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廃坑ダンジョンの入口から転がり出て、俺とリーナはしばらく地面にへたり込んでいた。
「……生きてる」
「当たり前でしょ、誰のおかげだと思ってんのよ」
軽口を叩く元気は、まだ残っているらしい。
リュックの中には、あの巨大な球体魔石の代わりに、ギルドに報告するため慎重に採取した、その一部のサンプルと、新型ゴーレムの残骸から回収した金属パーツが入っている。
本物は、とてもじゃないが二人で運び出せる代物ではなかった。
「さあ、帰るか。ギルドに報告して、たんまり報酬をもらわないとな」
「そうね。それに、ルナにも早く見せないと。あの機械オタク、きっと目を輝かせるわよ」
俺たちは互いに肩を貸し、ふらつく足取りで街への道を急いだ。
冒険者ギルドの扉を開けると、いつもの喧騒が一瞬だけ静まり、いくつかの視線が俺たちに集まった。
まあ、これだけボロボロなら当然か。
「エマさん、ただいま戻りました!」
受付カウンターへ直行する。
エマさんは俺たちの姿を見て、息を呑んだ。
「ソウマさん! リーナさん! そのお姿……! まさか、廃坑の奥で一体……!?」
その声には、隠しきれない心配と、何が起きたのかという好奇が入り混じっている。
「ああ、色々とな。前に見つけた大空洞を、リーナと一緒に詳しく調べてきた。それに、とんでもないものを見つけてしまって……」
俺はカウンターに、リュックから取り出した青白い光を放つ魔石のサンプルと、ゴーレムの金属パーツを置いた。
エマさんがそれらを手に取り、目を見開く。
「これは……なんて美しい魔石……! それにこの金属……ゴーレムのものですか!? もしかして、あの古代機械と関係が……?」
俺たちが頷くと、エマさんは興奮した様子でギルドの奥へ駆け込んでいった。
「ギルドマスター! 大変です! ソウマさんたちが……!」
すぐに、屈強な体躯のギルドマスターが、厳しい顔つきで現れた。
彼はカウンターの上の品々と、俺たちを交互に見比べ、低い声で言った。
「……話を聞こうか」
俺とリーナは、廃坑の奥で見た巨大な機械、新型ゴーレムとの死闘、そして最後に発見した巨大な球体魔石について、詳しく報告した。
ギルドマスターは腕を組み、黙って聞いていたが、その表情は徐々に驚愕の色を帯びていく。
報告を終えると、ギルドマスターは重々しく口を開いた。
「……信じ難いが、君たちのこれまでの実績と、この証拠品を見れば、疑う余地はない。廃坑の奥に、そのような古代の遺物が眠っていたとは……。そして、それを守るゴーレムを、君たち二人で撃破したというのか」
「はい、なんとか」
リーナが少し得意げに胸を張る。
「素晴らしい。まさに英雄的活躍と言えよう」
ギルドマスターは、滅多に見せないであろう、わずかな笑みを浮かべた。
「Eランク冒険者が成し遂げるには、あまりにも大きな功績だ。よって、特例として君たちをDランクへ昇格させることを決定する!」
「Dランクへ……!?」
俺とリーナの声がハモった。
予想以上の評価だ!
「うむ。その巨大魔石については、ギルドが総力を挙げて調査・回収チームを編成する。発見者である君たちには、もちろん破格の報酬を支払う。このサンプルと、ゴーレムのパーツも高値で買い取ろう」
エマさんが、興奮冷めやらぬ様子で、新しいギルドカードと、パンパンに膨らんだ革袋を二つ、俺とリーナの前に差し出した。
「ソウマさん、リーナさん、こちらDランクのギルドカードと、今回の特別報酬、合わせてお一人様、銀貨25枚になります!」
銀貨25枚!
二人合わせれば50枚だ!
これまでの苦労が報われる、とんでもない大金だ。
俺が新しいギルドカードと報酬袋を受け取ろうとした時、エマさんの指先が、俺の手にそっと触れた。
「!」
思わず顔を上げると、エマさんが悪戯っぽく片目をつむり、囁いた。
「これからも、期待していますね、ソウマ“様”?」
その甘い響きと、普段とは違う親密な雰囲気に、俺の心臓がドキリと跳ねた。顔が熱くなるのが分かる。
「あ、ああ……ありがとう、エマさん」
なんとかそれだけ言うのが精一杯だった。
「ふん、ソウマのやつ、顔真っ赤じゃないの」
リーナが横から肘で俺の脇腹をつつく。
「うるさい!」
照れ隠しに言い返すが、顔の熱はなかなか引かない。
ギルドマスターは、そんな俺たちの様子をどこか楽しげに見守っていた。
「とにかく、今日はゆっくり休むといい。詳細な報告は明日改めて聞かせてもらう。巨大魔石の回収についても、君たちの協力が必要になるだろう」
「はい、分かりました!」
俺とリーナは力強く頷いた。
大きな報酬と、Dランクへの昇格。
そして、エマさんのあの言葉……。
疲労困憊のはずなのに、気分は最高潮だった。
ギルドを出て、街の夕焼け空を見上げる。
「さて、どうする? とりあえず、美味いものでも食いに行くか?」
「そうね! 今日はパーッとやりましょ! ソウマの奢りでね!」
「おいおい……」
軽口を叩き合いながら、俺たちは祝杯をあげるために、少し高級な酒場へと向かった。




