蔵の答え合わせと神気入りドクダミ茶
「じゃあ、俺の気持ちはどうなるんだよ? 俺は、初音に置いて行かれるのは絶対に嫌だ。光とお腹の子と、四人で暮らしたいんだ」
たまらず本音をぶつけると、初音は少しだけ泣きそうな顔をして俯いた。
「……私も……実は、帰って来る時、すれ違った青児さんからあることをお聞きして……決心が鈍ってしまったんです。」
「……何を雨宮から聞いたんだ?」
俺の胸が、期待で大きく高鳴った。
「私が小学生の頃、蔵で襲われそうになった時、助けてくれた男の子がいて……。その人を探してるって以前、青児さんに言った事があるんです。それで今日、彼が『その男の子は御影さんだった』って言うんです。————本当ですか?」
「さ、さあ? あんま覚えてないけど……ひょっとして、三つあるうちの真ん中の蔵の話?」
本当はバッチリ覚えているが、ここは『そう大したことじゃない風』を装って……だ。
「そう! そこで、名前も告げずに立ち去った!」
初音が身を乗り出してきた。
よし、ここであの『去り際のセリフ』を言ってやろう。
「あー……思い出した。いやあ、別に初音を助けたかったわけじゃなくて、あの男の弱みを握っとけば、屋敷では色々有利だったし……」
「やっぱり! 御影様だったのですね!!」
初音は満面の笑みで、俺にギュッと抱きついてきた。
「…………っ」
俺は言葉を失い、顔を真っ赤にして照れることしかできなかった。
(雨宮青児! お前を信じて本当に良かった! これで壁の件は完全に帳消しだ!!)
*****
――ここでやめとけば良かったんだ。
そうすれば、この温かく幸せな気分のまま、気持ちよく眠れたのに。
その後、俺は光の頭をなでながら、ハザマが息子に何をしているかを読み取った。その瞬間。俺の頭の中に怒涛のごとく『とんでもない情報』が流れ込んできたのだ。
俺は迂闊にも、ハザマと色んな問題を乗り越えて徐々に仲良くなったと思い込んでいたが、とんだ見当違いだった。
ハザマが光を巧みに懐かせ、意のままに操っていた。
さらにハザマの入れ知恵で、光が庭のミントとドクダミに『神気』を浴びせ、異常な大増殖をさせていたこと。
ミントやドクダミの成長具合を見るために、俺の部屋を訪れていたこと。
あいつは、その大増殖したミントで蚊除けスプレーや入浴剤を作り、無農薬のドクダミ茶を『【室生家】生き神の神気入り』と謳って、屋敷内で販売しようとしていたのだ。
雨宮の言った言葉を思い出す。
————「月島の家系を甘く見てはいけませんよ?」————
月島の血筋、恐るべし。
藤城との同人誌の作成といい、商魂逞しすぎだろアイツ…………。




