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21話 秘書エリカ

 私はエリカ。


 シノ様の秘書。


 ここで、普段の私の仕事を紹介しよう。


 まずは、王女であるシノ様の護衛。


 ほとんどの時間を一緒に過ごし、いかなる時でも、対応できるよう、気を引き締めている。


 ただし、レセニアが大国で無いために、少しばかり離れることもある。


 まあ、杞憂というものだ。


 身の回りのお世話なんかは、メイドがやってくれるので私は関わらない。


 できないというわけではないが、やはり専門職の方のほうが優れている。


 また、シノ様の代理として動くとこともある。


 言伝を預かったり、会議に参加したり、来客の対応をしたり。


 シノ様が多忙だったり病欠の際は、私が代わりになって内政活動の一端を行う。


 内政活動と言っても、書類の処理なんかは苦手なので、ほとんどは話し合いをしたり、策を練ったりするだけだ。


 それらに関しては弟のシレンやエル様のほうがたくさんやっているだろう。


 正直、エル様よりもシノ様のほうが王様に向いていると思う。歴が違う。


 ああ見えても、三十代後半だと言っていた。その美貌は如何にして維持しているのだろうか。


 話が逸れた。


 私は戦闘職でもあったりする。


 指揮官ではないが、一応、遊撃部隊に所属していることになっている。


 実戦の経験は無い。


 私のスキル、『迷走』。


 これは、型にとらわれないこと。


 私は短剣《ダガー》を用いて戦うが、『迷走』によってその剣筋は全く読めないものとなる。


 故に、見切られることはない。


 見ている方は気持ち悪いだろうが、私にとっては、幾重にもフェイントを織り交ぜながら的確な場所を突くだけなので、かなり容易で汎用的だ。


 勿論、戦闘以外にも用いることができるが、扱いにくいことこの上ないので、あまり使わない。


 そして、『循環』


 本質は、魔素を循環させることにある。


 全身を巡らせるだけでも、その感覚は大きい。


 私が軽く使っただけでも、ホワシーの優秀な剣士と渡り合えるようになるのだから。


『迷走』の影響も大きいだろうが。


 それでも、魔素の力を最大限に活用できるようになるこのスキルは、何かと便利である。


 一つ難点を挙げるとすれば、使用後に強大な倦怠感に襲われることだろうか。


 まあ、そんな私のスキルによって、幼いながらも、遊撃部隊に所属できているということだ。


 主な仕事はこんなものか。


 最近は戦前という事もあって、少しづつ忙しくなっている。


 落ち着いて、美味しい料理を頂きたいところだが、そうもいかないのが苦しい。


 せめて、早く冷夏が終わってくれるといいのだが……。


「エリカ、食べすぎてはいけません。これは、農民の方々がこの気候の中、頑張って育ててくれたのよ。それに、メイドさんの分も残しておかねばならないでしょう?」


 いけない。シノ様に窘められてしまった。


 今は、カミノとカナメと伴に食堂で昼食を摂っている。


 いつも、私はシノ様の右隣に座るのだ。


「でも、冷害なんて大変だよな。ネルリネはそんなこと無かったのにな」


 北東の隣国であるネルリネでは、冷夏にはなっていないらしい。


 どうやら、国境になっている山脈が、南からの冷風を遮っているようだ。


 小さな野菜をつまんでみても、対して腹は膨れない。


「ミカが早く持ってきてくれるといいわね」


 確かにそうだ。稲作は順調だろうか。


「そろそろじゃないか? 前行ったときは稲を干してたけど」


 随分と早いな。通常の五倍ほどだろうか。


 ミカのスキルが働いているのだろう。


「それは期待できるわね」


 結局、私達レセニア国民は、誰もが飢えているのだ。


 ――それを、ミカが改善してくれる――と、私は願っている。

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