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天才ラーメン王、全てを失い異世界で無双する  作者: とみた美味いろは


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救世主 シマモトの活躍 

《天海聖暦681年》


 調査団出発。王国大広場の発表に合わせて調査隊員を急募した。王国と貴族が手配した護衛の兵士100名と募集する400名の隊員と合わせて500名の調査隊を組む予定が、3食付きの待遇に応募者が殺到し1,000名の大調査団が組織された。シマモトから隊員の数は多ければ多いほど良いという希望があり、モーガン家が資金を出した。調査隊名は「救世主グリーン調査隊」と名付けられ、ガブリエル公爵が隊長に就任した。王国大広場の発表から8日後の夜明け前、同じ広場で出発式が静かに行われた。


 揺れる馬車の中で、シマモトの植物研究者魂が大きく膨らんでいた。救世主役を引き受けるに当たってある程度の勝算があった。ガブリエル公爵から聞いた話に成功のヒントが沢山含まれていた。


〇豊かな草原、森林、山林があり、馬の餌となる一部の牧草地以外は未開拓である

〇色々な植物をほとんどの国民が食べた事がない 

〇収穫しているのは自生して実っている一部の果物や木の実 

〇農業の知識も技術もない。そもそもこの国には農業という概念がない

〇興味深いのは、火山の影響と魔石水の影響とで1年中様々な植物が育つこと

〇キノコは毒キノコしかないと思っていること

 

 つまり自分の知識を利用すれば食の救世主になれるはずだと…

 

 王都ラグールからの道は、火山近くの岩場から採取した魔石を運ぶために作られたもので荷馬車が通れる広さがあるのは好都合だ。出発して3時間程で最初の発見があった。小高い丘一面に大きく赤い果実が実った沢山の木が生えている。指示されてその実を取ってきた男は申し訳なさそうな顔で、果実を差し出しながら言った。


「救世主様、この実は赤くて大きくて美味しそうに見えますが、渋くて不味いので誰も食べません」


 ...間違いない、これは柿だ! ...


 私が福島県の会津地方で食べた「会津身不知柿(あいづみしらずがき)」よりもかなり大きい柿だ。みしらずとは〔実が成り過ぎて枝が折れそうになる様子〕や、〔美味しすぎて身の危険も顧みず食べ過ぎてしまうほど〕という諸説がある。天皇家や宮家への献上柿としても有名な柿だ。渋柿なので焼酎を用いて渋抜きをしてから食べる。初めて食べた時、大きさ・甘さ・旨さに驚いた。しかし、この場所のこんな大きくて立派な柿は日本にはない。


 ...これは凄いぞ! 最初から縁起がいい!! ...


「みんな、私の事はシマモトと呼んで欲しい。救世主と呼ぶのは禁止です」

「私がこの果実を美味しく食べられるようにします。この果実を収穫しましょう」


 皆がざわつきはじめた。

 

「3食飯が食えるから参加したが、クソ不味い果実を収穫しろとは気が乗らん」

「あの救世主様、いやシマモト様はまやかしか?」

「余計な事を考えるな、飯が食えればいい、何でもやるさ」


 ここで朝食だ。参加した1,000人分の炊き出しには時間がかかり大変だと思ったが、50人程の隊員の手早い動きと魔石の使用で直ぐに朝食の支度が出来た。その準備中に隊員に指示して採取させた柿30個を丁寧に並べ入れた木箱を5箱用意させた。

 

「ガブリエル公爵、強い酒はありますか?」

「シマモト様、朝からお召し上がるほど酒がお好きでしたか?」

「あっ 違います! この果実を強い酒を使って食べられるようにします。およそ10日で美味しくなります」


 同行している従者のジャックがワインを持ってきた。


「もっと強い酒が欲しい」と言うと、公爵が小さな魔石を出した。


「これは酔っ払い石で、このワインの瓶に入れる石の数が増えるごとに酒の強さが増していきます。酒の味の保証は出来ませんが飲まないなら問題ないと思います」


「さらに、こちらの黄色い魔石を箱に入れると、効果が出るまで10日待たなくても朝食が終わる頃には効果が出ていると思います。」

 

 布に酒を染み込ませて柿にかけ、黄色い魔石を入れて箱に蓋をした。朝食を済ませた半信半疑の3人だったが、柿1個を箱から取り出し切り分けて口にした瞬間、同時にウォォォーーと声を上げた。特にジャックの声はとびきり大きかった。

 

