7 ケンタと猫じゃらし
ホームセンターでは、思いの外時間がかかった。
チャイムはすぐ決まった。人が来たのがわかれば、高性能でなくていいんだ。だから、電池式の外でしかで音がならないものだ。音さえ出ればいいんだ。ボリュームを最大にすれば、何とかなるだろう。
決まらなかったのは、長靴だ。いっぱいあるんだよ。ファッション性のあるのから地下足袋風まで、どれにしたらいいか迷う前にくじけた。定員さんにアドバイスを貰い、いくつかチョイスしてもらった。その中から、履き心地が良いものを選んだ。でも、除外した中に俺に訴えてた長靴があったんだよ。どうしても、それが欲しくなって、普通の雨用に買ってしまった。
ケンタに聞いたんだよ。
「これって、履かないかなあ。どうしよう。」
ってね。ケンタは、興味なさそうに、ペット用のカートに乗って丸まってて我関せずだった。『ワン』ぐらい言ってくれてもいいと思うんだが。
チャイムと長靴を買えたし、車にケンタを乗せようとした時だ。彼奴が脱走したんだ。ヤバい。と思ったね。油断してリードを離していたんだよ。いくら、ケンタがおとなしいとはいえ、見た目は立派な成犬だ。リードなしでかけている姿を見たら、怖がる人は多いだろう。もちろん、追いかけた。
ケンタの脱走先は、ペットショップだった。通路に尻尾をフリフリ座っていた。ホッとしたが、腹が立ってきた。俺が近づいても逃げないで、一点を見つめている。
「ありがとうございました。」
ケンタが、見つめていたのは、犬用のカリカリだった。そういえば、残りが少なかったような気がする。立ってた腹はへっこんだ。代わりに、ケンタを撫でていた。
「ケンタ、ごめんな。カリカリが少ないのに気が付かなかった。でも、勝手に脱走したら駄目だぞ。」
「ワン。」
ケンタは、嬉しそうだ。
ついでに、ペットショップを一回りして、ケンタ用のブラシや室内で遊べるおもちゃを物色した。
ケンタが、期待した目で俺を見つめてくる。
「家に帰ってからな。」
「ワン。」
帰ったらケンタと遊ぶ時間をとるため、買弁をした。単なる横着だ。そこの食料品店でさらに買い物をしてしまった。主に冷凍品だ。スパゲッティ、焼きおにぎり、グラタン。アイスも手に取った。一時間持つだろうかと悩んでいたら、保冷バッグを発見。かごに入れる。保冷バッグに入るだけ冷凍品を買ってしまった。支払いは、クレカだ。
次から、買い物には気を付けよう。実家にいた時は、そんなこと1ミリも思わなかったのに。
主婦の苦労が、少しだけ分かった・・気がした。
もう寄り道はしないと決めて、家に走る。もちろんジープだ。当たり前だよね。
そしたら。俺と隣人しか使わない道を、向こうから宅配業者の看板を背負った車が走って来る。俺は、すれ違えるようにちょっと道幅が広いとこで一時停止してやり過ごそうとした。
宅配業者の車は、俺の隣で止まった。
「日吉勘太さんですか?」
「はい。」
「よかった~。お荷物です。ここでお渡しして良いですか?」
俺は、助かるが、誰からだ。差出人は兄貴だった。
「一応、本人かどうかの確認をしたいのですが…。」
「免許証で良いかな。」
「はい。助かります。」
助かるのは、俺の方だ。日本て便利だね。荷物を受け取って無事帰宅。
買弁を食べ終わったら、ケンタがオモチャを咥えてやってきた。
ここからは、ケンタとお遊びの時間だ。ボールを投げたり、ロープで綱引きしたり、俺も楽しく過ごした。
買ったオモチャの中に猫じゃらしが入っていた。こんなの買ったか?窓にペッタンと張り付けるやつだ。一応、吸盤をハーして窓にくっつけといた。せっかく買ったんだからな。
後は、風呂に入って就寝だ。こっちに来たから、規則正しい生活になった。
良いことだ。
チリン、チリンと音がした。
猫じゃらしの鈴みたいだ。
「犬も猫じゃらしで遊ぶんだな。」
そう思ったのを覚えている。
でも、その時ケンタは俺の側にいた気がする。俺が寝ぼけてたんだな。
読んでくれて、ありがとうございました。




