移住者募集
「皆様、今日は、ようこそお越しくださいました。
遠くからの方もいらっしゃいますね。お疲れ様です。
私、ここの村長をしております波那村美子と申します。
過疎化の進むこの村に興味を持たれ、ご縁があっていらしたのだと思います。
短い時間ですが、思う存分にこの地を見て、味わって頂きたいと思います。
私も十数年前に移住して来ました。今の皆様の不安、十二分にお察しします。」
一か月程前にキッチンカーでイベント参加した際にチラシを配り、今日を迎えた。
『移住者募集!
まずコロッケサンドイッチを食べながら、自然を満喫して下さい。』
7組の単身者や家族、20人が集まった。
「今日の見学会は、まずキッチンカーでも出していましたコロッケサンドイッチと今回初のポテトサラダを用意しました。
食後は、ラベンダースティックを作ってみましょう。
また、近くでじゃがいも掘りも体験できます。
初めの説明が長過ぎると堅苦しいのでここにいる数人、まずは、名前だけ紹介します。」
次々と名前を言い、コロッケサンドイッチの責任者の永田も紹介された。
スタッフがコロッケサンドイッチを参加者に配りながら、永田は、
「ようこそいらっしゃいました、サンドイッチ担当の永田です。
どうぞ、熱いうちに食べてくださいませ。
じゃがいもは、この村で競い合って育てています。
出来たじゃがいもは、道の駅でも販売していますが、コロッケサンドイッチにしてキッチンカーで色々なイベントに参加しています。」
「お子さんにマスタードを塗ってないのを作りましたよ。
はい、あなたのね。
ハーブティーも注ぎますね。」
間、間に名札を付けた村人が座り一緒の食事となった。
「ポテトサラダも作ってみました。いかがですか?
次のキッチンカーには、このサラダも加えてみようかと思います。
今日は、グリンピースを入れましたが、きゅうりの方がお好きですか?」
すると参加者が、
「うちでは、きゅうりですが、グリンピースもおしゃれですね。」
「うち、りんごも入れたりするんです。」などおしゃべりが始まった。
『移住 ジュンジ(神奈川出身)』と名札を首からふらさげているので
「神奈川は、どちらですか?」
「移住、何年ですか?」
「皆さん農業やっていらっしゃるのですか?」
「 じゃがいもは、どんな種類」と聞かれる。
以前のジュンジなら俯いてしまっただろう、でも最近のジュンジは、
「僕は、農家では、無いです。ほぼリモートで仕事しているのでじゃがいもを育てる時間があるんです。土が肥えているので良いじゃがいもが出来ます。
村でじゃがいも作りを競うので、育て方を検索して頑張っています。
始めると面白いものですね。
移住して5年めです。」
「以前の神奈川と何処が違いますか?」
「月一回ぐらいで横浜に行くのですが、始めのニ年ぐらいは、横浜に行くと『帰って来た』と思っていましたね。でもこの村に馴染んだ今は、横浜から戻ると『帰って来た』と思いますよ。 日常としては、コンビニが遠いので、ものを計画的に買うようになりましたね。」
「ジュンジさんて、独身ですか?」と年配の女性が唐突に質問して来た。
少し頬を赤らめジュンジが頷くと
「ご縁があると良いわね。」と同行の若い女性達に向かって言った。
「ジュンジさん、突然ごめんなさいね。この辺の可愛い女性達が小声で言っていたからね。」
可愛い笑い声が湧き上がった。
『料理担当 ナガタ(先住民)』と書かれた名札は、笑いを誘っていた。
「先祖代々、ここらに住んでいたんですよ。若い時に京都に憧れて学校の寮で少し暮らした事あるんですよ。
この辺もう少し住民がいたんですよ。でもだんだん減ってね。
寂しいのですが、隣が空き家だと大声でカラオケしても『うるさい』と怒られる事ないから、やりたい放題ですよ。
ジュンジさんもそんな空き家をリフォームしておしゃれに暮らしてますよ。」
そこ個々で話の花が咲きだしました。それを村長は、にっこりと微笑みながら見ていた。
少し離れたところで栗林も親指を立ててにっこりしていた。
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