クリスマスケーキ 1
栗林の家に入るとすぐその可愛い絵が飾られている。栗林が懐かしそうに話を始めた。
教員時代の生徒の思い出が溢れて出た。
愛は、複雑な気持ちでなつと手をつないで聞いていた。そんな帰り道、なつは、二人になってから愛に言った。
「今、思い出せなくてもいいの。そのうち何とかなる。今まで何でも何とかなったものね。
愛ちゃん。
でも木村先生に会いに行ってみる? 今、どこの施設かな。私達の移住を知らせに行きたいな。」
「そうね。先生には、スイートポテトがいいかな。」
それから、二人は、スイートポテトか、パンプキンパイかに議論が移った。
一方、栗林の方でも当時のアルバムや住所録などを探してみた。さらに同僚などにも連絡をして情報を集め始めた。愛の同級生達からの情報は、少なかった。当時、小学1・2年生のお友達の引っ越し先が判る事は、珍しいかもしれない。
またフルネームが判ったので、村長は、戸籍を調べを始めた。
そして、ハロウィンが終わり、クリスマスの準備を始めたなつに栗林から連絡が入った。
「愛さんの事を調べました。少し分かって来たので報告したいのですが、こちらに来られますか?」
愛に気遣っている事が感じられた。
「なつさんから、話しますか?私から愛さんに電話した方がいいですか?」
なつは、一呼吸おいてから
「愛には、私からお気遣い頂いている事も話します。自分の事を本当は、知りたいと思います。ただ思い出せない事が辛いのだと思います。
愛と都合合わせて二人で伺います。
仕事柄、クリスマス前は、休めなくなるので早急にお返事します。」
翌日、なつは、軽い口調で愛を誘った。
「今度は、クリスマスケーキ持って行こう。」
「なっちゃん、ジュンジさんに会いたいのかな?」
「わかっちゃう?」
なつは、愛の横顔を見て以前と違う感じがした。
本当の事を話してから栗林に会った方がいいに決まってる。行ってから不意に話されても戸惑うように思った。心の準備は、あった方がいい。
最近、愛の表情が少し明るくなってきた気がする。
一呼吸してから、
「それとね。
愛ちゃんの事、色んな方が調べてくれたって。
報告聞いてみようね。
栗林さんの教え子の愛ちゃんと私の親友の愛ちゃんは、同一かな?」
「そうなのね。でも私は、思い出せないの。皆さんに迷惑かけちゃったわね。」
「そんな事ないでしょ。
悩まないの。
愛ちゃん、話聞くだけでいいのよ。私は、栗林さんの教え子の愛ちゃんが、どんな子か気になるのよ。
そして皆でクリスマスケーキ食べたらまた面白い時間になると思うの。
それ終わったら、仕事忙しいから、先に楽しい思いしておこう。」
そして二人は、星空を見上げ、何だか自分達の移住で今までと違う世界が始まるように思えた。
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