38 山が好き
静かに、山のどこかにあるであろう伊勢家の墓標に向かって、手を合わせていた。
長男の伯父さんは、思うところがあるのか。
「勘太。お前には俺が担うはずの役目を押し付けてしまったようだ。申し訳ない。」
頭を下げられた。
「兄さん、そういうとこよ。今は、長男も次男も男も女も関係ないわ。海人おじいちゃんだって、山が好きだから頑張って主張して、そこを受け継いでいたら違ってたかもよ。」
「そうです。俺は、今、山が好きなんです。いとこの誰よりも山が好きだと断言できます。」
「だけどさあ、何一つ、疑問はわかっていないよな。母さんや爺さんの手紙には感動したけどさ。」
「叔父さん、お墓を探すことに専念しますね。誡さんと海人さんは伊勢家の墓に納めてやりたいと思います。」
「そうだな。」
「よろしく頼むな。」
叔父さんは、スッキリした様子で、
「やっぱり帰るわ。何かな、力が抜けたっていうか、おふくろもおやじも勝手に自己完結してるんだよな。死んだら何もできないけどさ、全くの丸投げだぞ。いい加減にしろって言いたいわ。」
「お前は、家の重荷がわからんのか?」
「わからんわ。海人爺さんもおふくろも、自由に生きろっていってるんだぞ。
勘太だって、自由にして良いんだぞ。」
「確かに、その通りだ。」
「俺は、自由にしてます。でも、なんかあったら頼りにしてます。」
「ワンワン。」
伯父さん達は帰って行った。
あんなに、深刻だったのに、叔父さんの言葉で軽くなった。
「ケン太、そうだよな。ここが結界の狭間だったとしても、山が世界を守っているなんておこがましいよな。」
「ワン。」
「それに、伊勢のお坊さんも神の一柱のみの支えではなく、そこに生きる人が守るべきだって言ってるしな。」
「ワン。」
「いろいろ考えすぎないで、伊勢家の歴史と思えばいいんだ。」
「ワンワン。」
「ブラウニーもそれでいいか。」
「パタパタ。」
叔父さんじゃあないけど、力が良い具合に抜けたようだ。流石、末っ子の親だ。
「もしもし、母さん。」
「私は大丈夫よ。勘太こそ大丈夫?」
俺は、叔父さんのことを話した。
「彼奴らしいわね。でも、その通りね。勘太もそこに飽きたらケン太といつでも家に帰ってきなさい。やせ我慢はしないのよ。」
いつでも帰っていいんだ。そう思うと肩が軽くなる。
「ケン太、今はここが気に入ってるし、末っ子じゃあないけど、ミステリーも気になる。付き合ってくれよ。ブラウニーもな。」
「ワンワン。」
「パタパタ。」
さて、明日は山の探検だな。
「ばあちゃんはじいちゃんと縁側で誡さんと海人さんは、二階からいつも見守ってくれてるから、頑張ろうな。」
「ワンワン。」
「ブラウニー、家は頼むぞ。」
「パタパタ。」
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