28 姪っ子とブラウニー
もうすぐ大晦日だ。おふくろ達も兄貴一家も一緒に来るらしい。年越しの準備なんてやったことがない。大掃除は、お掃除ロボのおかげできれいだ。あの牡丹餅事件以降、もっと家の中がきれいになっている。律儀なご先祖様の幽霊だ。
だから、伯母さんに聞いたんだ。
「畑のお野菜と旬の果物を倉庫に入れておけばいいのよ。でも、お肉とお餅は買っておかないとよね。物さえあれば、お母さんがどうにかするわよ。」
今は、じいちゃんの喪中だから門松とかは要らないらしい。
「確か、小さいお子さんもいるのよね。それは、お兄さんに聞きなさい。」
だから、聞いた。
「空港から、レンタカーを各自借りて、買い物にしてそっちに行くから気にしなくて大丈夫。ただ、美味しい野菜や果物はお願いね。」
甥っ子や姪っ子に美味しい物を食べてもらいたいから張り切ったね。ついでに、叔父さん達にも持っていったら喜んでくれた。
「あなたからもらったお蜜柑が美味しくって、私と末っ子で全部食べちゃって、文句が出たのよ。こんなにたくさん嬉しいわ。」
「なくなったら、いつでも、言ってください。持ってきます。」
帰ろうとしたら、末っ子が帰ってきた。
「勘太さ~ん。もう帰るの。蜜柑すっごくおいしかったよ~。」
「叔母さんに、渡したぞ~。」
「やったー。ご馳走様。ネエネエ、ブラウニーは元気?」
「ブラウニーは知らないが、ご先祖様の幽霊が牡丹餅食べてたぞ。」
「勘太さん、冗談へたくそ~。キャハハハ。」
「アハハハ、じゃあな。」
冗談じゃあないんだけどな。末っ子は、ブラウニーは存在して、幽霊はいないのか。普通、逆だろう。
「なあ、ケンタ。」
「ワ~ン。」
牡丹餅事件から、ご先祖様用のお供えとは別にもう一つ用意している。ご先祖様の幽霊もわかってくれたようで、仏壇のお供えは手を出さなくなった。別に用意したのはぺろりとなくなっているけどな。最近は、俺やケンタが居ても食べている。姿は見えなくても、お供えがだんだんなくなっていくのがわかるんだよ。
別に怖いとも思わないし。
「ご先祖様だもんな。」
「・・・。」
おふくろ達の布団も大丈夫。寒いかなあ?俺は暖房をたいたことが無いんだ。一応、居間にエアコンがあるんだが、熱さも寒さもしのげるんだよ。この山の気候が安定してるのかな。でも、一応ストーブがあったから用意はしたよ。灯油もバッチリだ。灯油とか、今までおふくろ任せだったから、こんなに
雑用があるとは思わなかった。今は、夫婦で協力が当たり前だけど、ひと昔前の主婦に脱帽だね。
ケンタの年末年始の支度は、だた一つ、カリカリを絶やさないことだ。これもOKだ。
湧水も汲んどかないと、雪でも降ったら汲みにいけない。
「ケンタ、ここら辺、雪ってふるの?」
「ワ~ン。」
ケンタも知らないらしい。でも、
「もし、降ったら、遊ぼうな。」
「ワンワン。」
おふくろから、空港に着いたと、報告があった。なんだかソワソワする。今までもおふくろは何回か来ていたが、いつも事情があってだ。目的の無い来訪は始めてだ。それだけじゃあない。甥っ子と姪っ子が山を気に入ってくれるかが気にかかる。
ケンタにも、まだ小さい子が来るからと、毎日言い聞かせている。そのたびに
「ワン。」
目を輝かせている。ご先祖様にも、お願いした。
「小さい子を脅かさないようお願いします。」
大丈夫だよな。頼むぞ。
ケンタが、車の音に反応したのか、頭を門の方に向ける。
「ワンワン。」
「ケンタ、着いたのか。」
「ワン。」
着いたようだ。門まで迎えに行く。タイミングよく車が見えた。車を見ただけなのに、あったかくなった。これが、家族なんだ。教えられた。
車は、どこにおいても邪魔にならない。適当においてもらった。車から、甥っ子が飛び出してきた。五歳のわんぱくだ。
「勘おじちゃん、あそぼー。」
飛行機や車に押し込められて、遊びたかっただろうな。
「この犬、ケンタった言うんだ。いじめるなよ。」
「おっきい~。かまない?」
「わんわん。わんわん。」
可愛くわんわんを連呼しているのは、一歳になったばかりの姪っ子だ。お母さんに抱っこされている。
「お義姉さん、ご無沙汰してます。」
「こちらこそ。大勢で押しかけてきました。よろしくね。」
「寒いから、早く中に入りなさいな。」
おふくろが自分ちみたいに言う。良いんだけどさ。兄貴が
「母さん。ここは勘太の家だよ。お邪魔するぐらい言おうよ。」
「それもそうね。勘太、お邪魔するわ。みんなも早く入りましょう。」
取ってつけたようなセリフだった。
「まあ~。」
おふくろの叫び声だ。何が起こった?
