10 伯父さんに宣言
今日は、木曜日だ。午前中に農協に行って、リンゴを卸す。少しだが、リンゴ以外も持ってきた。腐らせるのは、もったいない。
農協の後は、役場に行って、住民登録だ。それと、印鑑登録のこと聞いた。やっぱり、三文判でもいいと言われたけど、作ろうかな。初めての実印だし、じいちゃんの相続に使うわけだし。確か、ホームセンターの近くにはんこ屋があった気がする。伯父さんとの約束は、午後からだ。時間はある。
実印を作ることにした。三日でできるらしい。日吉勘太とフルネームを入れた。凝ったものではないけど、なんか大人になった気がした。もう成人してるし、大人なんだけど、責任感が出てきたような。心構えが違うような。実印一つでおかしいよね。
昨日は、あれからケンタがおかしかった。山を売る話をしていたから、不安になったんだろうと思う。俺は、売るつもりが無いから、
「ケンタ。大丈夫だ。俺は、ここの生活が気に入っている。今は、売るつもりも引っ越すつもりもないから、安心しろよ。」
真面目にケンタの目を見て言い聞かせたのが良かったのか、いつものケンタに戻ってくれた。だから、伯父さんには、ハッキリ売るつもりがないことを宣言するつもりだ。
お昼は、ハンバーガー屋のドライブスルーで買った。久しぶりのジャンクフードだ。ケンタにはちゃんとカリカリを持ってきてある。お水もね。デザートにはリンゴだ。いい音を立てて、食べている。
伯父さんちは、夫婦そろって待っていてくれた。
「お昼は?」
「久しぶりのハンバーガーを食べた。これ、リンゴ。」
「このリンゴ、ほんとに、うまいな。ありがとう。」
早速、昨日の報告だ。
「勘太。俺ら妹弟は、どっちでもいい。」
「どうして…。」
「昨日、弁護士さんに連絡してな、弁護士さんにも、林野庁から問い合わせがあったらしい。先生も、破格の条件を提示してきました。って、言うんだよ。
あの場では、お前に押し付ける形になってしまったからな。冷静になったら、みんな、お前に後ろめたい気持ちがあるんだよ。お前のいとこ達もだ。だから、改めて聞く。じいちゃんちに住むか?」
「伯父さん。聞くのが遅いよ。もう、住む以外、答えが無いから。」
「そうか。良いんだな。」
「はい。ケンタとも約束したんだ。じいちゃんちは売らないって。」
「わかった。あそこは、既にお前とケンタのもんだ。」
「ありがとうございます。」
「ワンワン。」
でも、伯父さんは、三兄弟で費用は出すから、フェンスと門扉の設置は任せろと言い張った。伯母さんに助けを求めても
「この人たちの好きなようにさせてあげて。」
俺は、頭を下げた。ケンタも、伯母さんにスリスリしている。
「ケンタ、俺には無いのか?」
伯父さんはちょっと拗ねていた。
林野庁の人には、はっきり、きっぱり、返事をした。
「売るつもりはありません。」
「ワンワン。」
ケンタも吠えている。
こうして、何とか49日を迎えることができた。
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