10 ハインリーヴの街
やっと街に到着です。
ハインリーヴの街に着いた。
道中ずっと自然しか見てなかったので、街も田舎だろうと思っていたのだが、想像以上に立派な城郭都市だった。
俺は初めて見る街に感動しながら街を囲む高い壁を見上げていた。
「まるで砦の様な壁だな」
「昔、この辺りは魔族の戦いで激戦区だった……なの、この高い壁はその時の名残……なの」
「さすが賢者、アリシアは物知りなんだな」
「うむ、昔この街を護るために我輩も戦ったのである、そうして領主として伯爵の爵位を賜ったのであるな」
おっさん伯爵だったのか、爵位は良く分からないけど、伯爵ってそこそこ偉いんだよな?
「その頃からだったよな、おまいさんが『鬼神アルベルト』なんて呼ばれるようになったのは」
「昔の話なのである」
昔話をするスタークさんも、おっさんとはかなり親しそうだ
「ブラスくん、此方である、あの門から中に入るのであるぞ」
詰所の前では門番が出入りする人々を確認していた。
アーシア達はカードのような物を門番に見せて街に入っていくが、俺にも、リリスやチャムにも身分を証明するものは持ち合わせていなかった。
「この者達を入れてやって欲しいのである」
「いくら領主様の命令でも、しっかりと身分を確認しないと、街には入れられませんよ」
「この者達は記憶を無くしているのである、我輩が身分を保証するので入れて欲しいのである」
治安を考えると得体の知れない人間は入れられないだろう。
それに、いつの間にか、リリスとチャムまで記憶を無くしたことになってしまっている。
「この者達は我輩の息子達なのである」
「えっ? アルベルト様の子供はニーナ様だけでしたよね?」
「新しく増えたのである」
とうとう、リリスとチャムまでおっさんの子供扱いになってきた。
「我輩が、こうして頼んでも駄目であるか?」
そう言って、フロントダブルバイセップスをしてニカッと笑ってみせる。
「フロントダブルバイセップスしても駄目なものは駄目ですよ」
そりゃそうだ、何でそれで行けると判断したんだ。
「これでもであるか?」
「うっ、ラッ……ラットスプレットをしても駄目です」
うん? 何かおかしな流れになってきたような……
「我輩がこうして頼んでもであるか?」
「サ……サイドトライセップスまで……そうまでおっしゃるのでしたら、この領地の出身として身分証を発行しましょう」
どうしてそうなる?!
おっさんの筋肉による説得で身分証を手に入れる事ができた。
良いのかこれで?
「うふふ、気にしなくても良いのよブラスさん、あれでも一応領主だから身分証の発行ぐらいは簡単にできるのよ」
「じゃぁ、さっきのやり取りは何だったんだ?」
「主人はわりと慕われているのよ、いつもあの様な感じで、門番とはやり取りしているわ」
なんだ、遊ばれていただけなのか。
おっさんと話す門番の人達はどことなく楽しそうだった。
「これでもう安心だね」
「街の治安は良い方なのか?」
「何か問題が起きれば衛兵もやって来ますし、わざわざ人の多い所で問題を起こす人も居ないですわ」
「暗い時に路地に入り込んだりすると、流石に安全とは言えないけどね」
元の世界ほど治安が良いわけでも無いようだ
暫くすると、身分証が発行されて、二人の衛兵がおっさんを館まで護衛しますと言ってきた。やっぱりあれでも一応領主なんだな。
「ブラスくんには荷物を返しておくのである」
おっさんは馬車に連結されていた荷車と、大型のリュックと、鎌と鍬を返してくれた。
うげっ! やっぱり……
早速中身を確認してみた所、ゲームで使ってたアイテムや狩りの後の素材などが、そのまま詰まっていた。
そう言えば、倉庫サービスのアイテムとかはどうなってるんだろう?
ゲームではマイホームを購入して倉庫を設置する事でアイテムを保管したり出来たんだけど……俺の倉庫って何処にあるんだ?
