4 修羅場な俺
弁護士さんを見送った伯父さん達は、なぜか俺の前で正座している。いとこ達もだ。おふくろや兄貴までいる。何事かと思い気を落ち着かせようと、ケンタを撫でようとしたら、ケンタまで伯父さん達と一緒に座っている。
「勘太。よろしく頼む。」
何を?これから相談するんだろう。おふくろが、兄貴が、いとこ達が、ケンタが、
「勘太。大変だろうけど、お前しかいない。」
「勘太。お前ならできる。ケンタもいるし、大丈夫だ。」
「「「「よろしくお願いします。」」」」
ケンタまで
「ワン、ワン。」
エー、俺がじいちゃんちに住むんかい?みんな正気か?
「勘太。この中で、ここに住めるのは、あんただけなの。みんな仕事や子育てがあるのよ。それに、ケンタは可愛いでしょ。誰よりも、あんたに懐いているのよ。」
「勘太。兄として頭を下げる。うん、と言ってくれ。」
「ワン、ワン。」
ここで、ケンタを筆頭に頭を下げられる。その光景は、気持ち良かった。親戚一同に土下座とはちょっと違うけど、なんだか殿様になった気分だった。思わず、承諾しそうになる。でも、寸でのところで踏みとどまった。
とどめはおやじだ。ちょっと笑いながら、
「勘太。仕事だと思え。一年で一千万円の収入が得られるんだ。さらに、この家に付随する物は勘太の物になる。軽トラの奥の車を知ってるか?おまえの好きなジープだぞ。何より、ケンタを見ろ。断れるか?」
ケンタを、見てしまった。もう、観念するしかない。
「わかりました。」
やけくそだー。こうなったら、ケンタと一緒にあちこちジープで行ってやる。
ケンタに飛びつかれ、顔を嘗めまわされた。
親戚一同、大喜びだ。話は、とんとん拍子に進み、じいちゃんの49日に各々書類を持ち寄ることになった。最後は、伯父さんが、
「では、父さんの葬儀も相続も揉めることなく終わった事を祝して、一本締めでしめくくるぞ。いよー。」
「「「「「 パン 」」」」」 「 ワン 」
なんで、一本締め?お祝いじゃあないだろう。俺もしたけどさあ。
伯父さん達は、にこやかに帰って行った。
「弁護士さんに聞いて、必要書類の連絡するからな。当日は、忘れんなよ。同席できない者は、直接弁護士さんに聞いて対処しろよー。」
「私たちも、帰る準備しましょうかね。」
「エッ、母さんは、49日までいるって……。」
「だって、相続問題も片付いたし、いる意味ないでしょ。それに、あんた、印鑑証明取れるの?」
「実印さえ持ってない。」
「そうでしょ。だから、住民票をこっちに移した方がいいわね。その手続きでしょ。それに、勘太の荷物もこっちに送るわね。やることは、いっぱいあるのよ。」
おふくろが、一人で張り切っている。これは、何を言ってもだめだ。聞いてくれない。
思い出した。こっそり兄貴にお願いした。
「場所は、ベッドの下の収納ボックスだな。全部、こっちに送れば良いな。」
「お願いします。」
何を?そんなことは、声を大にして言えない。察してくれ。
翌日、両親と兄貴は、車で帰って行った。こっちに来る時、おやじと兄貴は、時間を合わせて、同じ飛行機に乗ってきた。それで、空港の近くでレンタカーを借りていた。だから、それに乗ってお帰りだ。
サッサと乗り込み、帰って行った。俺は……。この年で、家族の後ろ姿を寂しいと見送るとは思わなかった。
ケンタが、俺の手をぺろりと舐めた。
ボーとしていても、仕方ない。俺は、今やれることをしよう。まず、おやじの言っていたジープだ。軽トラをどけて、ジープを表に出す。早速、エンジンをかけてみる。かかった。良かった。ちょっぴり、不安だったんだ。側は少し埃があったが、車内はきれいだ。このまま試運転をすることにした。ケンタを乗せてシートベルトをさせて・・・。どこ行こう?
取り合えず、買い物の場所の確認だ。ついでに、光熱費の名義を変えよう。スマホでもできるが、場所の把握をしておこう。車を動かし始めたら、思い出した。
家の戸締りだ。
俺は、車は好きでも嫌いでもないが、ジープだけには、興味があった。ジープは良いよね。海だって、山だって走れるんだ。みんな、乗り心地が悪いと言うけど、俺は、このガタガタが気に入っている。
軽快にジープを走らせ、ミッション完了だ。ついでに、一番近い伯父さんちも確認しておいた。
時々、ケンタに話しかけたりして、ドライブを満喫した。
「ケンタ、ジープはいいだろ?」
「ワン。」




