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「行方不明? それはいつからだ?」
「ここ数日の間に、三人ほど……」
佐知さんの声が震えている。
「みんな、一人で暮らしていたり、小さなお店で働いていたりする子ばかりです」
「衛兵や騎士団には?」
「届けは出ているみたいなんですけど……ただの家出か、どこかへ働きに出たんだろうって」
「三人も続いてるのに?」
「はい……」
偶然とは思いにくい。
しかも、戦闘能力の低いクラスメイトばかり。
「佐知さん」
「はい?」
「しばらく、一人で帰らない方がいい」
「え?」
「ここにいてくれ。神殿なら神官も警備もいる。一人で宿にいるより安全だ」
「でも、ご迷惑じゃ……」
「命の方が大事だ」
佐知さんは少し迷ってから、頷いた。
「……分かりました。相馬君」
「リーナ」
ちょうど病室に来ていたリーナを見る。
「頼みがある」
「何よ。また無茶するつもり?」
「俺はまだまともに動けない。代わりに失踪した三人のことを調べてくれないか」
「最後に目撃された場所とか?」
「ああ。交友関係でも、仕事でも、何でもいい」
「はぁ……」
リーナが大きくため息をつく。
「分かったわよ。あんたが勝手に動き回るよりはマシだし」
「助かる」
「佐知はここにいるのね?」
「ああ」
「なら安心ね。行ってくる」
リーナはその日のうちに調査を始めた。
俺の病室には、その後ルナとレイカもやってきた。
「クラスメイトの失踪事件、ですか……」
ルナが腕を組む。
「非戦闘員ばかりというのは気になりますね」
「何か思いつくか?」
「まだ何とも言えません。ただ、あなたたち異世界人が持つ特殊なスキルに目をつけている人間がいる可能性も、完全には否定できません」
「スキルを?」
「可能性の一つです。証拠はありませんけど」
ルナ自身も断定するつもりはないらしい。
「相馬」
今度はレイカが口を開いた。
「私にも何か手伝わせて」
「レイカが?」
「何よ、その顔」
「いや……」
「城にいた頃に知り合った騎士や使用人ならいるわ。王都のことも、あなたたちよりは分かる」
その目は真剣だった。
「私にも責任がないとは言えないから」
「……分かった。頼む」
こうして、俺が動けない間、リーナ、ルナ、レイカ、そして佐知さんが、それぞれの方法で調査を始めた。
リーナは失踪者が最後に目撃された場所を回り、店主や近隣住民から話を聞く。
レイカは城にいた頃の知り合いを頼り、王都で最近問題になっている商人や組織について調べる。
佐知さんは神殿から、失踪した三人の友人たちへ手紙を出し、最近の様子を尋ねた。
ルナは集まった情報を整理していく。
俺は病室で報告を受けながら、それらを書き留めていった。
「本当に探偵みたいになってきたな……」
さらに数日が経った。
日常生活ならほぼ問題なく動けるところまで体は回復していた。
左肩にはまだ痛みが残っており、神官からは激しい戦闘だけは避けるよう言われている。
そんなある日。
リーナが勢いよく病室の扉を開けた。
「ソウマ! 分かったわ!」
「何が?」
「三人の共通点!」
机の上へ紙を広げる。
「失踪する少し前、三人とも『ラプラス商会』ってところの人間と会ってる」
「ラプラス商会?」
「最近急に大きくなった商会みたい。仕事を紹介するとか、もっと稼げる場所があるとか、そういう話をしてたらしいわ」
そこへルナとレイカも入ってきた。
「私も名前を調べました」
ルナが言う。
「表向きは織物や食料品を扱っている普通の商会です。ただ、違法な魔道具や希少な魔獣の取引に関わっているという噂もあります」
「噂だけ?」
「はい。今のところ証拠はありません」
レイカも紙を一枚差し出した。
「城にいた頃に知り合った人たちにも聞いてみたわ」
「何か分かった?」
「ラプラス商会は王都の河港区にかなり大きな倉庫を持ってる。前から衛兵に目をつけられてるみたいだけど、決定的な証拠が出てないそうよ」
「三人とも、その商会と接触していた……」
偶然か?
いや。
三人連続なら、調べる価値はある。
「失踪と商会が関係している証拠はまだない」
俺は紙を見つめる。
「でも、三人とも接触してたなら偶然とは思いにくいな」
「でしょ?」
「エマさんたちにも伝えよう」
「ギルドに?」
「ああ。俺たちだけで勝手に突っ込むのはもうやめる」
リーナが目を丸くした。
「……あんた、成長したわね」
「どういう意味だよ」
その日のうちに、王都に滞在しているギルドマスターとエマさんへ情報を共有した。
そこから衛兵隊にも連絡が回った。
だが、商会が三人を誘拐したという証拠はまだない。
いきなり倉庫へ踏み込むことは難しいらしい。
「まず、倉庫周辺の様子を確認しましょう」
エマさんが言った。
「ただし、危険だと思ったらすぐ撤退してください。絶対ですよ?」
「分かりました」
「本当ですね?」
「……はい」
念を押された。
「こちらでも応援できる冒険者と衛兵を待機させます。何か確認できたら、ルナさんから連絡をください」
「はい!」
ルナが元気よく返事をした。
「それで、誰が行くの?」
リーナが尋ねる。
「俺とリーナ。それから……」
レイカを見る。
「私も行くわ」
「体は?」
「あなたに言われたくない」
「それはそうだな」
「ルナと佐知さんは後方で通信を頼む」
「任せてください!」
「分かりました、相馬君」
佐知さんも頷く。
「コピまるも何とか直っています。私と一緒に待機させますね」
ルナが言った。
一人で戦う必要はない。
俺には、こいつらがいる。
「行こう」
今度は、一人じゃない。




