パンプキンパイ
間もなく栗林とジュンジがやって来た。
「なっちゃん、すみません。栗林さんとのキッチンカーの打ち合わせがあったもので。返信しないで、失礼しました。」
「えっ、ジュンジ君、僕に言ってくれなかったよね。『お誘い受けてる』って。知っていたら、なっちゃんを優先したよ。」
と栗林は、言い、なつに向かって、
「悪かったね。
君、移住して来るって。
ここ、暮らしやすい所だよ。二人で来るのかな?」
そこで改めてなつは、愛を紹介した。
すると栗林がまじまじと愛を見ている。
「何処かで以前お会いしたかな?」と栗林が、独り言を言った。
愛は、ぽかんとしていた。
パンプキンパイを食べながら移住についてそれぞれの意見が出された。
「ゆくゆくは、二人でキッチンカーにスイーツを乗せて走ろうかと思うんです。さつまいもやかぼちゃは、育て易いので、私達で栽培し、収穫出来るかしら。」
「すぐには、今の仕事を辞められないのですが、行ったり、来たりしながら進めて行くつもりです。」
「どんなスイーツが出来るのかな?」と聞かれると二人は、顔を見合わせ
「何でもOKです。ケーキ屋勤務ですから。」と自信たっぷりの笑顔を返した。
「そうでしたか。その点は、安心ね。
スイーツも季節で毎回変わると楽しいわね。」
「愛さんは、以前この辺りに住んでいませんでしたか?
第一小学校に通っていませんでしたか?
名字変わりました?
何歳ですか?」
それまで聞き役だった栗林が、次々と質問をした。
なつが、慌てて栗林にストップをする。
「愛ちゃんは、辛い体験をしているんです。沢山質問をしないで下さい。」となつは、愛の肩を抱いた。
愛が、小さな声で
「ありがとう。なっちゃん。」
小声で渡辺が、栗林に簡単な説明をした。
「そうでしたか。失礼しました。
でも、僕の教え子にどことなく似ているんです。」
「落ち着いてね。
ゆっくりとお話ししましょう。美味しいパンプキンパイを頂きながら。」と渡辺が、優しい声で言った。
「栗林さん、第一小学校で先生だったのは、いつ頃ですか?」と波那村が聞いた。
「何年経っただろうか?
愛ちゃんと言う子の担任になったのは、愛ちゃんが一年生の時。大人しい子だった。3年生になる時、お父様の転勤で彼女は、転校して行った。その後も数年可愛い年賀状が届いた。
私からも出していたけれど、その後戻ってきてしまったんです。」
なつは、愛に
「思い出さなくてもなんの心配もないの。
私には、忘れてしまいたい事が沢山ある。
愛ちゃんの人生は、施設で私と出会った日からスタートしたのよ。
ねっ。
さらにここに来て沢山楽しい思い出作りましょう。」と囁き愛の肩をさらに強く抱いた。
愛の眼から涙がこぼれ始めた。
「悪かったね。」と栗林が神妙な表情になった。
「なっちゃん、パンプキンパイの賞味期間はどのくらいですか?」と唐突にジュンジが聞いた。
「前もって用意が出来るなら、次回のキッチンカーメニューに加えましょうか?」
急に話題を変えたジュンジの気遣いを誰もが理解していた。
「そうね。季節や気温にもよりますね。」
「限定20個とか、どうですか?」
なつも
「次は、どちらで出店ですか?パンプキンパイもいいけれど、パンプキンプディンやパンプキンケーキもどうかしらね。」愛の肩を抱いたまま話題に加わった。
移住の話から、出店の話になり、さらに村の花々の話にと長々続いた。
そして別れ際にジュンジが、
「栗林さん、あの絵を愛さんに見てもらったらどうでしょう。」と提案した。
「ジュンジ君、そうだね。よく思い出してくれた。何か、つながるかも知れないね。
もし、お嫌でなければいらしてください。」
栗林は、自宅に皆をさそった。
お読み頂きありがとうございました。
続きは、少し遅れますが、きちんと書きます。よろしくお願いします。




