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第二十九話:不滅のポンコツへ

「ぶっちぎり極大火力ちーむ」は、結成からわずか二日で三千人を超えるメンバーを抱える火力集団へと膨れ上がっていた。


そのうちのおよそ一割は、みるちんのチャンネル初期からの古参リスナーたち。

「みるちんの言うことなら、全肯定☆彡」と全幅の信頼を寄せる熱狂的ファン勢や、孫を見守るおじいちゃんのような“護りたい勢”だ。

残りのほとんどは、例のショート動画で釣られた新規プレイヤー。


隊長:みるちん 副隊長:弾道計算 特別顧問兼信号係:リカ まで任命してノリノリだ。



“神殺し”というワードに燃えたガチ勢、レアドロップ目当てのイナゴ勢、レイドという祭に便乗したエンジョイ勢……その目的も火力も実力も、バラバラだった。

だが、彼ら全員が一丸となって掲げたスローガンはひとつ。

『めざせ☆超絶ダメージ!』

そのための第一歩が、「火力UP大作戦」と銘打った強化週間だった。


* * *


とあるフィールドでは、爆炎と雷光が飛び交い、メテオの光が空を覆っていた。


『剣の人も! 弓の人も! ぜーんぶメテオ覚えようね☆彡 私が保証するよ、燃えないものなんて、ないからねっ☆彡』


そう叫びながら、みるちんは空から火の雨を降らせていた。


ソードマスター、スピアブレイカー、ビーストテイマー、ダークプリースト──

どのジョブのプレイヤーも、彼女の号令に従って必死に魔法スキルの熟練度を上げていた。


「剣、もう使わなくていいかな……?」

「MP回復ポーション、常時飲みっぱなしなんだけど!?」


リカも負けてはいなかった。

「ラックを上げれば……クリティカルが連続で出る!私はLv18のときに、あのオーガを倒したんだから!」

そう熱弁し、クリティカル発動率を過信した“全ラック振り”ビルドを布教していた。

リスナーの一部もそれを真に受け、「運こそ最強」と掲げて敵の懐へ突撃しては、何度も返り討ちにあっていた。

火力UPどころか、カオスの濃度が増していく。


* * *


《……もう見てられない》


弾道計算くんは、剣を背負ったまま杖を握る“物理職のメテオマン”を見ながらため息をつく。


《支援職はバフスキルを伸ばすべきだし、前衛は剣術や槍術スキルを、後衛は魔法や弓に特化すべきなのに……なぜ全員メテオなんだ……?》


彼は全体のログを解析しながら、現実的な最大ダメージプランを黙々と計算していた。

レベル、スキル習熟度、装備強化率、クリティカル補正、バフ構成……

数字の海を泳ぎながら、少しでも「理論上可能な構成」を求めて。

《無駄が多すぎる……けど、熱量はすごい。きっと、あの子が火をつけたからだ》

──みるちん。

その奔放な火力信仰と、“わけのわからない一体感”。

《……仕方ない。不滅のポンコツ達へ。現実に即したジョブごとのテンプレビルド案、俺が作るか──》




……今夜は徹夜になりそうだ。


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