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クラスから追放された最弱の俺。最強スキル【コピペ】で成り上がる。  作者: あーる


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『古代の呪詛の一種です! すぐに高位の解呪を受けないと、手遅れになる可能性があります!』


「手遅れ……?」


 目の前では、クラスメイトの女子生徒が苦しげに喘いでいる。


 肌に浮かんだ黒い文様は、ゆっくりと範囲を広げ続けていた。


「くそっ、どうすれば……!」


 リーナが解毒薬を握りしめる。


「王都まで、ここからじゃどんなに急いでも数日はかかる……!」


「そんな……じゃあ、この子は……」


 他のクラスメイトたちから、絶望的な声が漏れる。


 俺もリーナも疲労困憊。


 MPもほとんど残っていない。


 首元のMPリジェネ・アミュレットが、少しずつ魔力を戻してくれている。


 それでも、今使える量は僅かだ。


 八方塞がりだ。


 ――本当にそうか?


 俺は、倒れている彼女のそばへ膝をついた。


 黒い文様を見る。


 ただ無秩序に広がっているわけではない。


 細い線が何本も絡み合い、一つの模様を作っている。


(呪いそのものは無理でも……残ったMPで、構造だけなら?)


 俺は黒い痣へ手を近づける。


(コピー!)


《呪詛そのもの、および負のエネルギーの直接コピーはできません》


 やっぱりか。


 だが、続けて別のメッセージが浮かんだ。


《[古代呪詛の紋様構造(断片)]をコピーしました。クリップボード容量:10 / 10》


「構造だけなら……!」


『ソウマさん、何か分かりましたか!?』


「完全じゃない。でも、この文様……何本もの線が、一か所に集まってる」


 コピーした情報と、実際に浮かんでいる黒い痣を照らし合わせる。


 腕の内側。


 いくつもの線が交差し、そこから文様が全身へ広がっている。


『もしかすると、そこが呪詛の流れを体へ循環させている要所かもしれません!』


「要所……」


 その時、リュックの中に入れていた小瓶を思い出した。


「聖水……!」


 以前、アンデッド対策に買っておいたものだ。


 俺は小瓶を取り出す。


「ソウマ、それで何を……?」


「分からない。でも、やってみる」


 黒い文様の線が集中している部分へ、聖水を少量垂らす。


 ジュッ。


 微かな音。


「う……っ!」


 女子生徒の体が大きく跳ねた。


「大丈夫か!?」


 黒い痣そのものは消えない。


 だが――。


「止まった……?」


 それまで腕を這うように広がっていた文様の動きが、ぴたりと止まっている。


『ソウマさん! 進行速度が大幅に落ちています!』


「成功したのか……?」


『完全に解けたわけではありません! 高位の神殿で正式な解呪を受ける必要があります。でも、これなら少し時間を稼げます!』


「そうか……」


 俺は大きく息を吐いた。


 コピーした呪詛の構造情報も、もう必要ない。


《[古代呪詛の紋様構造(断片)]を削除しました。クリップボード容量:9 / 10》


 レイカが、信じられないような顔で俺を見ている。


「あなた……呪いの仕組みを、見抜いたの?」


「全部じゃない。ルナと聖水のおかげだ」


『ソウマさん、それともう一つ!』


「どうした?」


『先ほどギルドか連絡がありました。最初に見つけた五人は、救助隊が無事に保護したそうです! 全員、生きています!』


「……そうか」


 胸の奥に引っかかっていたものが、一つ消えた。


「よかった……」


 リーナも小さく息を吐く。


 これで、あの五人については大丈夫だ。


 問題は、ここにいる俺たちだった。


 呪いの進行を遅らせただけ。


 急いで神殿へ連れていかなければならない。


「移動手段……」


 怪我人も多い。


 このまま全員を徒歩で街まで連れて戻るだけでも、相当な時間がかかる。


『ソウマさん!』


「何だ?」


『ギルドにも状況を伝えます! 街へ戻り次第、王都へ向かうための馬車を用意してもらえるよう頼みます!』


「なら、まず街までどうにかして戻ればいいんだな」


『はい! 王都までそのまま移動するより、街で馬車を乗り換えた方がずっと早いです!』


 俺は周囲を見回す。


 そして――。


 傍らに立つコピまるが目に入った。


「ルナ」


『はい?』


「コピまるの駆動機構って、何かに流用できないか?」


 一瞬、通信の向こうが静かになった。


『……もしかして、乗り物を作るつもりですか?』


「怪我人を運べるだけでいい。歩くより少しでも速ければ」


『動力部だけでは無理です。脚部の駆動機構も一緒に外して、推進用に使う必要があります』


「できるのか?」


『理論上は……短時間なら。ただし、重量が増えれば速度はほとんど出ません。それに、動力部も脚部も無理やり使うことになります。このまま長時間動かせば壊れる可能性があります!』


