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【特別版】 吹奏万華鏡 青春(アオハル)の茂華楽章  作者: 幻創奏創造団
古叢井瑠璃世代
21/23

♪20楽章 ダンスの主役は…?

 全国大会が過ぎ去り、すっかり吹奏楽部員にも平和な日常が戻った。

「…瑠璃がダンスメンバーのリーダーでいい?」

「仕方ないなぁ」

 瑠璃、凪咲、音織、美心乃は文化祭で、ダンスを画策していた。というか、毎年吹奏楽部員の女子は、こぞってダンスをやりたがる。


「…あの!」

「んっ?みるくちゃん?」

その時、みるくが教室に入ってきた。その背は少し縮こまっていた。

「…私も…ダンスやりたいです…」

「…あっ、」

すると音織が声を上げた。

「そうそう。この子もね、ダンスやりたいんだって」

「へ、へぇ…」

瑠璃が意外そうな声をあげた。みるくと瑠璃は、あまり話したことがなかった。そして内気な性格をしているであろう、彼女がまさかダンスをやりたがるなんて。

「…瑠璃?いい?」

凪咲がこう言うので、瑠璃は迷いなく承諾した。



 その後、みるくは言われた通り、難しい動きもこなしてみせる。

「…みるくちゃん、うまいね」

「ありがとうございます。小さい時からやっていたもので」

「すごいね」

瑠璃が無邪気に褒めるも、みるくは恐縮していた。

「…いえ」

その様子が、瑠璃は何だか気になってしまった。



――部活終わり♪

 部活終わり、瑠璃と凪咲と音織は3人で帰っていた。しかし音織は何だか悩んでいるようだ。

「音織?」

「あ、瑠璃」

「どうしたの?」

瑠璃が問う。

「あー、瑠璃には関係のないこと。大丈夫だよ」

音織は笑って返すので、瑠璃はそっかで済ませた。



「…そういえば、静奈(せいな)さんの葬儀、行ったんだって?」

音織と別れると、凪咲が突然に瑠璃へと言う。

「うん。雄成に来てって言われて…ね」

「矢野ったら…瑠璃を振り回しすぎなんだから」

すると、瑠璃は悲しげに首を横に振った。

「ううん。私も雄成に嘘ついたから…別にいいの」

「嘘?」

凪咲が訝しげに瑠璃を見る。

「…うん。雄成はお母さんを信じろ、って言った時ね、『私の親戚は肺がんでも生きてる』って言ったの」

「そうなんだ」

「…でもね、私が小学4年生の時に亡くなった」 

その言葉で、明らかに凪咲の表情が変わった。

「そ、そうなの!?」

「うん。肺がんは本当だったけど…、どうしても雄成に言って聞かせたくて……」

瑠璃の声が徐々に縮む。鼓動は木魚(もくぎょ)のように無機質に、されど力強く規則的に響いた。

思い出しただけで、力が抜けそうだった。


……あの日を思い出すと。



――数日前…

『…かあさん』

『静奈さん…』

あの時、雄成と澪子は静かに泣いていた。

 その光景がフラッシュバックしたのは、小学4年生の時に、親戚のひとりが亡くなったことだ。

『…ば…ちゃ…』

『さつきちゃん…』

あの時、隣で親戚の友達が泣いていた。それを見て、思わず泣いてしまったことがあった。

 瑠璃は、あの時と同じよう…いや静かに、誰にも見られない場所で涙を流した。

『…どうして…?どうして…?』

中学1年生の事件を経て、黙って静かに泣くことが得意だったからだ。

 だが…静奈が亡くなったことを、頑なに信じたくなかった気がした。



「…そうなんだ」

(…どこまで…私の姉さんと似てるんだ)

凪咲はやはり、瑠璃に姉の優子を重ねた。優子も無尽蔵のやる気と未来に満ちていた。あと数年鍛えれば、優秀な奏者になっていたことだろう。

そんな優子は事故に見せ掛け自殺した。

 最後の会話。それは真っ赤な嘘だった。すぐに戻ると言って…結局一生戻ってこなかった。


『…ねえさん。どうして?うそだよね?』

棺で眠れる美少女は何も話さない。

『…どうしてぇ…』

あの時、自然と泣けなかった。

葬儀の前夜まで、布団で毎日泣いていたからか。


「…だけど、これで雄成も一歩を踏み出せるかな?」 

瑠璃の問いに、凪咲は強く頷いた。

「…たぶん。矢野なら…きっとね」

そう言った凪咲の声は…本当に強いものだった。

人にいつか、死は訪れる。早かろうと…遅かろうと…、でもいつかは前に進む。忘れたふりをして生きなければ…他愛もない話しで笑えないから。  



――翌日 ♪

 翌日もダンス練習が続いた。昨日よりもみるくの動きは、更に硬いものだった。まるで何かに怯えているようだった。

「…はぁ…はぁ…」

疲れたように、膝に手をつくみるく。瑠璃はそれに違和感を感じていた。

「みるくちゃん、休もう」

瑠璃がみるくに話しかける。

「…あ、いえ。お気になさら…ず…」

そう言いながら、ぎこちない動きでみるくは躍る。それは限界をとうに越えていると分かった。


だからだろうか、みるくは本音を口にした。

「…私、どうしてもセンター…1曲は…やりたいんです」

「えっ?センター…?」

ダンスのセンターはいわゆる主役だ。1曲目は瑠璃がセンターを務める。リーダーだからだ。


しかし…もう1曲目のセンターは、まだ未定だ。

「…そうなんだ」

瑠璃は何も言わず、ただ相槌を打った。



 しかし、ここまでセンターに執着する理由が分からず、首を傾げていると、音織が部活終わりに話しかけて来た。

「…瑠璃」

「ん?」

「お疲れ様」

「お疲れー」

そう言うと、音織が口ごもった。

「…頼みがあるんだ」

「…頼み?何?」

「みるくを…センターにしてあげてほしい…」

「えっ?別に構わないけど…。音織がそうやっね頼んでくるなんて…」

音織が後輩を気遣う所はよく見る。だが、みるくに対してだけは、入れ込みが違う。

「…みるく。親が厳しいんだ」

「厳しい?」

「ああ。やるなら全力で、と言われてるらしくてな。せっかくやるなら…1番を」

そう言って、音織は人差し指を1本立てた。

「…なるほど。親が厳しいから、良い所を見せないと…ってこと?」

「そうだ。難儀な問題よ」

音織が頭を抱える以上、それを無下にはできない。

「…仕方ないなぁ。凪咲たちに聞いて、良ければ…私も全然いいよ」

そう言うと、音織が目を丸めた。

「恩に着る!!」

「へへっ。別に構わないよ…」

瑠璃からしたら、むしろ負担が減りありがたい。


「…あ、このことは…みるくには内緒な」

「うん!」

鈴衛音織。彼女は良い先輩だった。



 それを3年生女子へと相談する。音織含めて、凪咲や美心乃たちはすぐに納得した。

「私は別に主役はいい」

「みーちゃんがやりたいなら、みーちゃんがやれば良いと思うよ」

木管ふたりも快い返事をしてくれた。

「ふたりともも…恩に着る」

「まぁー、ぶっちゃけ…中畑さんが頑張りすぎてるからね」

皆、みるくの努力を認めていたからだ。



――当日 ♪

「…本当にありがとうございます!」

みるくには当日まで、感謝された。

「頑張ろうね。みるくちゃん」

「はい!!」

瑠璃の言葉と共に……ステージでのダンスは幕を開けた。


結果は…大盛況だった。




ご覧いただきありがとうございます!

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次回の公開をお楽しみに♪

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