36 七海の手紙
ケンタの名前をケン太に変更しました。よろしくお願いします。
二人の遺骨の前に、誰も何も言わない。おふくろなんて電話の向こうで泣いている。
「ワンワン。」
ケン太が止まった時間を動かす。
「爺さんとひい爺さんには悪いが、確かめさせてもらおう。」
「そうだな。手がかりがあるかもしれんしな。」
「母さん。父さんは側にいるの。」
「いないわ。でも、大丈夫よ。兄さん、よろしく。」
手を合わせてから、中を確認させてもらう。
一つ目は、海人さんだった。ばあちゃんと同じで、埋葬許可証が入っていた。ただ、死亡診断書は無かった。代わりに手紙があった。宛名は、
『三人の子供達へ』
ばあちゃんの手紙だ。
「勘太。悪いが、読んでもらえるか。この手紙は、三人同時に聞きたい。」
伯父さんの気持ちはわかる。誰か一人が先に、ではなく、同じ思いをした子供達が同じ時刻に同じ状況で聞きたいんだ。
俺は、伯父さんから手紙を預かる。
『三人の子供達へ』
許してほしいとは言わないわ。貴方達を、立派に育ててくれたお父さんに感謝しています。でも、、全てをお父さんと貴方達に背をわせてしまったことを、謝らせてください。
この手紙は、お父さんにも内緒で父の海人と共に寝かせました。
父は、私の人生は自分の為に生きろ、と言いました。その言葉に甘えて、結婚して、子供達に恵まれました。それでも、父は孫に会おうとはしませんでした。一言、
「お前にも孫達にも自由に生きて欲しい。」
と言うだけでした。私には、そこまで言う父が理解できませんでした。ですが、父の介護をしていくうちに理解できるようになりました。そこからです。夫は、そんな私を理解できなかったようです。当たり前だと思います。これは伊勢家で育った者だけにわかるものでしょうから。
私は、父の死をきっかけに伊勢を継ぎました。夫には離婚を望みましたが、拒否し続けられました。けれど、私の命が長くないと分かった時、子供達に伊勢家を背負わせることができませんでした。そこで、夫に慰謝料としてすべてを預けることにしました。夫に後始末をお願いしたのです。
ただ、父は次男でしたので、家の言い伝え等を全て知っているわけではありませんでした。その為、苦労をしたようです。お墓の場所もわからず、父を弔うこともできませんでした。私も、伊勢家と共に父と祖父を弔うことができませんでした。夫なら、家のしがらみなしに私たちを葬ってくれると期待しました。
何を書いても、言い訳にしかなりません。もし、この手紙を読んでいるのが、私の子供なら、信じてください。
「貴方達を、愛してます。」
伊勢 七海
「母さん。」
「お…かあ…さん。」
「かあさん。」
俺は、手紙を置いて下に降りた。泣きながらお茶を用意した。湧水で入れたお茶が、みんなを落ち着かせてくれるだろう。
まだ、誡さんが残ってるんだ。
「ケン太、みんなは大丈夫かなあ。」
「ワン。」
読んでいただいて、ありがとうございます。




