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あのスケルトンどもを始末したエリアを抜け、さらに奥へ。
以前作った地図に、新たに気づいた場所を追記しながら進む。
「この通路、前回より空気が重い気がするわね」
リーナが周囲を警戒しながら呟く。
「ああ、間違いない。あの機械の音も、だんだん大きくなってきた」
規則的で、低い唸り。
まるで巨大な何かが息を潜めているようだ。
そして、俺たちは巨大な地下空洞へと辿り着いた。
前回、一人で発見した古代の機械が、その中央に鎮座している。
「うわ……何これ……こんなものが廃坑の奥に眠ってたなんて……」
リーナも言葉を失い、目の前の光景に圧倒されている。
「前回は時間がなくて詳しく調べられなかったが……今回はじっくり見てみるか」
「あんた、こんな気味悪い機械に近づく気? 罠とかあったらどうすんのよ」
リーナは警戒を解かない。
「だからリーナがいるんだろ? 周囲の警戒を頼む」
「……しょうがないわね。何かあったら、あんたを置いて逃げるから!」
憎まれ口を叩きつつも、彼女は短剣を抜き、周囲の闇に鋭い視線を巡らせ始めた。頼りになる。
前回露出していた青い結晶体は、機械の内部へ戻ったのか、今は見当たらない。
俺は、前回コピーした[シャドウウルフの影特性(断片)]を試してみることにした。
(影特性、ペースト!)
MPを少量消費すると、自分の体がふっと周囲の影に溶け込むように薄くなる。
完全な透明化ではないが、気配はかなり薄れているはずだ。
「お、成功だな。これなら警備システムにも気づかれにくいかもしれない」
リーナが小さく「便利ね……」と呟いたのが聞こえた。
影に紛れながら、機械本体にゆっくりと近づく。
表面には、やはり解読不能な文字や紋章がびっしりと刻まれている。制御パネルらしきものもあるが、今は完全に沈黙しているようだ。
「このパネル……何か情報が得られないか?」
(コピー!)
MPを前回よりも多く注ぎ込み、より詳細な情報コピーを試みる。
《[古代機械の制御システム情報(部分)]をコピーしました。クリップボード容量:8 / 10》
《[動力伝達機構の設計図(断片)]をコピーしました。クリップボード容量:9 / 10》
(よし!)
前回より多くの情報を引き出せた。
断片的だが、何かの手がかりになるはずだ。
俺がさらにパネルを調べていると、リーナが声を潜めて警告した。
「ソウマ、何か来るわ! 後ろ!」
振り返ると同時に、機械の一部が静かに開き、そこから前回戦った警備ゴーレムとは少し形状の違う、より大型で重厚なゴーレムが一体、ゆっくりと姿を現した!
その単眼レンズが、俺たちを捉え、赤く点滅する!
「新型か……! しかもデカい!」
「一体だけみたいだけど……こいつはヤバそうね!」
リーナも臨戦態勢に入る。
「グォォン……」
新型ゴーレムが低い駆動音を響かせ、腕に装備された太い砲身のようなものをこちらに向けた!
「まずい、何か撃ってくるぞ!」
俺は咄嗟にリーナを突き飛ばし、自分も横へ跳んで回避する!
直後、ゴーレムの砲身から高圧の蒸気か、あるいは衝撃波のようなものが発射され、俺たちがいた場所の壁を粉砕した!
「とんでもない威力だな……!」
ウォーハンマーを構える。ショートソードでは歯が立ちそうにない。
「リーナ、援護を頼む! 俺があいつの注意を引き付ける!」
「了解! 無茶しないでよ!」
新型ゴーレムは動きこそ鈍重だが、その装甲は以前のゴーレムよりさら厚そうだ。
ウォーハンマーで殴りつけても、甲高い金属音が響くだけで、大したダメージを与えられない。
「くそっ、硬すぎる!」
「ソウマ、足元よ!」
リーナの声。
ゴーレムが足を踏み鳴らすと、地面が揺れ、俺の足元に亀裂が走る!
(こいつ、地震攻撃まで使うのか!)
(動きをコピー!)
