21 初めての入山
「ケンタ、おはよう。」
「ワン。」
駄目だ、飲み過ぎた。
ケンタとじいちゃんとばあちゃんにチーンして、ケンタにカリカリを出して、俺は、炭酸を吞む。固形物は、いらない。
「ケンタ、今日は山に入ってみような。でも、二日酔いは失礼かな。」
「ワン。」
ケンタ、今の返事はどっちだ?
どっちの長靴をはこうかと迷った。ケンタに聞こうとしたが、彼奴はさっさと山の方へかけて行ったしまった。
最近、畑や果樹園にいると、山の方をちらちら見ているんだ。ケンタも山が気になっていたようだ、
長靴は、俺のお気にいりにした。これも、店員さんのお勧めにあった品だ。裏山ぐらいなら大丈夫だろう。一応、リュックに水や食べ物を詰めた。着替えやカッパもだ。もちろんケンタのカリカリも忘れない。手には、サバイバルナイフがある。だって、何があるか分からないし、道がちゃんとないかもだろ。用心に越したことは無い。
「ワンワン。」
ケンタが、早く来いと呼んでいる。あんなにせっかちだったか?
朝のチーンで、山に入ることをじいちゃんとばあちゃんには伝えてある。それに、二日酔いでの初入山を謝っといたんだ。
今日の目的は、蜂の巣の探索だ。でも、冒険に行くようでワクワクする。叔母さんに言われた
「勘太君も男の子ね。」
を、思い出した。
果樹園を抜けて少し行ったところが、山の入り口らしい。そこにちょろちょろ水が流れていた。きっと、林野庁の人が言っていた湧水の小川だろう。ケンタと水源をたどる。桶一つ分くらいの水溜りがあった。底から湧水が湧いているのがわかる。ケンタはおいしそうに湧水を吞んでいる。満足したようだ。歓喜の声だ。
「ウォーン。」
そんなに、美味しかったのか?俺は飲まないが、川で手を洗う。冷たくて気持ち良かった。俺も飲みたいが、水質検査してからだ。どこに頼むんだ。保健所は行きたくないな。
そんなことを考えながら、水の流れを確認する。すると、フェンスに阻まれた。ここまでが俺んちの山らしい。フェンスの前にちょっとした池がある。池は俺んちの中だ。でも、水の流れは、国有地に続いている。大雨が降っても、全て国有地に流れていくみたいだ。果樹園や畑には被害がいかないような水の流れだ。反対側も確認したら、同じだった。なんだか、俺んちの山が両側の国有林の山に守られているような感覚を持ってしまう。
空気も美味しい。
湧水の小川を抜けると山って感じだ。ちゃんと道があった。けもの道ではなく、人工的な道だ。でも、道のそばには蜂の巣はないよな。
「ケンタ、はちみつの匂いがしたらよろしくな。」
「ワン。」
「あっ、蜂はさすから気を付けろ。」
「ワンワン。」
時々、鳥が木から飛んでいく。そのほかの動物の気配はしない。クマとか出るかもと不安だったが、そんなことは無かった。いい気分で、道を中心にあっちこっちと山を探検していたら、『ブーン』と聞こえてきた。蜂だ。
蜂の羽音を頼りにゆっくりゆっくり進む。蜂を驚かせて、集団攻撃はごめんだからね。どんな蜂だろう。スズメ蜂じゃあないよな。
「す、すごい⁈」
「ワン。」
俺とケンタは、目の前の光景に立ち尽くした。
読んでいただいて、ありがとうございます。




