44. グルンジ救世神祭り Ⅰ
天海聖暦771年 夏月117日 (グルンジ救世神祭りの3日前)
《グルンジ王城 特別室》
「3日後のグルンジ救世神祭りについて最後の会議をする」
ゴウは、ベルナード国王の挨拶を聞いていつもより緊張していると感じた。おそらくこの会議にトラキール帝国を代表して皇女のイサドラも参加しているからだ。
進行役はアーサー第一王子が務めている。
「今年の祭りは、盛沢山だ。ポイントを一つ一つ確認する」
最初は、祭りの安全対策・警備と要人警護の確認だ。今年は王国民からの要望で、ベンとケイを久しぶりにパレードに出す。盛り上がり過ぎて、2人が抜けて王族や来賓客の警備が手薄にならないか心配だ。
「アーサー王子、あたい達が警備に入らなくても大丈夫ですわ」
「例年の3倍の近衛兵と王国軍兵を出して任務にあたると兵団長と長官とで打合せ済みです。細かく指示してあり対策は万全です」
ケイもベンも警備には自信たっぷりだ。
例年通りの国王の挨拶の後、トラキール帝国のベルゴス皇帝が挨拶と来年にラーメンビエンナーレを開催することを宣言する。この流れでいいのか? アーサーはイサドラを見た。
「そこで皆さま、申し訳ありません。ゴウさまに怒られそうです」
「えっ どうしましたイサドラさま」
「うーん、お互いもう様は止めましょう。ゴウ」
「はい」
深呼吸して戦争を口に出した。
「また、ラーメン戦争になってしまいました」
驚いた皆に、イサドラは詳しく説明をした。廃国が決まったロイダ王国の領有権を巡ってガーゴ王国とイブロ王国が揉めていた。ベルゴス皇帝は、来年開催される第1回ラーメンビエンナーレにトラキール帝国側の代表として両国に参加させ、その成績で決着をつけると言い出した。両国王がしぶしぶ納得した。
「ゴウが何を言いたいか分かっています」
「ラーメンが争いの道具になるのは…」
言葉を遮り
「分かっています。私も父に詰め寄りました」
「これは、ラーメンの競争が本当の国盗り合戦になるのですよ」
「民のためだと言われました。武力戦争になれば両王国民に甚大な被害が出る。それよりもラーメン戦争なら民に被害が出ないと」
納得がいかないゴウの顔を見て、ベルナード国王が割って入った。
「ゴウの気持ちは分かる。神聖なラーメンを政争の道具にされるのは耐え難いと…」
「はい」
「しかしじゃ、国を治める立場で言わせてもらうぞ。例え負けても被害が無い戦争、勝ったら国が貰える戦争。こんなおとぎ話のような提案をされ、武力戦争を選ぶ権力者は民の上に立ってはダメじゃ」
「どちらの国もラーメンの知識は全く無いはず。公平な戦争、いや競争になります」
「カールの言うとおり。私のところに色々と報告が上がって来ている」
ガーゴ王国もイブロ王国も、グルンジ王国の料理や食文化を研究し自国の食政策に活かすという理由で、ラグールに拠点を持ったとアーサーに報告が来ていた。それはラーメンをゼロから研究するためだったと今分かった。
「ゴウ、悪いが次に進むぞ。愚痴はそこの可愛い婚約者に聞いてもらうのじゃ、ハハハ」
国王の笑えない冗談に、マリーとサクラが遠慮気味にゴウに手を振った。
「今回の祭りに際して、ゴウには3つも課題を与える形になった。状況報告をしてくれ」
「本当ですよ。難題でした。とても大変でした」
1、来春開催するラーメンビエンナーレのシミュレーションをする
2、アンリ第二王子が輸出する農産物として有力と選んだ葱類の宣伝と販売
3、観光客の帰国の船に持ち込む弁当とお土産になる甘味菓子の宣伝と販売
いつの間にか、ラーメン以外の課題まで頼られた。ゴウは困惑している。
「特製葱ラーメンは完璧に仕上がっています。それに合わせて葱の宣伝もします」
「おお、素晴らしいな」
「船弁と土産菓子も王国の料理人さんのご努力でとても良い仕上がりです」
「楽しみだ」
「これでグルンジ救世神祭りの会議は終わりじゃ」
「この後はイサドラ姫と約束した時間じゃったな。ゴウと2人だけにする」
「ありがとうございます。その前に、マリアンヌさまとサクラさまとお話しをさせてください」
「分かった。マリー、サクラ、姫と一緒に談話室に入ってくれ」




