9 不穏な動き
今回短めです
豊かな自然に恵まれ、多くの人が住まう街ハインリーヴ
街をぐるっと囲む高い壁に囲まれた城郭都市、その西に位置する門でジェドは働いていた。
夜間の勤務は、人の出入りもあまり無い為、仮眠を取りながらの交代制である。
夜遅くだと言うのに遠くから二台の馬車が護衛を連れて此方に向かってくる。
やがて門の前で馬車が止まると、馬車の上から一人の男が顔を出した。
「よぉジェド、今日はお前が夜番なのか」
「あれ? フェルドさんじゃないですか、今日は荷物が多いんですね、荷物も多いから護衛も多いんですか?」
「あぁ、今回は嵩張るものが多くてな、またいつものように頼みたい」
西門にはフェルドの仲間が数名門番として務めている、仲間でない門番達もフェルドの事は良く知っている。
フェルドは金払いの良い商人を装って門番にちょっとした頼み事をしてきた、最初は些細な頼み事だったのだが、是非御礼を受け取ってくれと言うので、後で渡された革袋を確認すると、かなり多めの金銭が入っていた。
それからフェルドの頼み事などは優遇する様になって来たのだが、その都度御礼として金銭を受け取っていた。
しかし、徐々にその頼み事が険しいものになっていく。
段々断るのも難しくなってきて、今ではフェルドの積荷はノーチェックだ。
しかし、今まで問題が起きた事はないし、金や酒、時には娼館まで奢ってくれる事もある。
ジェドからしてみればフェルドは金払いの良い相手だ。
そしてフェルドからしてみれば、いくら野盗とは言え奪うだけでは生活は出来ない。
手に入れたものは売り払う必要もあるし、食料だって買い足す必要があるので、多額の金を払ってでも融通が聞きやすいジェドの様な門番を大事にしていた。
今回はそれを利用する形になった。
ジェドは今回も税金の高い貴金属等を持ち込みに来たんだろうと思っている。
それでも税金を払うよりは安いと言って高額な金銭を渡してくれるフェルドは良い取引相手だ。
「フェルドさん、流石にこんな大荷物は誤魔化すのは厳しいですよ」
「わかってるからこんな時間に来たんじゃねぇか、ほれ、今回はいつもより多くしてある」
そう言って革袋をジェドに投げ渡す。中身を確認してみると、いつも以上に金貨が混じっていた。これはジェドの門番としての給料の半年分程にもなる金額だ。
「それで出る時もなんとかしてくれや」
「こ、こんなに? 今回だけですよ! 本当にこんな事は、もう二度と無理ですからね?」
「わかったよジェド、今回だけだ!」
ジェドは思いがけない臨時収入に、今回だけと念を押してフェルドの頼みを受け入れる。
今回の事が足枷となり、また次もフェルドの頼みは断れないだろう。
「よし、お前ら、荷物を運び込むぞ」
そうして、フェルド達の侵入を許してしまった。
街へ入ると、馬車を覆っていた布の中から多数の野盗が降りてくる。その中にはヴァッカも含まれていた。
「いいか、手筈通りにするんだ、絶対に勝手な事をして騒ぎを起こすんじゃねぇぞ?」
「わかってるぜ、ちゃんと手下どもには勝手な事はさせねぇよ」
「オメェに言ってんだよ、ヴァッカ!」
「チッ、わかったよ」
フェルド達はまず、領主の館と、大通りを監視しやすい建物を選び、腐蝕の力で鍵を壊して建物に押し入った。
寝ていた住民は突然の襲撃に為す術もなく殺され、フェルダ達のアジトとして使われる事になった。
その後、更に数カ所の建物を襲い、住民を殺して金品を奪っていった。
――――
翌日、兵の詰所に一人の男が舞い込んできた。
「大変だ! 街に野盗が入り込んだ!」
一人の兵士が、男を奥の部屋に案内して話を聞く事にした。
「それで、その野盗の顔は見たのか?」
「いや、俺は見てない、しかし、俺の仲間がハッキリと顔を見た! 二人組の男が馬車で複数の野盗を街に招き入れたのを見たんだ」
その男が話す内容はどうもおかしい。
馬車で野盗を町に入れるにしても門のチェックはどうやって抜けたというのか、何処の門からも怪しい者が街に侵入した報告など届いていない。
「何処の門からその野盗は入ったのだ?」
「其処までは聞いていない、しかし、野盗に襲われた民家はあるんだ! 詳しい事は野盗を見た俺の仲間から聞いてくれ」
男から野盗に襲われたという民家の場所を聞いて、兵を確認に向かわせたのだが、しばらくして、それが事実だったと言う報告が上がってきた。
「今、俺の仲間がその野盗を招き入れた男を追っているんだ、その男達を捕らえてくれ!」
この男の報告を鵜呑みにする訳にも行かない、しかし民家が襲撃を受けたのは事実だ。
まずはその野盗を招き入れた男と、それを見たという男に会って事実確認をしないと始まらないし、間違いであればそれで良い。
「その男は今何処にいるんだ?」
「あぁ、その二人組の男達の居場所を特定したら合図をくれる事になっている」
「よし、ならば其処に行こう、お前も来るんだ」
――――
「なぁおっさん、アレがハインリーヴの街か?」
「うむ、長いようで短い旅だったであるな」
「思ったより早く着きましたわね」
遠くに見える街は、想像していたよりも大きかった。
一週間ほど旅してたが、人工物が見当たらず、ずっと自然しか無かったから、てっきり農村みたいな街しか無いと思いこんでいた。
「ブラスのお話も面白かったし、料理がもう食べられなくなるのは残念だね」
「領主争奪編のナイトマスクはかっこよくて良かったですわ」
毎晩話を聞かせていたので、とうとう領主争奪編まで話してしまった。
特にアーシアとセシリアののめり込み具合は凄まじく、アーシアは勇者三大奥義はどうするのか聞いてくるし、セシリアは騎士が好き過ぎてナイトマスクの事ばかり聞いてくるほどであった。
「そうね、ブラスさんの食事が食べられなくなるのは少し残念ではあるわね」
「それは心配不要なのである、我輩の専属料理人の料理であるから、我輩の館に来てくれれば何時でも料理が食べられるのである! それに、いつでも息子に背中を流してもらえるのである」
「専属料理人になるって言ってねぇだろ! それにいつの間にか息子にしてるんじゃねぇ!」
「我輩は我儘であるからな」
おっさんはニカッと笑顔でモストマスキュラーのポーズを決めながらそう言った。
なんか久しぶりだな、このポージング
「あらあら、ブラスさんの事がよっぽど気に入ったのね」
「うむ、何をするのか決まるまでは我輩の館に留まって居ても良いのである」
「とりあえず息子と言うのは断っておくよ」
いつも通りのやり取りをしながら、街の門へと向かっていった。
街に到着予定でしたが、到着したのは野盗だけでした。
思い通りに進まなくてすみません。
早くヴァッカの話を終わらせて、おっぱいの話……じゃなかった。
娘や料理の話を書きたいですね




