第二十一話:シャル we dance
仮装と光に彩られた広場に、にぎやかな笑い声が響いている。
『これ、似合ってるかな~☆彡 火の鳥コスチューム、ちょっと燃えてるってウワサだよんっ!』
火の鳥というよりも赤いヒヨコにしかみえないが、本人は大満足だ。
周囲のプレイヤーが「かわいい!」と笑いながら写真を撮る中、みるちんは陽気に回転して、火のエフェクトを撒き散らす。
ダイは無言で隣に立ち、どこか遠くを見るようなまなざしをしていた。
彼の視線の先にあるのは、きらびやかな人混みでも、仮装の騒ぎでもない。
ただ一人の、NPCの到着を待っていた。
「……もうすぐ、来る」
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イベント名、《レギオン・ハロウィーンナイト》。
ゲーム運営による年に一度の大規模交流祭で、街中がハロウィン一色で飾り付けられ、収穫祭らしく山のように積み上げられた果実や木の実を売るバザーや、おいしそうな料理の並ぶ屋台が所狭しと立ち並び、普段あまりINしないプレイヤー達も帰ってくる。
中でも人気なのは、各々が仮装して広場に集い、特設の巨大な焚火を囲んでダンスを踊るというイベントだ。
その焚火のそばに、かわいらしい“おばけ”が現れた。
全身を白い布ですっぽりと覆った、小さな影。
二つの穴から覗く瞳が、じっとダイを見つめている。
それが、シャルだった。
布の下では猫耳がぴょこんと隠れている。誰にも気づかれずに会うため、リカたちが考えた仮装だった。
「……来たね」
PCの前に座るリカの声には、緊張と、ほんの少しの期待が混じっていた。
その瞬間、イベントがダンスフェーズへと移行した。
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焚火を囲んで二重の輪ができる。
音楽が鳴り、リズムに合わせてステップを踏み、ペアを交代しながらダンスが進む。
そして、順番が回ってくる。
仮装おばけ(シャル)と、かぼちゃ頭の(ダイ)。
二人は静かに手を取り合う。
そのときだった。
――パァンッ。
焚火の木が爆ぜ、火花が舞い上がる。
その刹那、ダイの手から伝わるぬくもりが、シャルの心の中まで染みわたった。
騒がしかった音楽がどこか遠く感じられて……
胸の奥で何かが崩れ、溶け、流れ込んでくる。
――記憶。
――景色。
――声。
あの日、開発室で笑い、喧嘩をした光景。
実験室で語り合った夢。
それはまるで、堰を切ったダムのように。
感情と映像の奔流が、彼女という存在を、もう一度かたちづくる。
ダイの目が細められた。
それは、ジュンのまなざしだった。
言葉はいらなかった。
“わたしはあなたを知っている”
“俺も、君を知っている”
焚火の光が二人を照らす中で、時が止まる。
輪の中の誰もが、まさかこの仮装の中で、奇跡の再会が果たされているとは知らない。
そして、止まっていた時の針が、ゆっくりと音を立てて動き出す。




