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クラスから追放された最弱の俺。最強スキル【コピペ】で成り上がる。  作者: あーる


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「グルルルルルル……」


 黒い狼の群れが、ゆっくりと俺を取り囲んでいく。


 数は二十を超えている。


 全部倒す?


 無理だ。


 MPは、首元のアミュレットのおかげで少しだけ戻っている。


 だが、何度もスキルを使えるほどではない。


 左肩にも深い傷がある。


 必要なのは勝つことじゃない。


(リーナたちが修理を終えるまで……ここを通さなければいい)


 一体の狼が、低く姿勢を落とした。


 次の瞬間。


「キシャアアア!」


 正面から飛びかかってくる!


「くっ!」


 ウォーハンマーを振るい、横から殴りつける。


 狼は地面へ叩きつけられた。


 だが、それを合図にするように、左右から二匹が襲いかかってきた!


「最初の一匹は囮か!」


 何とか後ろへ飛び退く。


 爪が胸元を掠めた。


(連携してる……)


 以前のシャドウウルフより明らかに統率されている。


 また正面の一匹が腰を落とした。


 左右の個体が少し距離を取る。


(……コピー!)


《[上位シャドウウルフの連携攻撃パターン(断片)]をコピーしました。クリップボード容量:10 / 10》


 直後、正面の狼が飛びかかる。


 だが今度は、その一匹だけを見ない。


 保存された動きと、周囲の狼たちの姿勢を照らし合わせる。


 左の狼の耳が伏せた。


 右の一匹が外側へ回り込む。


(さっきと同じだ)


 正面は囮。


 本命は左右。


 俺は正面の攻撃をギリギリまで引きつけ、横へ飛んだ。


 その直後。


 二匹の狼が、俺がいた場所で激突する!


「ギャンッ!」


「よし!」


 倒す必要はない。


 動きを読んで、空振りさせる。


 時間さえ稼げればいい。


「グルルァァ!」


 次の群れが襲ってくる。


 保存したパターンと、目の前の動きを照合する。


 前。


 右。


 左。


 どこから来る。


 何を囮にする。


 全部分かるわけじゃない。


 コピーしたのは、あくまで断片だ。


 それでも、何の情報もない状態よりは遥かにマシだった。


(相手の動きをコピーして、その場で照らし合わせながら戦う……)


 ウォーハンマーを短く振るい、突進してきた狼の鼻先を叩く。


(模倣戦闘ってところか)


 一歩下がる。


 追ってきた狼の前へ、保存していた[瓦礫]を一度だけペーストする。


 突然現れた石塊に、狼が足を取られた。


 また一歩下がる。


 背後には大きな岩。


 これなら、後ろから襲われる心配はない。


(囲まれなければ、まだやれる)


 以前なら、もっと大振りにウォーハンマーを振っていた。


 だが今は、一撃ごとの無駄を減らすことを意識する。


 腕だけで振らない。


 腰を回す。


 重心を必要以上に動かさない。


 頭に浮かんだのは、廃坑でコピーした[動力伝達機構の設計図(断片)]だった。


(機械と人間じゃ構造は違う)


 それでも。


(力を無駄なく伝えるって考え方くらいなら、使える)


 別に体へ設計図をペーストするわけじゃない。


 ただ知っていることを、実際の動きで試すだけだ。


「キシャアア!」


 ウォーハンマーを振り下ろす。


 ゴッ!


 狼の肩へ直撃。


 一体が地面へ転がった。


「はぁ……はぁ……!」


 息が切れる。


 左肩がズキズキと痛む。


 動きを読めたところで、俺自身が速くなったわけじゃない。


 身体能力が上がったわけでもない。


 避けきれなければ普通に傷を負う。


 この戦い方にも限界はある。


(まだか……!)


 後ろを見る余裕はない。


 一瞬でも気を抜けば食い殺される。


「グルオオオオオオオッ!」


 群れの奥から、一際大きな狼が現れた。


 他の個体の倍近い。


 赤い瞳が、俺だけを見ている。


「リーダーか……」


 巨大な狼が地面を蹴る!


「速っ――!」


 動作パターンを確認する暇もない。


 ウォーハンマーで受け止める!


 ガンッ!


「ぐっ!」


 体ごと弾き飛ばされた。


 地面を転がる。


「がっ……!」


 傷ついた肩を強く打ち付けた。


 視界が滲む。


 リーダー格が俺へ飛びかかる。


「まず……!」


 巨大な口が迫った、その瞬間。


 ヒュッ!


 一本の短剣が飛来し、狼の目元を掠めた!


「ギャンッ!」


「ソウマ!」


 リーナの声。


「修理終わったわよ!」


「リーナ……!」


「いつまで寝てんのよ!」


 その横から、氷の礫が飛んでくる。


 レイカの魔法だ。


「今のうちよ!」


 さらに後ろでは、高山が剣を構え、ソリへ近づこうとする狼を牽制している。


「相馬! こっちは俺たちが守る! 早く来い!」


 俺は一瞬、目を見開いた。


「……分かった!」


 最後の力で立ち上がる。


 リーダー格の狼へウォーハンマーを叩きつけ、距離を作った。


 そしてソリへ向かって走る。


「動かすわよ!」


 リーナが修理した駆動部を起動する。


 ガッ、ガッ、ガッ!


 再び機械脚が地面を蹴始めた。


「全員、押せ!」


 俺もソリの後ろへ回る。


 高山たちも加わり、全員で押す。


 狼たちは追ってくる。


 だが、距離は少しずつ開いていった。


「はぁ……はぁ……」


 もう必要ない。


《[上位シャドウウルフの連携攻撃パターン(断片)]を削除しました。クリップボード容量:9 / 10》


 それからどれくらい進んだだろう。


 空がすっかり明るくなった頃。


「あった……!」


 街の外壁が見えた。


「着いたぞ!」


 門の前では、すでにギルド職員と何台かの馬車が待っていた。


「ソウマさん!」


 エマさんがこちらへ駆けてくる。


「王都へ向かう馬車を用意してあります! 怪我人をこちらへ!」


「助かります……!」


 俺たちは急いで負傷者を馬車へ乗せ替えた。


 呪いを受けた女子生徒も、まだ息をしている。


「王都の神殿まで、一番速い道でお願いします!」


「分かりました!」


 そこへ、工房から駆けつけてきたルナの姿が見えた。


「ソウマさん!」


「ルナ……」


「皆さん、無事でよかった……!」


 ルナは息を切らしながら、門の外に残された急造ソリへ駆け寄った。


 その端に載せられた、動かないコピまるの本体を見る。


「コピまるは私が回収します」


「頼めるか?」


「もちろんです。王都のギルドにも使える工房があるそうなので、私も一緒に行きます。絶対に直します」


「頼んだ」


 ルナとコピまるも別の馬車へ乗り込む。


 やがて、馬車が走り出した。


 張り詰めていたものが切れたのか、急に全身が重くなる。


「ソウマ?」


 リーナの声が遠く聞こえる。


「ちょっと……ソウマ!」


 俺の意識は、そこで途切れた。


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