31 卒業式の見送り
今日は、めでたい末っ子の卒業式だ。
この前、末っ子が教えてくれたんだ。
「先生がね。私だけよって教えてくれたの。先生は、学校をやめるんだって。」
「そうなのか。」
「うん。ここに来た目的は達成されたから、ここに居る必要がないんです。むしろ、いない方が良いんです。って言うの。」
「そうか。」
「勘太さん。何か知っているんでしょ。教えてよ。」
「悪いが、まだ教えられない。」
「やっぱり、知ってるんだ。でも、いつか教えてくれるんでしょ。」
「いつかな。」
どうしようか迷っていた。まだ間に合う。
「ケン太、どうしよう。先生は重荷がなくなっただけでも、良いんだろうと思う。けど、このまま、ここを山を恐れて、嫌いのままでいて欲しくないんだ。どうしたら良い?」
「ワン。」
ケン太は、一声泣いて、山に入って行った。俺はケンタの後を追う。ケン太はお花畑にいた。
「ワンワン。」
ある花の前にいる。
ケン太は、その花を球根ごと掘り出していた。俺は球根付きの花をいただき
「この花を、佳さんのひ孫さんへ贈ります。ありがとうございます。」
お礼を言ってジープにに乗って急ぐ。
高校はすぐにわかったが、先生はまだいるだろうか。生徒はまばらだ。車を降りた時、先生が出てきた。周りに数人の生徒がいる。末っ子もいる。俺を見ても驚かない。先生に、「・・・」先生は、俺を見て、
「勘太さん。」
「今日、行かれると聞きました。」
「はい。お世話になりました。」
「これを…。」
「これは?」
「山の花です。ケン太が掘り出していました。」
「でも…。」
「俺は、あなたに山を好きになって欲しいとは言いません。でも、嫌いでいて欲しくないんです。」
「私はいただく権利がありません。」
「俺は山にあなたに渡すと言いました。山は許可してくれました。枯らしてもいいんです。持って帰って、あなたの家族に見てもらうことが大事なんです。」
「でも…。」
「先生。お花一つに、何うじうじしているんですか。ただの白いヒアシンスですよ。」
「先生。知ってます。白いヒアシンスって純粋とか控えめな愛ですって。」
「先生。いつの間に…。まって、あなたを許します、ってのもあるって。」
「勘太さ~ん。先生を許すことってあるの~。」
「「エッ。」」
先生も俺も知らなかった。でも、先生は生徒達の後押しで、球根付きの白いヒアシンスを受け取ってくれた。
「ありがとうございます。上手く行くかわかりませんが、大事に育てます。」
「ええ、願わくば、また山に来てください。違う、山を見に来てください。」
「はい。まだ無理ですが、勇気が出たら伺います。」
「待っています。」
「ありがとう。」
俺は末っ子達と先生を見送った。もう会うことは無いかもしれない。けど、山の花を渡せたことにホッとしていた。
「勘太さ~ん、どんな事情かな?」
「お前、知らなっかったのか。先生は伊勢家の分家の子孫だぞ。」
「エーーーーーー。」
「じゃあな。」
「ワンワン。」
俺は、ケン太とさっさと帰ってきた。
「伯父さん達に話さないとな。」
「ワン。」
「あっ、末っ子に卒業おめでとうって言うの、忘れた。」
「ワン。」
読んでいただいて、ありがとうございます。




