40. 4人の転移者
天海聖暦771年 春月21日
《トラキール帝国海軍基地》
この軍港の岸壁には帝国が誇る大小様々な戦艦が停泊している。軍港の係留施設の端にある2つのバースに、塗装が剥げたみすぼらしい古い小型戦艦が停泊している。それは、ガーゴ王国軍とイブロ王国軍の戦艦だ。ベルゴスはその戦艦のあまりの酷さに、今回の呼び出しに応じた褒美という名目で中古の中型戦艦をそれぞれの国王に恩賜した。
中古といってもこの2艦はブン・ロイダ元国王に賜与したばかりの戦艦だったが、廃国となり戻って来たものを整備した完璧な戦艦なのだ。古い小型戦艦は廃艦にすることになり、解体作業もここの施設で行うことが決まった。
今、両王国の従者達は、廃艦が決まった戦艦から皇帝より恩賜された戦艦への荷物の引っ越し作業で大忙しだ。
ガーゴ王国の戦艦の最上級の船室が国王専用船室として使用される。最初に引っ越し作業が終了し、外から施錠されたその国王専用船室内に光の渦が出現した。その渦の中から興梠三郎と大沼ユリが現れた。
眩しい光の渦が消えた後、2人の視界が開けた。そこは天井の石が光っている見知らぬ部屋の中だ。2人は互いに「あなたは誰?」と言い合った。互いの白髪で50歳ぐらいに老けた姿に相手が誰か分からなかった。
「本当にユリちゃん?」
「えー、興梠さんなの?」
興梠が気付いて窓を指した。2人は外側が板でふさがっている窓ガラスに映った自分達の顔を見てショックを受けた。興梠の無精ヒゲも真っ白になっていた。
「浦島太郎かよ~」
おどけたつもりが、余計に気持ちが沈んだ。
「あーん、どうなってんねん」
大沼も普段使わない関西弁が出てしまった。
…………
イブロ王国の戦艦もガーゴ王国が恩賜された戦艦と全く同じものだ。国王専用船室。こちらも最初に引っ越し作業が終了し、外から施錠されたその室内で不思議なことが起きた。光の渦から空野ミカとY字の路肩で助けた男性が現れた。
空野は窓ガラスに映った自分の白髪と老けた容姿にショックを受けた。男性の方は金髪が白髪になったが、顔の皮膚は前より艶と張りがあり皺もソバカスも少ない。身体も含めて60歳の自分が50歳ぐらいに若返って驚いている。
この世界に転移した4人は、転移前の容姿や年齢に関係なく全員が白髪となり50歳の年齢の姿になっていた。




