スイートポテト
日曜日の朝、ジュンジがのんびり、ぼんやりしていると玄関チャイムが鳴った。
「チャイムを鳴らす人って誰だろう。珍しいなあ。」と独り言を言いながら、玄関ドアを開けてびっくりした。一緒にじゃがいも掘りをしたなっちゃんが、立っていた。
「おはようございます。スイートポテトを作ったので食べて頂こうと持って来たの。」
「あれ、早いね、何処から来たんですか?」
「うふっ。驚きました?
昨日ね、渡辺さんのおうちにお泊りしたの。」
「知らなかった。先月越して来た渡辺さんの所ですか?」
「はい。渡辺さんのご主人様は、夜出てしまうお仕事なのでよく長電話をして、私も一人暮らしなので、
色々悩み相談したりして、
だんだん親しくなって、
『泊まりにいらっしゃい』って言って頂いて。
そして昨日来たんです。
で、今朝作ったんです。
食べて欲しいなぁ。」
可愛い声に気を取られてジュンジは、
「はぁ」としか言えずにいた。
「驚きましたぁ?
一緒に食べませんか?」
ジュンジの返事が聞こえない。
なつは、「どうぞ、お入り下さい。」と言う言葉がなかなか出てこないので自分から積極的に訪ねてみた。
「中に入らせて頂けますかぁ?」
ジュンジの方は、チャイムを鳴らす来客、それも女性なんて初めての体験。何をして良いのか分からない。
「あぁ。」と声を出したものの部屋は、散らかっていた。なつの「くすっ」と笑う声が聞こえた。ジュンジもつい笑ってしまった。
なつは、イラスト画の散らかる部屋に上がり、キョロキョロとした。可愛い絵ばかりだった。
「えーと。えーと。」と独り言を言うジュンジになつは、
「お構いなく。スイートポテトと紅茶も持っていますので。お湯だけ頂けますか。」
「あっ。はい。」
「お皿もフォークもあります。」
ポットを持って戻って来たジュンジとテーブルについた。
「気が利きますね。」
「渡辺さんがなつに用意してくれたんです。『男性一人暮らしに突然行くのだから、持っていったら。』と私は、考えていなくて。」
「渡辺さんは、お優しいですね。お母さんみたいな方ですね。」
「そうですね。お母さん・・・。優しい方。
よく、長電話するの。」
と言ったなつの声がつまって聞こえて、ジュンジがふとなつの目を見ると何故か目がうるんでいる。
「お湯沸きましたから紅茶淹れましょう。」と戸惑いながらも言ってみた。
「カップまで用意してくれたなんて、お母さんですね。」とジュンジが言ってもなつは、俯いてしまった。
「あの、なつさんどうされましたか。失礼しましたか?」
「違うの。なつは、お母さんいないの。渡辺さんみたいなお母さん欲しいの。渡辺さんがお母さんだったら、毎日幸せよね。なつ、お母さん欲しいの。」
唐突な言葉にジュンジは、対応出来なかった。
無言のまま、紅茶を飲みながら、スイートポテトを味わった。
ジュンジから
「美味しい。久しぶりです。」とぼつりと言葉がもれた。
鼻をすすっていたなつの顔が明るい微笑みになった。
「お菓子作りは、好きですか?」とジュンジの問いになつが頷いた。
「なつは、高校出てからお料理学校に通ったの。でも途中からお菓子専門のコースに替えたの。
昼間は、ケーキ屋さん、夜は、お菓子の学校。楽しいの。でもだんだん太るのよ。」
「そうでしたか。」
「また、お菓子出来たら持って来ていい?」
なつは、勇気を出して聞いてみた。
お読み頂きありがとうございました。
少しずつ書き進めますのでよろしくお願いします。




