肉質だ。


 ニヤリと口角を上げると、ターゲットを俺に変更し、棍棒を振り上げて突進してきた。


(速くはない……けど、あの棍棒に当たったらヤバい!)


 迫りくるゴブリン。


 俺はその動きを必死で目で追い、同時にスキルを発動させた。


(コピー!)


《[ゴブリンの棍棒攻撃パターン(予備動作)]をコピーしました。クリップボード容量:7 / 10》


 成功した。


 頭の中に流れ込んできたのは、未来そのものではない。


 肩の上がり方。腰の捻り。足の踏み込み。


 今目の前にいるゴブリンの予備動作と、コピーした動作パターンが重なる。


(次は……横薙ぎ!)


「ギャアッ!」


 ゴブリンが棍棒を横薙ぎに振るう。


 予測した軌道を頼りに、俺は身を低くして紙一重でかわした。


 同時に足元の石ころを素早くコピー&ペースト。


 生成された石ころを、ゴブリンの顔面に全力で投げつけた。


「ギャッ!?」


 石はゴブリンの額に当たり、一瞬怯ませる。


「ソウマ、後ろ!」


 リーナの鋭い声。


 体勢を立て直したゴブリンが、今度は棍棒を頭上から振り下ろそうとしている。


 再び予備動作を見る。


(今度は振り下ろし!)


 横へ跳ぶ。


 棍棒が地面を叩く。


 がら空きになった懐へ踏み込んだ。


(ここだ!)


 餞別にもらった錆びた短剣を、皮鎧の隙間へ突き立てる。


「ギィィィイイイ!!」


 ゴブリンは絶叫を上げ、棍棒を取り落とした。


 緑色の血が流れ出し、痙攣していた体が、やがて動かなくなる。


「はぁ……はぁ……っ」


 俺は肩で息をしながら、倒したゴブリンを見下ろした。


 初めての、本物の戦闘。


 そして、初めて生き物を殺したという事実。


 心臓が激しく脈打ち、手の震えが止まらない。


「……すごいじゃない、ソウマ! まさかゴブリンを倒しちゃうなんて……助かったわ、ありがとう!」


 リーナが駆け寄ってきた。


 さっきまで俺を警戒していたのが嘘みたいだ。


「いや……リーナが注意してくれたおかげだ。危なかった」


 俺はまだ震えの残る手で短剣を握り直した。


「それにしても、今の動き……ただの新人じゃないわね? あなたのスキルって、もしかして戦闘系の凄いスキルなの?」


「【コピーアンドペースト】だよ」


「こぴーあんどぺーすと……? 何それ? 聞いたことないわ」


 リーナは首を傾げたが、


「まあ、よく分からないけど、役に立つみたいね!」


 と、あっけらかんと言った。


 俺たちは協力して、ゴブリンの死体を近くの茂みに引きずり込み、目立たないように隠した。


 その後、少しだけ打ち解けた雰囲気で、二人はポポ草の採取を再開した。


 互いに見つけた場所を教え合いながら森を歩く。


 やがて、依頼に出せる自生のポポ草だけで10本を超えた。


 検証用にコピーした一本は、カゴの端に分けてある。


「俺はこれでギルドに戻るよ。リーナはどうする?」

「私ももう十分かな。街まで一緒に行きましょ」


 二人で森を後にし、街への帰路についた。

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