第十七話:星に願いを
三人の話し合いが続く中……
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夜の《レギオン》のフィールドは、どこか現実よりも静かだった。
月光のようなエフェクトが地表を淡く照らし、風が吹けば、草木が小さくそよぐ音が響く。
その中に、ひとり佇む影があった。ダイ――いや、シナガワ・ジュンとしての意識を取り戻しつつある彼は、未だ霧の中を彷徨っているような心地だった。
(リカは……問いかけてくれた)
心の中でつぶやいたその声は、虚空に溶けていく。
だが、その一言が、彼の胸にまだ火が消えていないことを証明していた。
希望はある。
だが、道は見えない。
自分からアクションを起こすにも、相手は“運営の目”――いや、あの男、オギノだ。
下手に言葉を発せば即座に不審ログとして検出され、ゲームキャラクターとしての自分、いや“容器”としての自分ごと消される。
(……それでも、何か、手段がないか……)
思考をめぐらせるうち、ふと、心に浮かんできたものがある。
――星結びの短冊。
ゲーム内の街の一角に設置された、天の川を模した幻想的な装飾とともに並ぶ短冊のようなメッセージカード。
設置当初は、多くのプレイヤーが面白半分に「好きな子へのメッセージ」「ギルメンへの暴露」なんてものを書き込んで騒いでいた。
特殊なインクで書くことができ、**“指定した相手にしか見えない”**という触れ込みだった。
そして、それを運営サイドはこう紹介していた。
『これは私たちにも見えません。どんな告白でも秘密は漏れません! ただし良識の範囲でね☆』
そんな軽口まじりのシステム説明だったが――
もし、本当に運営にも見えない設計がなされていたのだとしたら?
つまり、書いた内容がログに残らない匿名性の高い構造だったとしたら?
(いや、確か……あれは、イベント特設のAPIだ。そういえばゲーム内ログの通常監視対象から外される物も開発していたはず……)
彼の頭の中の技術者としての記憶が、微かに蘇る。
あれはもうイベント終了とともに忘れ去られ、今や形ばかりの存在だ。
設置場所も忘れられ、閑散とした片隅で埃をかぶっているだろう。
だが、使えるはずだ。
一か八か、自分のキャラクターIDに向けて、そこにメッセージを書けば――
読み取れるのは、プレイヤーであるリカだけ。
つまり、安全に“言葉”を伝えるチャンスだ。
(……賭けてみる価値はある)
目の奥に宿った覚悟の光は、迷いを少しずつ押しやっていった。
外とつながる手がかりをつかめるのなら。
(俺は……まだ、終われない)
ダイは、夜の街を駆け出した。
忘れ去られた星結びの短冊のもとへ、祈りと覚悟を胸に――




