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(影特性をペースト!)
一瞬だけ、俺の輪郭が周囲の影に紛れる。
「なっ……」
ヴァルガスの視線がわずかに揺れた。
俺はその一瞬に、全力で上体を捻る!
ザシュッ!
「ぐっ……!」
避けきれなかった剣先が左肩を切り裂いた。
激痛が走る。
だが、首を落とされるよりは遥かにマシだ。
「ソウマから離れなさい、この化け物がぁぁっ!」
リーナは短剣を逆手に持ち、ヴァルガスの脇腹めがけて捨て身で飛び込む!
奴は舌打ちし、長剣でリーナの短剣を弾いた。
その間に俺は距離を取る。
「ぐっ……肩が……」
負傷した左肩を押さえ、よろめきながらも立ち上がる。
まだ戦える。
「ソウマ、大丈夫!?」
「ああ、なんとかな。それより反撃だ。あいつの剣筋、少しは見えてきた!」
俺はウォーハンマーを拾い上げ、ヴァルガスを睨みつける。
「リーナ、俺が前で奴を引き付ける! お前は魔族兵を頼む!」
「……分かったわ! 絶対に無茶しないでよ!」
再びヴァルガスへ向かう。
保存した剣技の断片と、実際の構えを照らし合わせながら、必死に攻撃を捌く。
一撃。
二撃。
かわしきれないものはウォハンマーで受ける。
腕が痺れる。
肩が痛む。
それでも、さっきよりは耐えられる!
その時だった。
「……私にも……まだ、魔力が残っている……!」
牢獄の中から、レイカがボロボロの体で魔法の詠唱を始めた!
「無駄な足掻きを!」
ヴァルガスがレイカへ視線を向け、長剣を振りかぶる!
「させるか!」
俺はウォーハンマーでその軌道を逸らす!
「くらえぇぇぇ!」
レイカの手から放たれた氷の矢が、ヴァルガスの肩を掠めた!
「チィッ!」
ほんの一瞬、ヴァルガスの動きが止まる。
「べ、別に……あんたたちのためじゃないんだからね!」
レイカが顔を赤くしながら叫ぶ。
こんな時までそれかよ。
「だが、これ以上遊んではいられん!」
ヴァルガスが長剣を天へ掲げる。
刃の周囲に、禍々しい魔力が集まり始めた。
まずい。
今までとは明らかに違う。
(このままじゃ……!)
俺の視線が、壁際に積まれていた油壺へ向く。
「リーナ! 伏せろ!」
「え?」
俺はヴァルガスから距離を取りながら油壺へ駆け寄り、一つを掴む。
「何を――」
「これでも食らえ!」
油壺をヴァルガスの足元へ思い切り投げつけた!
ガシャン!
壺が割れ、床一面へ油が飛び散る。
続けて、地面へ落ちていた松明を拾い上げた。
「小細工を――」
「小細工で十分だ!」
松明を投げ込む!
ボウッ!
炎が一気に燃え上がる。
黒い煙が広間へ噴き上がり、一瞬、ヴァルガスの姿を覆い隠した。
「今だ! リーナ、牢を!」
「任せて!」
リーナが牢へ走る。
炎の向こうからヴァルガスの怒声が響いた。
「逃がすな! 出口を塞げ!」
魔族兵たちが一斉に動き出す。
だが、突然広がった炎と煙で互いの動きも乱れている。
リーナはその隙に牢の錠へ短剣を差し込んだ。
「こんなの……!」
ガチャッ!
「開いた!」
「みんな、出ろ!」
捕らえられていたクラスメイトたちが、互いに支え合いながら牢から飛び出してくる。
「そっちに行かせるか!」
出口を塞ごうとした魔族兵へ、リーナが短剣を投げる。
俺も残った力でウォーハンマーを振り抜き、一人を壁際へ弾き飛ばした。
「走れ! 今しかない!」
俺たちは一斉に通路へ駆け込む。
「ネズミどもが! 逃げ切れると思うな!」
背後からヴァルガスの怒声が追ってくる。
炎が奴を倒したわけではない。
ほんの数十秒、追撃を遅らせただけだ。
だからこそ、一秒も無駄にはできない。
「早く!」
レイカも、他の動けるクラスメイトたちも、互いに肩を貸し合う。
高山も、うなだれてはいるものの、何とか自分の足で走っていた。
追手の足音が背後から響く。
それでも、俺たちは走り続けた。
この状況でヴァルガスの剣技を保持していても、今すぐ再びまともに戦える状態ではない。
《[魔将ヴァルガスの剣技(断片)]を削除しました。クリップボード容量:9 / 10》
滝の裏を抜け、ようやく外の光が見えてきた。
「出た……!」
誰かが安堵の声を漏らす。
久しぶりの外気が肺へ入った。
「ソウマ、肩の傷、大丈夫?」
リーナが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ああ、大したことは――」
俺がそう言いかけた、その瞬間だった。
ヒュンッ!
鋭い風切り音。
一本の黒い矢が、俺の目の前――高山の足元へ突き刺さった。
「!?」
全員が息を呑んで上を見上げる。
滝の上の崖。
そこには、弓を構えた魔族兵の影がずらりと並んでいた。
「出口を……先回りされたのか」
リーナが歯噛みする。
ヴァルガスの命令を受けた兵たちだ。
そして、その中央に立つ一体が、静かに次の矢をつがえた。