 ガブリエル公爵が立ち上がった。隊長として初めて自信たっぷりの気持ちで話した。


「みんな、聞いてくれ。今、シマモト様が奇跡を起こされた。この不味かった果実をとびきり甘くて旨い果実に変えられた。食べたらこの美味しさに腰を抜かすぞ。まずは皆で食べるがよい。ただし、味見は一切れだけだ。全員の分は足りないようなので直ぐ用意する。それで納得したら収穫を開始する。それと、この果実の名前は『柿』という」


 この柿収穫の成果は大きかった。隊員は柿の美味しさに度肝を抜かれたようで、本物の救世主と信じ始めた。これまでの常識とかけ離れた話しや指示にも信頼して行動するようになった。ここから救世主伝説が始まった。


 柿は第一次報告として荷馬車5台に積み王都に運ばれた。入れた食材の鮮度が変わらない魔石箱に保管し、食べる前に酒を使う方法を列記して国王に報告した。早速この方法で柿を召し上がった国王は飛び上がって喜んだ。使用する酒のワインは輸入品で高価だったが、水に酔っ払い石を入れただけで不味いが酒になるのでこれを使用すれば問題なかった。

 

 国王は決断した。調査隊を次の調査地に進ませ、別途、『柿の収穫調査隊』を現地に派遣した。現地と王国食糧庫を100台の荷馬車が何往復もした。2日後、『救世主グリーン調査隊』からの吉報第一弾として、収穫した柿の一部を渋抜きして国民に配給した。これを食べた国民は奇跡が起きたと喜び、涙を流した者も大勢いた。


「本当に救世主が現れた」「私達の希望よ」「大魔導士様の言ったことは本当だった!」


--------------------


 調査は順調に進み、広大な手つかずの高原や森林の中で、今まで食べることの無かった多くの種類の食べ物を収穫し、飢えに苦しむ国民の緊急対策とした。また、初見の奇妙な植物を分析して食用に転用させた。

 特に飢餓対策に一番貢献したのが芋類で、30種類以上の芋が見つかり大量に収穫出来たことだ。芋類以外の根菜、ニンジン、カブ、ダイコン、ゴボウ、レンコン、その他、大量に見つかり収穫出来た。


 面白い逸話としては、イチョウの種子の臭い果肉状の部分の中から日本でギンナンと呼ばれるものを取り出す作業に苦戦したり、トゲトゲのイガの中に実がある大形の栗の旨さに驚いたりと後に隊員達の笑い話になった。


 90日間の調査と収穫を終えて王都ラグールに戻った翌日、シマモトは王国大広場に設置された木製の高い台の上で、魔石スピーカーを使って国民に向けて演説をした。これが『救世主シマモト様の神演説』として救世神伝説となった。

 

 「グルンジ王国民の皆さん、私は90日間のグリーン調査から戻りこの場に立っています。この国の草原、森林、山々、湖、池や沼、その環境とそこにある植物、これら全てが素晴らしいものです。皆さまが私を救世主と認めてくれるなら、二度とこの国に食糧危機が起こらないような対策を実行していきます」

 

 すでに群衆も含め国民のほとんどは柿収穫の件で救世主として認めていた。拍手と声援と祈る声が一体となり「救世主様! シマモト様!」の大合唱が起きた。

 

「それでは、発表します!」

『この国の食糧調達方法を、《狩る・獲る・買う》から、《守る・育てる・造る》に変える。それで食糧の枯渇を無くします。小麦・米などの穀物を見つけました。素晴らしい葉野菜や根菜も見つけました。これからは農業です。その為に早急に田畑の大規模開拓を行います。果樹栽培、きのこ栽培も合わせて始めます。これらを実行するにあたり、植物研究所を創設し、研究と実験と収穫を同時に行い5年以内に完全な自給自足を実現します』



《天海聖暦685年》 

 演説から4年後、シマモトの知識と大魔導士ガブリエル公爵の魔道技法により小麦・米等の穀物類、野菜類、きのこ類の大収穫に成功し食糧危機から国民を救うことに成功する。救世主として感謝され勲章を授与され伯爵の地位も与えられた。


『シマモトの実績』

1.土壌改良技術の確立 

2.田畑の大規模開拓  

3.果樹園・きのこ園の開設  

4.植物研究所の設立 

5.薬草の研究  

6.魔石と薬草との複合作用の効能  

7.長寿・不老の解明  

8.後進の育成 

 これらは、救世主として神格化されてもおかしくないものだ。


《天海聖暦700年》

〇設立した研究所で、味噌・醤油のような日本風の様々な調味料が開発された。

〇ワイン、米酒、リンゴ酒、など酒作りも盛んになった。





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