ブラスはレアであまり使わないものとかは倉庫に入れて、便利なアイテムや良く使うアイテムは良く持ち歩いていたのだが、ブラスが最後にプレイした時は、生産用のリュックに持ち替えていたので、殆どが生産アイテムと初心者装備等のガラクタであった。
初心者育成用の装備とか入ったままだ……
ん? 初心者用?
「おーい、アーシア」
「どうしたのブラス?」
「鎧をあのバカに壊されたままだろ? これやるよ」
アーシアに渡したのは『レザーアーマー・オブ・ハードライフ+4』
スロット付きの革鎧に魔石を素材として作ったものであり、ゲームではHPが800上昇する効果で、低レベルではダメージ数%カットよりもこっちの方が使いやすかったりする。
中級の狩場に行く頃には使い物にもならないゴミ装備だが、アーシアにはちょうど良いのかもしれない。
この世界ではどう作用するのかは知らないが、無いよりは良いだろう。
「ありがとうブラス! 大事に使わせてもらうよ」
アーシアは凄く嬉しそうにしているが、すまん、それゴミ装備なんだ……とは言いにくい。
「あら、アーシアだけですの?」
「私達にはありませんの?」
「ブラス……私は魔法を教えた……なの」
「えっと、じゃぁ私も」
えぇい、ちゃっかりさんめ!
仕方ないのでそれぞれに合いそうな物を渡していく。
ティアには『アミュレット』、セシリアには『ガントレット』、アリシアには『シルバーリング』、エイミーには『ブレスレット』、どれも初心者育成用の装備なので、ハッキリ言ってゴミ装備なのだが、しかしどれも低レベルには頼もしい装備である。ただしゲームでは……だが。
「ガントレットですの? でも、色気のない革鎧よりは良いですわね」
あぁ、そうか女の子だって事失念してた。
もっと可愛い装備とかの方が良いよな?
しかし交換してあげようとしたら他の皆も言い出しかねないので止めておく。
「アーシア、衛兵さんも付いている事だし、私達は荷物を運んでおくべきかしら?」
「あ、そうだね、じゃぁどうしようか、二手に分かれる?」
「私とエイミーでやっておくわ、アーシア達はそのままアルベルト様に付いていてあげて」
「うむ、そうであるな、申し訳ないのであるが、お願いするのである」
ティアとエイミーは、馬車の積荷を運ぶ為にその場に残る事になった。
食料等は廃棄して良いそうなので、運び込む荷物はそんなに多くない。
俺も手伝おうと思ったのだが、どうやら身分証の登録の為に教会に足を運ばなくてはいけないらしい。
その後、ティアとエイミーとは別行動を取り、教会で身分証の登録を済ませた。
身分証に血を付けて登録した後で教会の女神像の前にある石版に手を載せて魔力を登録したら終わりらしい。
登録の間、女神像を見上げていたが、造形が甘い! 本物の女神様のおっぱいはもっと綺麗なんだぞと、女神像を作った職人に文句を言いたくなった。
今度会う事があれば、女神様のおっぱいの素晴らしさを伝えなければいけないと心に固く誓ったのだった。
登録はすぐに終わり、おっさんの館に向かう事になったのだが、またあいつが現れた。
「待ってたぜ!」
「むぅ、性懲りもなく、来たのであるな」
ヴァッカが数人の仲間を連れて俺達の前に立ちふさがった。
見境のない奴だな、人通りの多い街中で堂々と領主を襲ってどうするんだ?
スタークが前に出てヴァッカと対峙する。
「此処は俺とカインに任せて、おまいさん達はその娘達を連れて逃げな」
「うむ、此処は任せたのである」
スタークとカインがヴァッカを引きつけてくれている間に俺達は逃げる事にした。
ブラスが遊んでたゲームは、D&Dをベースに、MoEや、ラグナロクオンラインや、ルーンファクトリーの様に、生産やスローライフを楽しめるようなMMORPGと思って下さい。
どれも私が好きなゲームですけど。




