43 偶然の再会
勘太は、目を覚ました。ケン太が横で寝ている。ブラウニーも勘太のそばにいた。
「俺は、逃げてしまったんだな。こんなに弱虫だったなんて知らなかった。」
「ワンワンワン。」
ケン太が、慰めてくれる。
「ケン太、今、俺の考えてることが正解なのか?」
「ワン。ワン。」
「俺は、もう一度あそこに行く勇気はないんだ。しばらく考えさせてくれ。」
「ワン。」
珈琲を飲もうとしてやめた。
「ケン太、町に行くぞ。」
ケン太は、ついてこない。俺は、ケン太に再度促すことをしない。ジープのエンジンをかける。玄関を閉め忘れたようだ。ケン太とブラウニーが並んで俺を見送っている。俺はケン太を呼ばない。ケン太もジープに乗ろうとしない。ブラウニーは心配そうに俺とケン太を交互に見ている。
シャッターを閉めて、ジープを走らせる。町に近づいて、建物を見たら、ホッとした。
ファーストフード店のドライブスルーでハンバーガーのセットを頼む。飲み物はコーラにした。それから、ナビも使わず、大きい道をひたすら走る。コンビニがあったので、コーヒーを買った。さらに走る。
結構大きい街に着いた。モールがあったので、車を止めてぶらぶらする。久しぶりの若いもんの行動をしてみた。
「勘太さん?」
迷いながらの呼びかけに振り向けば、末っ子だ。
「お前、どうしてここに居るんだよ。引っ越しはどうした。」
「勘太さんこそ、なんでいるのよ。」
そう言われて、
「ここどこだ?」
「何言ってんの。県庁所在地。私が今住んでるところ。車で家から三時間はかかるよ。」
俺は、大分遠くに逃げたようだ。
「どうしたの?大丈夫?」
「ああ…。」
「もしかして、新事実発見?そんでもって、考え過ぎて落ち込んで、禿の進行を進めてる?」
「新事実?そういやあ、何にもないなあ。」
あったのは、伊勢家の墓と台座の文字だけだ。
「あー、勝手に想像しちゃった。」
「そうかもな。」
「勘太さんてさあ。想像力ないのに、妄想はするよね。」
「どういう意味だ。アホってことか。」
「そうとも言うかも。だって、新発見しても生活は変わらないでしょ。今までだってそうだったでしょ。神様の子孫、上等よ。」
「そうか。俺はアホだったんだな。」
「それより、せっかくだからお夕飯奢ってよ。ちょっと高級なお店でね。美味しい食事すれば気も晴れるよ。」
「お前が食べたいだけだろう。」
「そうとも言う。」
俺は、末っ子にちょっとお高いお店に連れていかれ、奢らされた。でも、確かに少し気が晴れた。料理も美味しかったしな。
「ふう、お腹いっぱい。御馳走様でした。」
「どういたしまして。アパートまで送るぞ。」
「大丈夫。それより、少しは気が晴れた?」
「ああ。お前のおかげだな。ありがとう。」
「どういたしまして。これから帰るんでしょう。あんまり、ケン太とブラウニーに心配かけたらだめだよ。」
「ああ、反省してる。でも、俺は禿ではないぞ。」
「今はね。じゃあ、気を付けて。」
末っ子は手をヒラヒラさせて、俺を見送ってくれた。
俺は、どうにかその日のうちに家に着いた。
ケン太とブラウニーが出迎えてくれた。
「ケン太、ブラウニー。心配かけたな。」
「ワン。」
「パタパタ。」
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