14 黒電話の波乱
収穫の秋だ。一層忙しくなった。
葡萄だろ。葡萄は夏から続いている。色々あって楽しめる。柿だろ。サツマイモだろ。梨だろ。トマトもだ。トマトは夏いっぱい採れて、今は最後の収穫だ。
ある日、固定電話がなった。思わず、自分のスマホを確認した。着信はない。けど、まだ鳴ってる。どうして鳴ってるんだ?いとこじゃあないけど、不思議現象か?固まっていたら、ケンタが押し入れに向かって吠えている。呼び鈴も押し入れから聞こえてくる。急いで、襖を開けると見たことない電話機がけたたましくなっていた。恐る恐る手にする。
「もしもし、こちら、養蜂場です。毎年お世話になってます。今年も++日にお伺いします。よろしくお願いします。」
言いたいことを言って切られた。俺は口をはさめなかった。
じいちゃんの電話は、黒電話だ。初めて見た。それになんで押し入れにしまってあるんだ。電話を切って、押し入れを確認して、驚いた。この押し入れは、居間にあるんだけど、押し入れに、電話はもちいろんテレビや扇風機もあるんだ。押し入れがリビングボードの役目を果たしていた。だから、居間がガラーンとしてたんだ。何にもなく、広々としていて、気に入っていたんだ。俺は、じいちゃんと気が合うのかもな。
「ここは、このままで良いな。ケンタもそう思うだろ。」
「ワンワンワン。」
ケンタは違うらしい。この頃、ケンタの言うことが分かってきたんだ。ワンが三回だと、異議があるらしい。
「ケンタ、どうした。何か気になるもんがあるのか。」
「ワンワン。」
ケンタが、前足を押し入れの上の段に置いて、背伸びするように奥を気にしている。
「ここか…。」
俺は、すぐに伯父さんに電話した。
「直ぐに行く。弟にも連絡してくれ。」
俺は、叔父さんにも電話した。
「直ぐに行く。」
俺は、今までこの押し入れを開けていなかった。奥の部屋とかも開けてないけど、ここは居間だ。一度くらい開けてもいいだろうと思う。何て、呑気だったんだ。自分のアホさ加減に呆れていた。ケンタは、知っていたのか?でも、知っていれば、ケンタは教えてくれたと思う。
取り合えず、伯父さん達が来るのを待とう。
でも、このままは、チョットな。
「ケンタ。どうしよう。このままは、いけないような気がするんだよ。」
ケンタは、おりんを口で持ってチーンしてる。俺は、ケンタの言う通り、じいちゃんの隣に移した。俺もおりんを持ってチーンした。線香も立てた。でも、この人誰だろう?
線香の匂いが残っているうちに伯父さんは来た。すごい速さだ。うちに入ってくるなり、写真を見て、
「母さん!!!」
この人、俺のばあちゃんだった。
しばらく、伯父さんは、ばあちゃんの小さい写真や位牌、遺骨をじっと見ていた。
「兄さん。」
叔父さんの登場で、やっと動き出した。でも、叔父さんが動かなくなった。
二人して、黙ったままだ。
俺とケンタはただ隅に座っているしかなかった。
固定電話のことなんて、すっぽりどっかに行ってしまった。
読んでいただいて、ありがとうございます。