《[新型警備ゴーレムの動作パターン(断片)]をコピーしました。クリップボード容量:10 / 10》
だが、巨体故か、単純なパターンではない。
以前の警備ゴーレムほど綺麗には読めない!
[影特性]で姿をくらまし、側面へ回り込もうとするが、ゴーレムの赤い単眼レンズが正確に俺を追ってくる。
気配を薄くできても、完全には誤魔化せないらしい。
「ソウマ! あのゴーレム、関節部分の装甲が少し薄いみたいよ!」
リーナが、壁を蹴ってゴーレムの背後に回り込みながら叫ぶ。彼女は持ち前の俊敏さでゴーレムの攻撃を避けつつ、弱点を探っていたのだ。
「関節か!」
コピーしておいた[動力伝達機構の設計図(断片)]が頭をよぎる。
(同じ古代技術なら、動力を伝える部分には何か共通点があるかもしれない)
リーナが見つけた膝裏。そして首の付け根。
どちらも装甲の継ぎ目が集中している。
「リーナ! 膝の裏を狙えるか!?」
「任せなさい!」
リーナはゴーレムの足元に滑り込み、短剣で膝裏の装甲の隙間を的確に攻撃する!
「ギャリリリ!」
ゴーレムの動きが一瞬止まる!
「今だ!」
俺はその隙を見逃さず、ウォーハンマーを全力でゴーレムの首の付け根めがけて叩き込んだ!
さらに、首の付け根の上方にピッケルを複数ペーストする!
生成されたピッケルが重力に引かれ、同じ箇所へ次々と落下した!
ゴシャアアアン!!
これまでとは違う、鈍い破壊音!
ゴーレムの首の付け根から火花が散り、その巨体が大きく傾いだ!
「まだだ!」
俺はショートソードに持ち替え、先ほどリーナが傷つけた膝裏の関節に、渾身の力で突き刺した!
「グギギギギ……」
ゴーレムは奇妙な断末魔のような音を立て、ついに動きを完全に停止した。
「はぁ……はぁ……やったか……」
俺もリーナも、肩で大きく息をつく。
一体だけだったが、前回戦った三体の警備ゴーレムよりも遥かに手強い相手だった。
新型ゴーレムの動作パターンは、相手が変われば使い道も限られる。
《[新型警備ゴーレムの動作パターン(断片)]を削除しました。クリップボード容量:9 / 10》
ゴーレムが沈黙すると、それまで低い唸りを上げていた巨大な機械の音が、ふっと静かになった。
いや、完全に止まったわけではない。
より安定した、静かな駆動音に変わったようだ。
そして、機械の中央部分――前回青い結晶体が現れた場所が、再びゆっくりと開き始めた。
そのさらに奥から現れたのは、以前よりもさらに大きく、比較にならないほど美しい輝きを放つ、完璧な球体状の巨大な魔石だった。
まるで、小さな太陽のように青白い光を放っている。
「なんだ……これ……」
俺もリーナも、その圧倒的な存在感に言葉を失う。
これが、この古代機械の心臓部なのかもしれない。
そして、それは同時に、とてつもない価値を持つ「お宝」であることも間違いなさそうだった。
大空洞の内部についても、持ってきた地図に簡単に追記しておく。
俺とリーナは顔を見合わせる。MPも体力も限界に近い。
「……ソウマ、今回はここまでにしましょ。このお宝は、あたしたち二人だけじゃ抱えきれないわ」
リーナが冷静に言った。
「ああ、そうだな。一度ギルドに戻って、このことを報告しよう。それに、ルナにも見せないと」
俺は頷いた。
「ただ、サンプルくらいは持ち帰ろう」
近づいて確認すると、巨大魔石の表面から小さく剥離したらしい欠片がいくつか落ちていた。
本体には手を触れず、そのうち一つだけを慎重に拾い、布へ包む。
倒した新型ゴーレムからも、戦闘で外れた金属部品をいくつか回収した。
「これだけあれば、ギルドやルナに見せるには十分でしょ」
「ああ」
俺は最後に、巨大な球体魔石をもう一度目に焼き付けた。




