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第十七話:星に願いを


三人の話し合いが続く中……



***


夜の《レギオン》のフィールドは、どこか現実よりも静かだった。

月光のようなエフェクトが地表を淡く照らし、風が吹けば、草木が小さくそよぐ音が響く。

その中に、ひとり佇む影があった。ダイ――いや、シナガワ・ジュンとしての意識を取り戻しつつある彼は、未だ霧の中を彷徨っているような心地だった。

(リカは……問いかけてくれた)

心の中でつぶやいたその声は、虚空に溶けていく。

だが、その一言が、彼の胸にまだ火が消えていないことを証明していた。

希望はある。

だが、道は見えない。


自分からアクションを起こすにも、相手は“運営の目”――いや、あの男、オギノだ。

下手に言葉を発せば即座に不審ログとして検出され、ゲームキャラクターとしての自分、いや“容器”としての自分ごと消される。


(……それでも、何か、手段がないか……)

思考をめぐらせるうち、ふと、心に浮かんできたものがある。


――星結びの短冊。


ゲーム内の街の一角に設置された、天の川を模した幻想的な装飾とともに並ぶ短冊のようなメッセージカード。


設置当初は、多くのプレイヤーが面白半分に「好きな子へのメッセージ」「ギルメンへの暴露」なんてものを書き込んで騒いでいた。

特殊なインクで書くことができ、**“指定した相手にしか見えない”**という触れ込みだった。

そして、それを運営サイドはこう紹介していた。


『これは私たちにも見えません。どんな告白でも秘密は漏れません! ただし良識の範囲でね☆』


そんな軽口まじりのシステム説明だったが――

もし、本当に運営にも見えない設計がなされていたのだとしたら?

つまり、書いた内容がログに残らない匿名性の高い構造だったとしたら?


(いや、確か……あれは、イベント特設のAPIだ。そういえばゲーム内ログの通常監視対象から外される物も開発していたはず……)

彼の頭の中の技術者としての記憶が、微かに蘇る。


あれはもうイベント終了とともに忘れ去られ、今や形ばかりの存在だ。

設置場所も忘れられ、閑散とした片隅で埃をかぶっているだろう。

だが、使えるはずだ。


一か八か、自分のキャラクターIDに向けて、そこにメッセージを書けば――

読み取れるのは、プレイヤーであるリカだけ。


つまり、安全に“言葉”を伝えるチャンスだ。


(……賭けてみる価値はある)


目の奥に宿った覚悟の光は、迷いを少しずつ押しやっていった。

外とつながる手がかりをつかめるのなら。


(俺は……まだ、終われない)


ダイは、夜の街を駆け出した。

忘れ去られた星結びの短冊のもとへ、祈りと覚悟を胸に――


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