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16 倉庫での攻防戦

「おい、今どうなってる」


 倉庫を取り囲む野盗に声を掛けたのは、赤く焼けた髪に隻眼の男、この野盗の集団を束ねるフェルドだ。


「フェルドの親分、つい先程ヴァッカの旦那が仲間を半数ほど連れて、アルベルトと黒髪の男を引き離して行きました。後、倉庫に残っているのは目標の子供と、後は女だけです」

「ほぅ、上手くやれてるじゃねぇか、倉庫に閉じ込めるのも、捕まえるのも大して変わらねぇ、どうせこの騒ぎはまだ暫く続く、逃げられないんだからじっくりと引きずり出してやれ」

「へい、親分!」





 ――――





「どうしよう……リリスさんとチャムちゃんまで行っちゃったよ」


 アルベルト様とブラスがヴァッカと戦いに出た時に、リリスさんやチャムちゃんまで一緒に飛び出してしまったのだ。

 ニーナや、マリアベルと、ホーリーベルを護る為には、もう荷物で出入り口を塞ぐしか無かった。


「もう、どうしようもありませんわ、アルベルト様とブラスを信じるしかありませんわ」

「こんな荷物じゃすぐに出入り口は破られる……なの、早く二階にバリケードを作って扉を護る……なの」

「此処は私達が護りましてよ! アーシアさんは二階のニーナ様の居る部屋を護るようにバリケードを築いて下さいまし!」

「うん、解ったよ」


 アーシアは階段を駆け上がり、二階にある荷物でニーナ様の居る部屋を護りやすいようにバリケードを構築していく。

 その間、一階の出入り口ではセシリアとアリシアで時間を稼がなくてはいけない。


「アーシア様、私も手伝います」

「マリアさん、助かるよ、それじゃあの荷物から運ぼう」


 マリアベルがアーシアに協力を申出たので二人でバリケードを構築し始めた。


「偉大なる水の精霊よ、新たな命を水に宿し我と踊れ」


 アリシアが詠唱をすると、倉庫の隅にある水瓶から水の塊が浮かび上がった。

 野盗達は出入り口に積み上げた荷物を退かそうとしている、一番上にある荷物が崩れ落ち、出入り口の上部が外と繋がった瞬間、アリシアは水の塊を勢い良く飛ばして、出入り口付近に居る野盗を突き飛ばした。

 その様子を見ていたフェルドは思わず舌打ちをする。


「ちっ、魔道士まで居るのかよ! お前ら、入り口を塞いでいる荷物は少しずつ崩していけば良い、大人の怖さって奴をじっくりと教えてやれ」


 空いた隙間は、すかさず荷物を積み上げて出入り口を塞ぐ


「やりましたわアリシアさん! でも、私も負けませんでしてよ」


 セシリアの剣は細身の剣だ。野盗が出入り口を塞ぐ荷物を退かそうとすれば、すかさず突きを入れて野盗を牽制する。

 大きく隙間が開けば、アリシアが水弾をぶつけて撃退して、新たな荷物を積み上げて塞ぐ。

 地味な攻防が暫く続くのだが、倉庫の荷物も無限にある訳ではない、出入り口を突破されるのも時間の問題だった。


「ねぇ、アリシア、こんな感じでどうかな?」


 バリケードを構築したアーシアがアリシアに問いかける。


「そこ、部屋の前だけじゃなく階段も簡単に上がれないようにして塞ぎやすくしておく……なの、階下に落としやすい物と、それと何か武器として使えそうな物を漁って部屋に固めておいて欲しい……なの」

「理解ったー」

「アーシアさん、急いでくださいまし!」


 どれぐらい経ったのだろうか、教会の鐘が鳴り響くのが聞こえて来る。

 この鐘は、朝の日の出から日付が変わる時間まで一時間おきに鳴るようになっている。

 ブラス達が出て行ってから初めて鳴る鐘だ、ブラス達が出ていく前からも暫く鳴っていない、アーシア達はもう随分と時間が経過しているように感じていたが、実際は30分ちょっとしか経過していない。

 野盗達はどこかで木材を入手してきたらしく、木材で出入り口のバリケードを突き始めた。


「もう、ここは持たない……なの、二階へ撤退する……なの」

「解りましたわ、アーシアさん行きますわよ」

「オッケーだよ」


 その言葉を合図に、セシリア達は、階段の下を荷物で塞いで二階に駆け上がった。

 アリシアも出入り口を突き崩した野盗に、最後に水弾をぶつけるのも忘れない。

 しかし、それも大した時間稼ぎにもならない、荷物の残骸で散乱した出入り口を突き崩して、野盗達が倉庫の中へと踏み入れる。

 フェルドは魔道士が居た事で、入り口を突き崩すのに時間がかかっていたことに苛立ちを覚えていた。


「やっとか、思ったよりも時間が掛かったな。お前ら、全員で中に入って、さっさと小娘を引きずり出してこい」

「へい、親分」


 倉庫に踏み入るフェルドの手下は総勢20名。

 退路の無いアーシア達が捕まるのも時間の問題……のはずであった。





 ――――





 倉庫に手下が突入して間もなくの頃、7人の男がこの路地に入ってきた。


「なんだお前らか、そっちはもう片付いたのか?」


 フェルドの手下達には、敵味方が判るように上半身の何処か目立つ場所に赤と白の布を付けさせていた。だから遠くからでも判別が付く。

 しかし、フェルドの問に返事は帰ってこなかった。

 フェルドは「なんで返事をしない! 今回の作戦に何か不満でもあるのか」と怒鳴りたくなったが、今回の作戦はそれなりの犠牲を強いているのだ。不満がないわけではないだろう。

 街中で騒ぎを起こしている手下の内、何人かは既に衛兵に捕らえられていた。

 後で助けるつもりではあっても、確実ではない。

 それに、さっさと目的を済ませてこの街から脱出しないと犠牲は増えるだけだ。


「まぁいい、目的の小娘はあの倉庫の中だ、お前達もさっさと合流してあの中に……」


 突然、脇腹に熱く焼けた鉄棒を突っ込まれるような痛みを感じ、生暖かい液体がじんわりと広がる感覚を感じた。

 手下であるはずの男が突然ナイフを突き立ててきたのだ。


「がはっ……貴様、一体何を……俺達を裏切るつもりじゃ……」


 フェルドは男の顔を見て驚愕する。

 見知った顔なのだが、表情からは生気が失われていた。


「ソンビ……だと? 何で……こんな所で……」


 そのまま、ゾンビとなった元手下達に滅多刺しにされて、フェルドはそのまま生命活動を停止した。

 大物っぽかったフェルドがあっけなく死んでしまいました。

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