42 洞窟の姿
「ケン太、ここは……。」
「ワン。」
暗いはずの空間が青?緑?とにかく光っている。暗い世界のはずなのに不思議な空間だ。よく見ると、光っているのはかべではない。
「ケン太、これがヒカリ苔っていうのか?本当に光るんだな。初めて見た。」
「ワンワン。」
幻想的だ。
俺がその美しさに見とれていると、
「ワンワン。」
ケン太はおいしそうに水をのんでいた。ケン太の水をたどれば、ヒカリ苔だ。どこからの水かわからないが、苔を伝って一か所に集まっている。丁度、神社にお参りする時の、手水舎のようになっている。手水舎からあふれた水が隅の床に再度たまっている。その水は、どこに?空間の床はぬれていない。
俺も、手水舎で手を洗い口を清めた。何となく空気が澄んでいて、そうしなさい、って言われているみたいなんだ。ケン太なんて、足も水に入っている。
お清めを済ませてら、さらに奥に部屋があるのが分かった。そこも、ヘッドライトは必要なさそうだ。手水舎の空間は、そんなに広くない。
奥の部屋は、広かった。その壁を利用して、お地蔵様なのか、人型の形が彫ってある。お社の女神像みたいだった。そんなお地蔵様が、壁一面に何体も彫られていた。顔は一体一体違う。
ここでも、俺はケンタに促されて足を踏み入れる。灯かりは、ヒカリ苔だ。苔は、各お地蔵様の頭の上にあって、光っている。まるで王冠のようだ。
入り口のそばにお地蔵様のないくぼみが二か所ある。近づいて確認する。
台座に
120代 誡
121代 海人
とあった。
「ここが……。ここが、二人の…。二人の望んだ場所なんだな。」
「ワン。」
ここが、伊勢家の霊廟だ。勘太は、改めて洞窟の全てを見渡した。
そして、一礼する。
勘太は、ゆっくりゆっくりと足を進める。
119代 快 118代 櫂 116代 凱人
となっている。127代が抜けている。他にも抜けている数字があった。
どうしてだろう?そんな思いで足を進めると、ひときわ大きなお地蔵様がある。台座には、【初代 異世 界人】とある。そして、お地蔵様の隣には、ケン太と似た姿が彫られていた。
俺は、あまりの情報に考えるのを放棄した。初代の台座に湧水とお花と果物をおいて、逃げ出した。
手水舎の間を抜け、暗い洞窟も駆け抜けた。
どう帰ってきたのかわからない。どうして、逃げ出したのかもわからなかった。せっかく見つけた伊勢家の墓標なのに……。
家に帰って、水を飲む。湧水でなく、水道水だ。さらに、蛇口に頭を突っ込み水道水を浴びる。やっと、我に返った。
「ケン太。ケン太はどこだ。」
「ワンワン。」
勘太は、ケン太を抱き寄せ、思考を停止する。
静かに寝息を立てる勘太のそばで、ケン太とブラウニーが見守る。
「ワンワン。」
「パタパタ。」
読んでいただいて、ありがとうございます。
今回を含めて、後5回で完結になります。最後までよろしくお願いいたします。




