40 末っ子の明るさ
お社に行ってから勘太は、何も手がつかず家にこもっていた。
ケン太は外で自由に駆け回っている。
ブラウニーは、相変わらずお掃除ロボに乗っている。ブラウニーは、ただ乗っているのではなく、ロボにゴミのあるところを教えているようだ。
勘太は、そんな日常を違和感なく受け入れていることに疑問を持った。神様との会話だって、本当はずっとここは伊勢家に連なる人に守ってもらいたいのでは?とか。勘太は、今はここに住むことを決めているが、将来はわからない。自分の後のこととか、いろいろ考えてしまった。
「神様も言っていたけど、深く考えるなって、よく考えて欲しいってことじゃあないのか。」
「ワンワンワン。」
勘太は、深みにはまっていた。
ピンポーン。
門からだ。誰だろう。彼奴じゃあないよな。ケン太が、嬉しそうに門に走っていくから違うようだ。いたのは、車に乗った末っ子だ。それも運転している。
「勘太さ~ん。ヤッホー。」
「免許持ってたか?」
「やっと来たのよ。だからご挨拶に来たの。」
「ご挨拶?」
「そう、大学だから一人暮らしをするの。明日、引っ越しよ。」
「叔父さん宅も静かになるな。」
「もう~、憎まれ口はいいの。ネエ、ブラウニーは、元気?」
「会っていくか。」
「うん。お邪魔しま~す。」
末っ子は、家の中をキョロキョロ眺めている。
「勘太さん。ブラウニーは、どこ?」
「ほら、そこにいるぞ。ロボの上。」
「エー、どこよ。みえな~い。」
「なら、ブラウニーは会いたくないとよ。」
「そんなことないもん。」
ブツブツ文句を言う末っ子に、とびきりの珈琲を入れてやる。縁側の座椅子に座り、庭を、山を見ながら湧水珈琲を末っ子と飲む。
「おいしい~。」
「そうだろう。」
「ネエ、先生の話は、本当だったの。おやじの奴教えてくれないのよ。」
「本当のこともあれば、造り話もあるんだろうな。」
「本当のことって?造り話はどこ?」
「お前は、どうなんだよ。」
「どうって。」
「先生の話が真実なら、魑魅魍魎は実在して、俺たちは神の子孫で、地球とは違う世界があるんだぞ。」
「すごいよね。」
「それだけか。」
末っ子は、持論を主張する。
もし、神の子孫なら、血族はすごいけど、それは平凡な自分の人生には関係のないこと。有ったら、天才とか何かに秀でているはずだ。イエス・キリストやお釈迦様の子孫だってどこかにいるかもしれないし、遠い昔の一族の過去にこだわっても仕方がないでしょ。過去より未来を見ないと。
「その割に、先生の話に興味を持ってるよな。」
「だって、私のルーツだよ。有名な独裁者の子孫って言われたら、知らない方がいいけどさ。神様だよ。神様頼りの時、拝む力もリキが入るってもんよ。」
「お前なあ。」
「勘太さんは、考え過ぎなのよ。もし、異世界とか本当だったら、その時考えればいいのよ。」
「そん時が来たらどうするんだよ。」
「う~ん。悩むね。でも、悩むのも楽しいかもよ。」
「お前って、楽天的だよな。」
「私ぐらいがちょうどいいのよ。考えすぎると禿るよ。」
「日吉家には禿はいない。」
「初代禿だね。アハハ」
末っ子と話していると真剣に物事を考えるのが馬鹿馬鹿しくなる。でも、神様や海人さん、ばあちゃんの言っていることは、こういうことなんだと理解できた。末っ子と笑いながら珈琲を楽しんだ。
末っ子の大学入学と免許取得のお祝いに、倉庫の物を奮発した。
「これ、私が貰ったんだよね。明日の引っ越しに持っていくんだ。誰にも上げない。ひとりじめー。」
仕方ないから、叔父さん宅にもお土産を持たせた。
「初心者なんだから、運転、気をつけろよ。」
「わかってる。ブラウニーによろしくね。ケン太、私を忘れないでね。」
「ワンワン。」
『パタパタ。』
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