昔の自分
ユウトの表情が固まった。
「じいちゃんに勝てた?」
小さなユウトは笑っている。
純粋だった。
ただ純粋に聞いている。
昔の自分だから。
ユウトは答えられなかった。
「……まだだ」
「えー!」
小さなユウトが驚く。
「未来なのに?」
「未来だからって勝てるわけじゃない」
「そうなのか」
納得していない顔だった。
その顔を見て。
ユウトは少しだけ笑った。
懐かしかった。
本当に。
その時。
「ユウト!」
家の中から母親の声。
「早くご飯!」
「今行くー!」
小さなユウトが返事をする。
そして。
家へ向かおうとして。
また止まった。
「なあ」
振り返る。
「未来の俺」
ユウトが顔を上げる。
小さなユウトは笑っていた。
「強くなるの楽しい?」
風が止まる。
王の気配も。
景色も。
一瞬だけ遠くなる。
ユウトは言葉を失った。
昔なら。
迷わず答えていた。
でも今は違う。
苦しいこともあった。
怖いこともあった。
失いかけたこともあった。
それでも。
ユウトはゆっくり笑った。
「楽しいぞ」
小さなユウトが嬉しそうに笑う。
「そっか!」
そして。
何の迷いもなく家へ走った。
その背中を見ながら。
ユウトは気付く。
第二試練が。
まだ始まったばかりだということに。




