15 【セレスティア視点】ティアとエイミーの救出
今回はティアの視点です。
私はセレスティア、ハインリーヴの領主様の護衛の依頼を受け、このハインリーヴの街まで来ていた。
そして現在、とある民家の中で、私は仲間であるエイミーと共に捕まっている。
まさか街中で、しかも衛兵を殺してまで私達を誘拐するとは思っても居なかった。
私達を捕らえた野盗達は、4人の見張りを残して、アーシア達を捕まえに行ってしまった。
「くそっ、見張りで楽できるかと思えば、これじゃ蛇の生殺しだぜ、飲まないでやってられっか!」
そう言って悪態をつくのは、スキンヘッドの男だ。
見張りに残った野盗はテーブルで酒を飲みながら、此方をチラチラと観ている。
「ヴァッカの旦那とフェルドの親分より先に手を付けるわけには行きませんからね」
長身の男がそう言う、余程そのフェルドと言う親分が怖いのだろう、捕まえられた後、手足を縛って、口を塞がれているだけで何もされないでいる。
「この小娘、やたらと肌がきめ細かくて綺麗なんスよ、ほんのりと良い匂いもするし、どっか良い所の令嬢とかなんスかね?」
がっしりした身体つきの男が私達をじろじろ観ながら酒を煽っている。
この男の言う肌や香りは、ブラスさんの作った「レモンオイル」や化粧水の効果だろう、あれを貰ってから、肌の具合が日に日に良くなっていくのを実感していた。
「もう、たまんないでゲス、少しぐらいなら触ってみてもいいでゲスよね」
「ふぐむぐぐ~ふぇあふぃふぇふぉふぁふふぁ~」
私に手を伸ばしてくるネズミのような男に、エイミーが声を上げる……が、口をふさがれているので何を言っているのか理解らない。
「おい、やめとけって言っただろう! 一度タガが外れたらもう抑えが効かなくなるぞ!」
そう言ってネズミのような顔をした男が私に触れようとすると、スキンヘッドの男に止められるのをさっきから繰り返している。
「こんな事なら、この民家の女を生かしておけば良かったですね」
「それはそれで面倒だろう」
「見ない様にしていても、良い匂いがするし、見張りがこんなにきついの初めてですよ」
「しかし、この場からも離れられないっスよ」
「だったら、酒でも飲んどけ」
どうして男と言うものは、こんなのばかりなんだろうか……
私だって乙女なのだ。昔は物語に出てくるような騎士様や英雄との恋物語に憧れた事もある。
しかし、10歳を迎えた頃から、周りの男達が、私を見る目が変わってきた。
同世代の女の子よりも背が高い私は、身体つきが女らしくなるのも早い方だった。
鼻を伸ばした男達が、私の胸元を覗き込もうとしたり、触ろうとしたりするのが嫌になって、神殿で女神様に仕える事を選択したのは早々に男と言うものに幻滅したからだ。
この国は信仰心が強い、女神に仕える神官に手をだす者はそうそう居ない。しかし、野盗はそれには当てはまらない様だ。
酒を煽ったネズミのような男がフラフラとした足つきで、こっちに近寄ってくる。
「も、もう堪らないでゲス! 触れないなら、せめて見るだけでもするでゲスよ!」
ネズミのような男が、私の服をグイッと強く引っ張り引き裂こうとするが、神官が身につける服は永く使える様に品質の良い物になっている。
力で引き裂けないとわかると、腰からナイフを取り出して服に切れ目を入れて、そのまま引き裂いてしまった。
「むひょ~、これはたまんないでゲス!」
裂けた服から、肌が露出したのを見てネズミのような男が興奮する。
「あの馬鹿! おい、お前らあいつを止めろ!」
「「はい」っス」
私はネズミのような男に見られるのが嫌で、身を捩って素肌を隠そうとするのだが、手足を縛られたままでは思うように動けない。
しかしその様子が、ネズミのような男をより興奮させた様で、奇声を上げながら、ゆっくりと私の胸元へ手を伸ばしてきた。
「ティアに触れるんじゃねぇ!」
突然上の方から聞き覚えのある声がする。
「そのおっぱいは俺んだぁぁぁぁぁ!」
突然、訳のわからない事を言いながら、上からブラスさんが飛び降りてきて、ネズミのような男の腕を鎌で切り落としたのだ。