「それでも、怪我人を抱えて歩くよりはいい」


『それと、コピまるから外したら、この子は完全に動けなくなりますよ』


「後で直せるか?」


 少しだけ間があった。


『……直します』


 ルナの声が少しだけ低くなる。


『絶対に直します。今は、その人を助けてください』


「分かった。借りるぞ、コピまる」


 小さなゴーレムを見下ろす。


 もちろん返事はない。


 だが、不思議と少し申し訳ない気持ちになった。


「みんな! 手伝ってくれ!」


 俺は声を張り上げる。


「何を作る気?」


 リーナが尋ねる。


「怪我人を街まで運べるソリだ。立派なものじゃなくていい。動けばいい!」


 周囲には木がある。


 ロープも残っている。


 そして、コピまるには動力部と脚部の駆動機構がある。


「丈夫そうな木を切る! リーナ、縄で固定するのを頼む!」


「分かった!」


「レイカ、木材を切るのを手伝えるか?」


「私?」


「氷の刃みたいなものは作れるだろ!」


「……やってみるわ!」


 レイカが手をかざす。


 薄い氷の刃が生まれ、木の表面へ食い込んでいく。


「高山!」


「……何だよ」


「力があるなら、切った木を運べ!」


 一瞬、高山の顔が歪む。


 だが――。


「……分かったよ」


 彼は何も言い返さず、重い木材を持ち上げた。


 他のクラスメイトたちも動き出す。


 動ける者が木材を運び、縄を締め、部品を並べる。


 同じ長さの木材が何本も必要になった。


 作業を始めてから、すでに何時間か経っている。


 休憩を挟みながら動いていたおかげで、MPリジェネ・アミュレットによってMPも少しずつ戻っていた。


 俺は加工の終わった一本の木材へ手を触れる。


(コピー!)


《[加工済み木材]をコピーしました。クリップボード容量:10 / 10》


(ペースト!)


 同じ形の木材を一本。


 もう一本。


 必要な分だけ増やしていく。


 必要数を揃えたところで、データを削除した。


《[加工済み木材]のデータを削除しました。クリップボード容量:9 / 10 》


 俺がやっているのは、部品を増やすだけだ。


 木を切るのも。


 形を整えるのも。


 縄で固定するのも。


 機械部品を組み合わせるのも。


 全部、俺たち自身でやる。


『ソウマさん、まずコピまるの背面装甲を開いてください!』


「これか?」


『はい。そこに動力部があります。その下に脚部へ繋がる駆動機構がありますから、まとめて外してください。配線は切らないように!』


 ルナの指示に従い、慎重に部品を外していく。


 動力部。


 そこから伸びた金属製の機構。


 最後に、小さな脚部もまとめて取り外した。


 コピまるの目から光が消える。


「悪いな。後で絶対直してもらうから」


 動かなくなった本体を、完成途中のソリの隅へ載せる。


 取り外した脚部駆動機構は、ソリの後部へ固定した。


『その角度です! 脚が後ろへ地面を蹴るようにしてください!』


「こうか?」


『はい! これなら、少なくとも推進力にはなるはずです!』


 底面には、コピまるから取り外した金属板を取り付けた。


 少しでも地面との摩擦を減らすためだ。


 夜を徹した作業になった。


 誰もが疲労困憊だった。


 それでも、仲間の命がかかっている。


 誰一人として弱音を吐かなかった。


 そして、東の空が白み始める頃。


「できた……!」


 完成したのは、大きな木製のソリだった。


 立派な乗り物にはほど遠い。


 木材を縄で無理やり固定し、その後部にはコピまるから移した動力部と脚部駆動機構が取り付けられている。


『最後の接続をしてください!』


 ルナの指示通りに配線を繋ぐ。


「これで……?」


『起動してください!』


 俺が起動部へ触れる。


 ゴゴゴゴ……。


 低い駆動音が響く。


 後部に取り付けられた小さな機械脚が動き始めた。


 ガッ。


 ガッ。


 ぎこちなく地面を蹴る。


 そのたびに、ソリが少しずつ前へ押し出されていく。


「動いた……!」


 誰かが歓声を上げる。


 速くはない。


 馬を走らせるような速度には到底及ばない。


 それでも、怪我人を支えながら全員で歩くよりは遥かに速い。


『無理はさせないでください! 動力部が街まで持つ保証もありません!』


「ああ。止まったら、その時は全員で押す」


 俺は苦しんでいる女子生徒をソリへ慎重に乗せた。


 他の重傷者も続いて乗せていく。


 動ける者は歩き、必要ならソリを押す。


「戻ろう。街へ」


 そこまで辿り着けば、次は王都へ向かう馬車が待っている。


 まだ助かったわけじゃない。


 それでも、絶望しかなかった状況に、確かな道が一本だけ見えていた。

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