クリスマスケーキ 2
なつと少し不安気な愛は、クリスマスケーキを持って栗林の家を訪ねた。
まだ11月なのにとても寒かった。
「こんなに寒いとチョコも溶けにくいね。」
「ナッツより、アーモンドが良かったかな?カシューナッツで良かったかな?」
栗林の家に着くと、村長もジュンジも渡辺も揃っていた。
緊張から愛は、目を伏してしまう。その分、なつが明るく言う。
「こんにちは。
美味しいチョコレートケーキを作りました!可愛いサンタも付けました。」
軽い挨拶が交わされ、パラパラとした拍手があり、渡辺が紅茶を注いだ。
落ち着いた声で栗林が調べた事を話し始めた。
「僕の教え子の愛ちゃんは、村木愛さんと言うんだ。三年生の時、お父様の転勤で転校して行かれた。」
「木村じゃなくて、村木?なんの縁かしら。」
「私は、以前の戸籍を調べさせて頂いたのよ。」と村長が言った。
村木愛さんを調べてみた。
三年生で横浜に引っ越した。二歳上の姉とも仲良しだった。横浜は、母親の親戚も側に住んでいて少しずつ明るい子供に成長していたようだ。
ある日、母方の親戚があまりにも連絡がつかないので合鍵を使い家の中に入ってみた。特に変わった様子は無く、整然としていた。全ての部屋も押し入れも開けてみたが、不審な事は、見当たらなかった。
点滅する電話は、自分からの留守番メッセージだった。
新聞は、玄関内に入る構造なので外からは、不在が分からなかったようだ。隣の家の人に思い切って聞いてみると
「最近お見かけしない。旅行中かしら?」と言われた。
そして、気になるのは、居間のカレンダーのメモ。
「9/17 御嶽山」と書かれていた。
突然、冷蔵庫ぐらいの隕石が降って来たと言うあの日に一家揃って登山していたのかもしれない。一家揃って突然消えてしまうなんて考えられない。
その親戚の方もあちらこちら調べ問い合わせたそうです。行方不明リストには、ないそうです。
時折村長が言葉を挟みながら淡々と栗林の報告が続いた。
「これは、僕の教え子の話です。」
「そうね。この愛ちゃんの事であるかどうかは、判りませんね。」となつが受けた。そして愛に向かって
「愛ちゃん、ますますここに移住するのが楽しみね。
暮らしていたら、いつか愛ちゃん何か思い出すかも知れない。思い出さなくても今日が、いい思い出の一つになるのね。
ゆっくり暮らそうね。」
愛は、無言で頷いた。
「さぁ、アップルティもありますよ。淹れますね。」と渡辺が明るく言った。
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