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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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初級魔術と中級魔術

高等部の訓練場は、朝から騒がしかった。


「見たか? 今年の新入生、もう中級使えるらしいぞ」

「火属性中級だって」

「すげぇな……」


 そんな声を聞き流しながら、俺は壁際を歩く。


 高等部。


 魔法書に認められ、中級魔術を扱える者達が集まる場所。


 逆に言えば、中級を使えない奴はここでは半端者だ。


「――あ」


 前から歩いてきた生徒が、俺の顔を見て少し笑った。


「お前、あれだろ。初級しか使えないって噂の」


「……まあ」


「よく高等部来れたな」


 隣の友人らしい男も笑う。


「しかも剣まで使ってるらしいぜ」

「魔術師諦めたんじゃね?」


 二人はそのまま去っていく。


 別に珍しい反応じゃない。


 初等部の頃は、“全属性適性”なんて言われて少し騒がれた。


 でも、中等部に入って皆が中級魔術を覚え始めてからは逆だった。


 俺はいつまで経っても、魔法書に認められなかった。


 火も、水も、風も、土も使える。


 でも全部初級。


 中級だけが使えない。


 だから今では、


“器用貧乏の落ちこぼれ”


 なんて言われている。


「……はぁ」


 ため息を吐きながら訓練場へ向かう。


 今日は新入生の実力確認も兼ねた模擬戦の日だった。


 中央では既に何人か始まっている。


 火の中級魔術。


 水の槍。


 歓声。


 どれも分かりやすく強い。


「次」


 教師の声が響く。


「レオン・ヴァルセイド」


 周囲の空気が少し変わった。


「ヴァルセイドって、あの……」

「伯爵家の?」

「魔術一家だろ」


 赤髪の男子生徒が前に出る。


 無駄のない足取り。


 魔力の流れも安定していた。


 多分強い。


 教師が頷く。


「始めろ」


 瞬間。


 レオンの周囲に炎が走った。


 空気が熱を帯びる。


「――中級火属性魔術フレアランス


 炎の槍が一直線に放たれる。


 的が爆ぜた。


 訓練場に歓声が広がる。


「すげぇ……」

「やっぱ別格だ」


 レオンはそれを当然みたいな顔で見下ろしていた。


 視線が一瞬だけこっちに向く。


「……」


 特に何も言わない。


 でも、その目だけで十分だった。


 “お前とは違う”


 そう言われてる気がした。


「次。ユウト・アークレイ」


 呼ばれて前に出る。


 空気が変わるのが分かった。


「あいつか」

「例の初級」

「終わったな」


 ……まあ、そうなるよな。


 教師が少し困ったような顔をした。


「始めろ」


 俺は剣を抜く。


 同時に、小さな火球を三つ浮かべた。


「……は?」


 近くの生徒が声を漏らす。


 三重展開。


 初級魔術なら出来る。


 でも普通はやらない。


 魔力制御が面倒だからだ。


 火球を撃つ。


 同時に風を重ねる。


 軌道が変わり、的の横を抜けた火球が後ろから回り込む。


 さらに足元へ土属性。


 的が揺れる。


 最後に踏み込み。


 無属性強化。


 一歩で間合いを詰め、剣を振る。


 斬撃。


 的が割れた。


 静かになる。


「……」


 教師だけが少し眉を寄せた。


「今の制御……」


 でも次の瞬間には周囲の声に消される。


「いや、でも初級だろ?」

「地味すぎるって」

「中級の方が普通に強いじゃん」


 ……それも間違ってない。


 実際、中級の方が強い。


 俺だって使えるなら使いたい。


「次行くぞー!」


 教師の声で空気が流れる。


 俺は剣をしまって端へ下がった。


 その時だった。


「……まだやってる人いたんだ」


 声。


 振り向く。


 青みがかった銀髪。


 静かな目。


 同級生らしい女子生徒が、こちらを見ていた。


「?」


「初級の多重展開」


 それだけ言って、彼女は視線を戻す。


「今どき、誰もやらない」


「……そうかも」


「効率悪いし」


「まあ」


 それだけ話して、彼女は去っていった。


 名前も知らない。


 でもなぜか、


 最後の一言だけ少し引っかかった。


「……綺麗だったけど」


 小さすぎて、よく聞こえなかった。

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