25 湧水の力と蜂の巣の賄賂
湧水の無害が証明されたので、早速、珈琲を入れてみた。普段は面倒なので、インスタントだが、今日は本格珈琲だ。
「うまい!!!!。」
仏様にもお裾分けだ。ケンタが横で鼻をひくひくさせている。ケンタに珈琲は無理そうだ。ケンタは、加工してない湧水だ。
昨日、家に帰りついた時間が早かったので、湧水を汲みに行ったんだ。家のそばにあんなきれいな水があるのに利用しないなんて考えられないからね。ペットボトル数本だけど、ケンタなんて、湧水しか飲んでいない。俺は、やっぱり心配だから沸かしてから飲んでいる。それでも、水が美味しいって、いいよね。心が洗われるようだ。
でも、仏壇のコップの水や花瓶の水の減りが早いんだ。花も美味しい水だから吸収が良いんだろうか。まあ、じいちゃんやばあちゃんが飲んでくれると思えば些細なことだ。
もっと、ペットボトルを用意しないと。
水質検査キットって、便利だよな。何気に説明書を読み返したら、最後に書いてあった。
『このキットは、飲料の可否を証明するものではありません。その場合は、しかるべき機関にて検査ください。』
飲んじゃったよ。でも、俺もケンタも何ともないし、大丈夫だよな。安心して飲むのは、やっぱり保健所か。悩んでいたら、またもや
『より詳しい検査をお望みの方は、下記にて承ります。』
「ケンタ、保健所以外でもできそうだ。取扱説明書はきっちり読まないとだな。」
「ワンワン。」
ピンポーン。
蜂の巣の迎えが来たらしい。シャッターを開けようとしたら、
「このまま、いただきます。uターンはこの先でしますよ。開けたり閉めたり面倒でしょ。」
お言葉に甘えさせてもらった。蜂の巣を渡したら、
「代金です。それから、今後の賄賂です。来年もよろしくお願いしますよ。」
封筒と紙の手提げ袋を渡された。俺は、口をはさめなかった。俺が戸惑っているうちにさっさと行ってしまった。電話の時も思ったが、せっかちな人だ。
賄賂は、はちみつの製品各種だった。お願いできなかったから、これは嬉しいな。
封筒には、10万円も入っていた。こんなに貰っていいのだろうか?
「ケンタ、いいのかなあ?」
「ワン。」
「きっと、美味しいんだろうな。早く貰ったはちみつを食べような。」
「ワンワン。」
シャッターの脇の人間用のドアの鍵を閉めて、確認して母屋に向かおうとしたら、聞きたくない人の声がした。声を聞いた途端、今日一日が台無しになった。
「ケンタく~ン。勘太さ~ん。遊びに来ました。」
今日は、平日だ。仕事はどうした?無視した。
でも、奴の車は山から来たようで車の先が町に向かっている。さっきの養蜂場の車と鉢合わせをしたはずだ。どうやってすれ違ったんだ?俺は、声を掛けちまったんだよ。
「車とすれ違わなかったですか?」
「イイエ、車も人もいませんでしたよ。それよりケンタ君と遊ぼうと思いまして、入れてくださいよー。」
声を掛けたけど無視だ。
さっきの車はどこ行った?まさか落ちていないよな。電話を掛けてみた。
「もしもし、大丈夫ですか?」
「もしもし、何がですか?」
「他の車とぶつからなかったかと。」
「さっきの車ですか。丁度広いとこでしたので良かったですよ。ご心配していただきまして、ありがとうございます。」
何にしても、無事でよかった。でも、あの広場までは、短い距離じゃあないぞ。かなり飛ばしたのかもな。今度は家でuターンしてもらおう。
「ケンタくーん、勘太さーん。」
雑音が聞こえるが、雑音だ。気にすることは無いな。
「ケンタ、今日は収穫だな。家から出ないぞ。」
「ワン。」
読んでいただいて、ありがとうございます。




