20話 融通の利いた部屋
稲の乾燥には一週間ほどかかるらしいので、乾かしつつ次の稲をつくり始めることにする。
ほんとにスキルはズルだよね。
私の場合、『勇者』の補正がめちゃくちゃかかっているからだと思うんだけど、普通の『栽培』でも、結構優秀だったりするのかな?
そんな事を考えながら、残っている苗を植えていく。
まだ慣れていないので、姿勢も辛いし、ふらついて倒れそうになることもある。
大変だねって。
◇◆◆◆◇
一区切りついた。
ふと、隣の畑に目をやると、大きなトマトが育っていた。
やっぱり、私の植えたトマトよりも、ルリのトマトのほうがたくさんなっているんだよね。
これもスキルの影響なのだろうか。デメリットもあるとか。
冷夏。
この国に起きている異常気象。
あっちの世界だと、東北にやませが吹くみたいなことなのかな。
私が育てている稲はあんまりそんなことを気にしていないような。
私が多く生産できても、この冷夏が解消しない限りは、他の農民の方たちは農業が難しいのではないだろうか。
私の行動は今の現状を緩和させられても、根本から良くなるわけではないから、そこまで意味の大きな行動とは言えないんだよね。
どうにかならないだろうか。
◇◆◆◆◇
「いやぁ、豪華な部屋だな」
カミノは王城の一室を見回して、感嘆した。
「これ以上のものは見込めないだろう?」
仕事を一通り終えたエリカだ。不敵に笑って応じる。
「ああ。家具も窓もなくて、過ごしやすそうだ」
皮肉である。
「独房じゃん……」
まず、レセニアの王城はそれほど広くもない。
王族関係者や学生、メイドも城に住んでいるため、部屋の空きは無く、空けることもできない。
そこで選ばれたのが地下の倉庫だ。
石畳で狭く二人が寝そべるのが精一杯の、とても狭い部屋。
カミノとカナメは、そこに泊まるよう言われたのだ。
「まぁ、最低限って感じか?」
「いくらなんでも最低限すぎるんじゃない?」
「お前はいっつも路銀使って高い宿泊ってるもんな」
だが、エリカは思い出す。
「確か……、王城の近くに豪邸が無かったか?」
思い出す。
ミカの住宅を探したときのことだ。
『……、私には遠慮させていただきます』
そう。あのとき、ミカが遠慮した家。
あの豪邸なら、この二人を止まらせられるのでは、と考えたのだ。
「本当か?」
その言葉にカミノがすぐに食いつく。自分ももっと良い場所で寝たいと思っているのだ。
「ああ。シノ様に確認してこよう」
エリカは階段を登っていった。
「良かったな。豪邸に泊まれるかもしれないぜ」
「兄貴もじゃない?」
「まぁ、そうだな。こんな部屋なら、戦いに行けないかもしれないな」
エリカが戻って来る。
「多少嫌がってはいたが、許可を得たよ」
『え〜、もったいない。仕方ないわね』
何がもったいないのだか。
「よっしゃ! 早速案内してくれよ」
「そうだな。着いてこい」
エリカが二人の先導をする。
着いた先はモダン風の木造二階建ての家。
本当はミカに住まわせる予定だった家だ。
「こんな豪邸、レセニアにあるのか」
「失礼だな。ほとんど無いに決まっているじゃないか」
「じゃあ、僕達は休むから、シノさんに感謝を伝えておいてくれ」
「自分でいいなよ」
カナメが口を挟む。
「またそのときに、だ」
「はあ、私からも。ありがとうございます」
ため息を吐いた後、頭を下げた。
「では、そのように伝えておくよ。何かあれば呼びに来る」
エリカは王城に戻っていった。




