34 時は来た。勘太の覚悟
【時は来た。】
確かに、勘太は聞いた。誰の声かはわからない。
【時が来たら開く。】
先生の話と合う。この鍵のことだ。ケン太の鍵か?俺の鍵か?両方か?いくら考えてもわからない。鍵を持って山を廻ろうか。イヤ、これまでも、気負いなくケン太と山を楽しんでいたんだ。これからだって、それでいい。そうしていると、きっとご先祖様か誰かが導いてくれる。そう思う。
しかし、家に帰ってきても、悶々としている。
「ケン太、先生の話が本当なら、俺は結界の神様の子孫になる。そして、見えざる地って異世界か?魑魅魍魎はどこから来たんだ。ここは結界の狭間?どこにつながるんだ?」
「ワンワン。」
「ケン太と話せればいいのにな。そしたら、いっぱい話せるのにな。」
「ワンワン。」
「俺は、異世界とか神の子孫とかブラウニーとか信じていない。ブラウニーよりよっぽど幽霊の方がなじみがあるんだ。異世界や妖精は小説の世界だ。」
「ワンワンワン。」
「でもな。異世界があるとして、ブラウニーがいるとするだろう。神様もいたとするだろう。そう考えれば、今までの不思議は辻褄があう気がするんだ。」
「ワン。」
ケン太も肯定する異世界やブラウニー。ご先祖様の幽霊はブラウニー。ブラウニーは綺麗好きな家に着く妖精だよな。思い切って、
「ブラウニー、姿を見せてくれ。」
・・・・・
「ワンワン。」
ケン太に後押しされるようにポワ~ンと徐々にブラウニーが姿を現す。その姿は、可愛らしく羽を動かしている。そして、俺に挨拶する姿は、小さなお姫様のようだった。俺は、声も出せずに、お姫様を見つめるだけだった。
本当は、ブラウニーが現れず、異世界を否定して欲しかったんだ。心のどこかで非現実を現実として認めたくなかったんだ。でも、ブラウニーも俺の呼びかけに答えたくれた。そろそろ非現実を認めなくてはならないようだ。むしろ、遅すぎたかもだ。
「こんばんは。俺は勘太だ。君がいつも家をきれいにしていてくれたんだね。ありがとう。」
ブラウニーは、俺の言うことはわかるようだが、俺はブラウニーの言うことが理解できない。
「ごめんな。俺は、ケン太や君の言葉がわからないんだ。」
ブラウニーは、必死に羽を動かしている。何か言いたそうだ。ブラウニーは、伝えるのをあきらめたようだ。だが、今度は、しきりに俺をどこかに連れて行こうとする。俺が立ち上がると、嬉しそうに俺をいざなう。ケンタも黙ってついてくる。
ブラウニーは、二階の俺たちの寝室へ向かう。何があるんだ?
ブラウニーは、庭と山が見渡せる四隅の一角でに着くと、そこから動かない。ケン太まで。
「ワン。」
一鳴きして、ジッとしている。
そこは階段から遠いこともあって、ここに来るのはお掃除ロボだけだ。ばあちゃんの押入のこともあったのに、確認してなかったんだ。つくづくアホな俺だ。覚悟して物入れになっている中を確認する。何もない。
「何にもないぞ。」
それでも、ブラウニーは、ここを開けてと言っているようだ。もう一度、丁寧に確認する。
「まさか…。」
空の物入れの上に、取っ手の無い物入れがあった。観音開きでもなく、押しても開かない。二枚戸のようだが、上下のレールは一本のみ。すると、ケンタが奥の戸を押して開けた。どうやら。雨戸のような開け方をするらしい。俺は、ケン太より物を知らないらしい。落ち込んんでいると、さらに落ち込むことになった。
二枚戸を開けたらレースのカーテンがかかっていた。普通は、外に面して掛けるカーテンが部屋に向かったかかっているんだ。何でだろう?
カーテンを開けたら………。
とんでもない物が二つ、山を見守るように、置かれていた。
「ケ、ケン太…。」
「ワン。」
ブラウニーは、静かに俺たちを見守っていた。
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