「ふ、ふふぁふはん?(ぶ、ぶらすさん?)」
驚愕のあまり思わず声が漏れる、しかし口を塞がれているので変な言葉になってしまった。この民家の出入り口は塞がれているのに、何故ブラスさんが天井から降りてきたのか疑問が尽きない。
「手、腕がぁぁぁ、い、痛いでゲスぅぅぅぅぅ」
ブラスさんはそのままネズミのような男を取り押さえようとして来た男達をも、鎌で手足を切り落とした。
あっという間の出来事だった、不意打ちとは言え、3人もの男を一瞬で斬り伏せたのだ。
斬り伏せられた男達は、漏れるような呻き声を上げて倒れ込んでいた。
ブラスさんは、私の姿を見ると、リュックからマントを取り出して、私の身体を隠す様に、ふわっと掛けてくれた。
まるで、おとぎ話の囚われのお姫様を助ける騎士様みたいなのに、先程の言動と、鎌を持つ姿がイマイチ決まりきらないのがブラスさんらしい。
「ふ、ふふぁふ!うふぃほうふぃほ!(ぶ、ブラス!うしろうしろ!)」
エイミーが脚を必死に奥の部屋の方にむけてピコピコと動かして訴えかける。
背後からスキンヘッドの男が剣を勢い良く振り下ろしたのを、ブラスさんが鎌で、剣を強く弾いた。
「てめぇ、何者だ? どこから現れやがった?」
「熟女の胸の谷間にある温もり! 人……それを『安らぎ』と言う! 貴様に名乗る名など無い!」
ブラスさんは腕を組んで、訳の理解らない口上を述べる。
「ふざけやがって、殺してやる!」
ブラスさんとスキンヘッドの男の戦いが始まってしまった。
そして、いつの間にか私の側に来ていたリリスさんとチャムちゃんが、私とエイミーの口の布を解いてくれた。
「今、手足の縄も切りますね。」
「リリスさん、それにチャムちゃんまで、どうやってここに?」
私は状況がわからず聞いてしまった、この民家は、窓はあるけど人が通れる大きさでもないし、出入り口は玄関に1つしか無いのだ。
「えっと……お二人が捕まったと聞いて、つい先程玄関からこっそりと? 酔っていて私達の侵入に気が付かなかったようですね」
「え? 私、玄関の方にずっと向いていたけど、そんな様子まったくなかったんだけど……」
エイミーが疑問に思うのも無理はない、私だって玄関や窓が視える位置に居て気が付かなかったのだから。
「ブラス様は、おっぱいの為ならそのぐらい出来ちゃうですぅ!」
「そんな事より、早くここを抜け出さないと、アーシアさんもピンチなんです、早く助けに向かいましょう」
リリスさんとチャムちゃんが言ってる事は全く理解らないけど、そんな場合ではない様だ。
私とエイミーが自由になった頃には、ブラスさんの戦闘は決着がついていた。
「ば、馬鹿な……、俺の剣は……ミスリル製だぞ……」
スキンヘッドの男は、自慢の剣ごと、胴体を真っ二つにされていた。
そう言えば、ブラスさんの鎌はオリハルコン製だったわね……ブラスさんとの出会いのシーンを思い浮かべて思わず笑いそうになった。
「ティア、エイミー、無事だったか?」
「うん、私は無事なんだけど……」
ブラスさんの問に、エイミーは言いにくそうに私の方を見る。
「ごめんなさい、襲われた時にちょっとヘマしちゃって、なんとか歩く事は出来そうだけど、走ったり戦うのは出来そうにないわ。私は大丈夫だから、皆はティアを助けに行って」
野盗に襲われた時に、脚を怪我してしまい、その所為でエイミーまで捕まってしまったのだ、脚を見て見れば、足首から腫れていて少し紫色になっていた。
「そんな事が出来るかよ! 狙われているのはティアも同じなんだぞ! 時間が無いから、しっかり掴まっていろよ、少し揺れるが、我慢してくれ」
「えっ? ブラスさん、何を言って……」
「リリス、チャム、そしてエイミーも、アーシア達の所まで走るぞ」
そう言って、ブラスさんは私をマントに包んだまま抱き抱えて走り出した。
ブラスさんはエイミー達より早く走っているのに、私をなるべく揺らさない様に気を使いながら、力強く抱き抱えてくれている。
スケベなんだか、カッコイイんだか、優しいんだか……ほんとブラスさんって不思議な人よね。
次回、アーシア達を救います




