表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

9話 魔王との対面

 魔王? 普通の、一般人にしか見えない。


 ──そう見せているんだ。


 奥底の見えない不気味さが、私を強張らせる。


「はじめまして。魔王様、私は、ミカ・タチバナです。よろしくおねがいします」


 驚きすぎて、逆に冷静になっている。足音一つ立てずに、部屋に入ってきたのだ。


「僕は、魔王と勇者の関係は対等だと思っているよ。故に、敬語はいらない」


「そう。じゃあ始めてよ。『質問』を」


「そう焦らなくていい。簡単な質問さ。ミカ、君は『日本』から来たんだよな?」


 何で知っているのでしょうか……。 こっちの世界とつながりがあるのか?


「そうだよ」


「なら、あっちの記憶はあるわけだ。年齢は?」


「17」


「あっちにいた頃の身長は?」


「165cm……、65インチ。」


 65が同じだからたまたま覚えていた。インチ使うのかはわからないけど。


「ご配慮どうも。cmで大丈夫だよ」


 少し間を置いて、


「ありがとう。では、本題に移ろう」


「君は、戦闘職ではないね? だから、レセニア王国は、切り札である異界人を召喚したのにもかかわらず、戦力を得られなかったわけだ」


「あっ、すみません」


 なんだか、申し訳ない気持ちになった。


「いいや、君は悪くないさ。過去にも、戦闘職以外の異界人は召喚されてきたからね」


 そうなんだ。意外と、異界人って多いのだろうか。


「君も、モンデリア王国が、戦争を引き起こそうとしていることは知っているね?」


 引き起こそうと(・・・・・・・)している? モンデリア王国っていう国にふっかけられていたんだね。 


「はい」


「魔王様、その認識は正しくはありません。既にモンデリア王国は、本国に宣戦布告の手紙を寄越しておりますよ」


 シノさんが訂正を言った。でもすぐに、それは違うと言われてしまう。


「いいや、合っているね。奴らは、トライにも手紙を出しているよ。戦争しないかってね」


 その時、会場全体に緊張が走った。私は、この言葉がどういう意味かはわからない。


「そうなのですね……。我々の思っている以上に、自体は深刻化しているということですか」


「ああ。まさか二国に同時侵攻するとは思わなかったよ」


 ……モンデリア王国は、二国を相手取るほど強大な国なのか。


「説明不足だったね。連邦王国トライソート。人間の国の中ではそれなりの大国だよ」


「レセニア王国の北に位置する国で、物の加工産業が盛んな国ですね」


「無論、戦力はレセニアより何倍も大きい」


「モンデリアは、トライを倒せるほどの大きな戦力を有した、ということですか」


「まだ断定はできないけどね。虚勢張ってるだけかもしれないし」


 無さそうだけど。負けたらもともこもないし。


「自体が悪化していることには違いはないと思うから、こっちで援軍を出すよ」


「ありがとうございます。トライソートとはどういたしましょうか」


「うーん、あそこの偉いさん、頭固いからね。レセニアみたいな小国と、共同戦線を結んだりはしないんじゃないかな」


「そうですか。一応、協力を要請しておきます」


「うん。協力してくれたらラッキーだね」


「トライソートが負けたら、実質負けなの?」


レセニアより強いんでしょ?


「そうだね。負けてもらっちゃ困るから、頑張ってね」


 そういった途端、立ち上がる。そんな軽く言われても……。


「もう帰るの?」


「こっちも忙しいんだ。あっ、農民だったら、これは役に立つんじゃないか?」


 そう言うと、シルブレアは大きな箱を、机の上に出した。


 昨日、ルリに教わったことを思い出す。


(「物を収納したいときは、手を前に出して、そこから対象を見つめて、飲み込むような感覚で行ってください。但し、静止しているものしか収納できませんので」)


 手を前に突き出し、意識を向ける。


 眼の前の箱が、一瞬にして消えた。


「入るか心配だったけど、杞憂だったね」


「『勇者』は優秀だから」


扉に手をかけるシルブレア。振り返って、


「君も、勇者と仲良くね」


ルリに話しかけた。


「はい。ミカさんは私がお守りいたします」


「へぇ、頑張って」


「シルブレア様、私が王城の外までお見送りいたしましょう」


エリカが提案した。


「不要だ。ありがとう」


「そうですか。……」


ちょっと残念そう。


「じゃあ、また来るから」


 そう言って『魔王』は、部屋から出ていった。


 間を置かず、話し始める。


「戦争の際は、今よりも、もっと食料資源が少なくなってしまうだろう。だからミカには、稲作をしてほしいんだ」


 エルさん。言われると思っていたよ。


「はい。勿論」


「引き受けてくれるのならありがたい。これを使ってくれ」


 大きな石を、私に手渡してきた。石に見えるけど、いくつか穴や突起がある。


「それは水精製機と言ってね。魔素を与えると水に変換してくれる装置だ」


 あー、あれか。家にあった石。それの大きなタイプだ。


「これは最新の技術を取り入れたすぐれものでね。設定したとおりに水量を調節できる」


 だから『機』なのか。すごいね。


「設定には『循環』のスキルが必要なんだが、2人は持っているか」


「いえ」


「持っていません」


「じゃあ、エリカを連れて行け」


 エリカは『循環』を持ってるのか。どんなスキルなんだろう。


「かしこまりました」


 エリカが応じる。


「後は、これだ。中に苗がたくさん入っているから、気をつけてね」


 そう言って、箱を出す。


「では、君の家に案内してくれたまえ。それは私が運ぼう」


「エルさん、シノさん。私達はこれで。シレンもまたね」


 大きな扉に手をかける。


「ああ。ミカなら使いこなしてくれると思っているよ」


「次王城に来るときは、お米を持ってくるのよ」


「ミカ様、次にお会いできる日を、心待ちにしております」


 ……シノさんブレないな…。シレンは真面目だね。



 ◇◆◆◆◇



 私達は、王城を出て、帰路についた。昼過ぎ。


 ――シルブレアは、どこまで知っているのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