「大丈夫か?」
「勘太、あなたって綺麗好きだったのね。」
確かに。きれいだわ。お掃除ロボがクルクル回ってアピールしている。
「お掃除ロボだよ。こいつ有能だよね。」
姪っ子が、ロボの後を追いかけている。とうとうハイハイして前に後ろに行ったり来たりだ。おそわりして、手をたたいている。何気に、ロボのお掃除時間が長いように思う。姪っ子は、滞在中ロボが遊び相手だった。なんせ、寝る時も、ロボがいると素直に布団に入り一人で寝ている。でも、ロボよりちょっと上の空中を見ているような気がする。もしかして、ご先祖様か?でも、
「こんなに手がかからなくなるなんて、家も買おうかしら。」
甥っ子は、果物を食べたら、ケンタにつきっきりだ。ケンタに乗ろうとしたり、尻尾をつかんだり、ろくなことしかしない。ケンタは上手くいなしている。この甥っ子もケンタに寄り添われ、朝から寝るまで一緒だった。
「こんなに手がかからなくなるなんて、家も飼おうかしら。」
俺は、母さんと姉さんの手料理を食べて、久しぶりにグータラな数日間を過ごした。でも、
「お義姉さん、すみません。手伝わせて。」
「いいのよ。子供たちは、広い家で時間も音も気にせずのびのび遊んでいるし。子供たちの面倒を見る手はいっぱいあるしね。何より、空気も美味しいし、野菜や果物だって、向こうでもいただいたけど、新鮮だからかしら、こっちでいただく方が美味しいわ。それに、水が美味しいの。ここは、何でもおいしくなるのね。」
兄貴一家にも、ここが気に入ってもらえたみたいだ。良かった。
伯父さんと叔父さんの一家とも宴会を開いた。それも大晦日にだ。
「喪中だからな。それに元旦は誰も来ないからな。」
料理は、持ち寄りと買ってきた総菜。俺は、いつものサラダとフルーツだ。それと場所の提供だ。テレビを見たい人の為に、テレビを押し入れから引っ張り出しておいた。
今夜は、シャッターは開けっ放しにした。途中でくるもの、帰る者が入り乱れているからね。彼奴は、さすがに今日は来ないだろう。来ても、これだけの人数だ。負ける気がしない。
ケンタが、じいちゃんとばあちゃんのひ孫たちを引き連れ、仏壇に案内している。おりんを咥えてチ~ンも披露している。歓声が上がるとケンタの背筋と頭が高くなった。
何気ない親戚の会話だ。じいちゃんとばあちゃんの文句が多いみたいだ。でも、みんな笑っている。
甥っ子姪っ子は、ケンタとロボと円陣を組んでお話ししている。
楽しい夜だった。
ただ一人、後から文句を言われた。
「なんで大晦日にやるのよ。友達と初詣の約束があったから、宴会に行けなかった。シクシク。」
お前は、お年玉が目的だろう。それに決めたのは、お前のおやじだ。父親に文句たれろ。それでも、預かったお年玉袋を渡したら、飛び上がって喜んでいた。現金な末っ子だ。
年末年始のお休みって、案外短いんだな。
山を紹介できなかったのが、残念だ。
「アッ、伊勢家のお墓を聞けなかった。」
「ワン。」
読んでいただいて、ありがとうございます。
これから、伊勢家や山の姿が解明されます。




